審議会議事録  厚生労働省ホームページ

第2回目安制度のあり方に関する全員協議会議事録


1 日時 平成15年12月2日(火)10:00〜11:50

2 場所 厚生労働省専用第17会議室

 出席者
  【委員】公益委員 渡辺会長、辻山委員、古郡委員

労働者側委員 加藤委員、中野委員、山口委員、横山委員

使用者側委員 浅澤委員、池田委員、内海委員、川本委員、
 東條委員、原川委員

  【事務局】厚生労働省
  大石審議官、麻田賃金時間課長、川戸主任中央賃金指導官、
  山口副主任中央賃金指導官、長課長補佐

 配付資料
 資料1 目安のランク区分及び表示方法についての検討経過
 資料2 平成12年全員協議会報告に基づくランク変更
 資料3 ランク変更県における最低賃金(日額/時間額)の引上げ状況
 資料4 地域別最低賃金額のランクごとの標準偏差の推移等
 資料5 20の指標による指数と最低賃金との関係
 資料6 時間額表示等の影響について
 資料7 改定のあり方について
 資料8 地域別最低賃金に関するデータ(時間額)

5 議事内容

○会長
 ただいまから、第2回「目安制度のあり方に関する全員協議会」を開催いたします。前回の、第1回目安制度のあり方に関する全員協議会でご了解いただきましたスケジュールに従い、本日の全員協議会では、「表示方法及びランク区分のあり方」と「改定のあり方」についてフリートーキングを行います。最初に、「表示方法及びランク区分のあり方」について、フリートーキングを行います。事務局から、配付資料のご説明をお願いいたします。

○事務局
 本日は資料No.1から資料No.8まで用意させていただきました。資料No.1から資料No.6までは、「表示方法及びランク区分のあり方」の資料です。資料No.7は「改定のあり方」の資料です。資料No.8は、前回委員からご要望のありました資料です。
 資料No.1の1番、発足の経緯ですが、目安制度の発足として、「全国的な整合性の確保に資する見地から」昭和53年度から目安が提示されております。その際、ランクについては昭和52年の各都道府県の地域別最低賃金額を基礎にし、4ランクに区分されております。
 当初、目安の表示は各ランクごとの最低賃金額の中間値を基礎に、引上げ額という形で示されました。引上げ額を目安で示した理由としては、中央最低賃金審議会としては、各都道府県の地域別最低賃金額の水準については判断を加えず、その調整は各地方最低賃金審議会の自主的な判断に委ねるとの考え方によるものです。
 2番、昭和55年及び昭和56年の中央最低賃金審議会目安に関する小委員会において、目安の表示方法やランク区分について議論がされております。労働者側からは、目安を最低賃金額の絶対額で示すべき、それが駄目だったら各ランク同額の引上げ額にするべきとの主張が出ております。使用者側からは、Dランクを2分し、5ランクにするとともに、下位ランクのアップ率を低くするべきではないか、ということが主張されております。結局のところ労使合意は得られず、目安は従来と同様の形態で示されることとなっております。
 3番、昭和57年度の目安の審議においても、労使より従来どおりの主張がなされております。このため、昭和57年7月より、今後の目安制度のあり方について検討するため、全員協議会が設けられ、目安のランク区分、表示方法について検討が行われております。この検討の過程において、地方最低賃金審議会から、地域別最低賃金の水準の問題、地方最低賃金審議会の改正審議の長期化防止の問題についても検討する必要がある旨の意見が寄せられたこともあり、これらについても検討が行われております。
 ランク数についてですが、労働者側からは将来的にはランクを減らしていくべきであるとの主張がされております。使用者側からは、少なくとも5ランク、できればそれ以上に増やすべきとの主張が出ております。表示方法については、労働者側からは、絶対額で表示すべき、使用者側からは、引上げ額で表示する現行方式の維持が主張されております。各都道府県の、地域別最低賃金の水準については、労働者側からは、水準調整すべき県名を明示すべきではない、使用者側からは、明示すべきとの主張が出ていたようです。
 このような状況の中で、ランク数の増減、絶対額による表示、引上げ率による表示、各都道府県の賃金実態に基づくランク区分の設定などが検討されたわけですが、結局のところ、このときも、いずれの案についても合意が得られませんで、引き続き検討となっております。
 2頁の4番、昭和59年から昭和62年まで、目安制度のあり方に関する検討は棚上げされていた状況にありましたが、昭和63年の目安の答申の際に、再び目安制度のあり方に関する全員協議会を設けることが決定されております。これを受けて、平成元年より、全員協議会で目安のランク区分、及び表示方法について審議が行われております。
 このときは、労働者側から、目安の形態をランク別の引上げ額から、ゾーンの表示に変えることが主張されております。使用者側からは、各ランクごとの引上げ率による表示が主張されております。ランク区分について使用者側からは、各県及び各県内の地域格差の実態に即し、合理的な設定を目指すべきであるとの主張がされております。このときの結論として、目安の表示方法については、今後さらに検討を行うということ、平成2年度から、その具体化が図れるように努めるとされております。ランク区分については、今後協議するとされております。
 3頁で、平成2年の全員協議会報告までの議論です。目安制度のあり方に関する全員協議会は、平成元年に引き続き開催されておりまして、目安の表示方法については、労働者側からは、引き続きゾーン方式が主張され、使用者側からは、ゾーン方式について地方最低賃金審議会における具体的な金額審議の際に、その適正な運営について不安があるのではないかとの主張があり、今後検討を続けることとされております。
 地域別最低賃金の順序の問題もありましたが、現時点では整合性について、いくつかの地域について問題があるものの、多くの地域については問題はないとされております。平成2年の全員協議会報告後、再び目安制度のあり方に関する検討は一旦休止されておりましたが、平成4年6月の目安小委員会において、労働者側より、一般労働者の賃金水準と比較した場合の、最低賃金の水準の問題、ランク間の最低賃金額の乖離問題などについて問題意識が出され、平成4年12月の中央最低賃金審議会総会において、目安の決め方とその参考資料、表示方法、ランク区分等について全員協議会において、2年程度を目途に検討していくことが了承されております。
 これを受けて、平成5年3月から全員協議会での議論が始められました。3頁の6番、このときの議論ですが、ランク区分については各都道府県の経済実態に基づき、各都道府県の各ランクへの振分けを見直し、今後見直し後のランクで目安を示す、ということで合意されております。
 このうち、各都道府県の経済実態の把握方法は、所得・消費に関する5指標、給与に関する10指標、企業経営に関する5指標を用い、東京を100とする総合指数を作成して把握することとされました。この点については、資料No.2の2頁で説明させていただきます。
 ランク数については、従来と同様の4つとすることで了解されております。各ランクへの振分けは、総合指数を基本として行われております。ランク区分については、20指標を総合的に指数化した総合指数に基づいて見直しを行う、ということで合意されております。
 表示方法については、労働者側より、現行のランクごとに単一の額で表示する方式について、ランク間格差と、ランク内格差の縮小という現象を生じさせ、各ランクの上位県の最低賃金額が低く抑えられるのではないかとの主張がありました。使用者側からは、ゾーン方式は幅を持って見る方式なので問題があり、反対であるとの主張が出ております。最終的には、各ランク区分ごとの引上げ額による表示を引き続き用いること、また目安額の算定については、各ランクの地域別最低賃金額の最高値と最低値の中間値方式から変更となり、新たに各ランクに振り分けられた、都道府県の地域別最低賃金額の、単純平均値方式へとすることが合意されております。
 4頁の7番、平成12年の全員協議会における議論です。平成11年4月に設置された全員協議会では、ランク振分け等、ランク区分の見直しと表示方法について議論がされております。ランク区分については、従来どおりの4区分で合意されております。各ランクへの振分けは、その基礎資料となる20指標について基本的に変更しない。ランクの移動を抑え、各ランクの総合指数の分散度合を小さくすることも考慮の上決定する、ということで合意されております。
 表示方法については、労働者側から、「ランク間オーバーラップゾーン方式」が主張され、使用者側からは、ゾーン方式については引き続き慎重な態度が示されております。さらに審議を重ねた結果、当面は現行の各ランクごとの引上げ額による表示を引き続き用いることが合意されました。以上が、目安の全員協議会におけるランク区分及び表示方法についての、これまでの検討結果です。
 資料No.2は、平成12年度のランク替えの状況を示しております。いちばん左側の表が、そのランク替えが行われる前の平成11年度の地域別最低賃金額の状況です。真ん中の表が、平成12年のときに試算した総合指数と、都道府県の順序になります。いちばん右の表は、直近の平成15年度の地域別最低賃金額の時間額を示しております。
 ここで、総合指数について若干補足して説明させていただきます。総合指数の出し方は、資料No.2の3頁から4頁にある指標から試算しております。所得・消費関係の指標については5指標、給与関係の指標は10指標、企業経営の指標については、製造品出荷額など5指標を取っております。これらの指標を基に、総合指数を試算することになります。
 具体的な試算方法と、ランク振分けの考え方を2頁で整理しております。先ほどの20の指標について、各年のばらつきをなくすために、各5年間の平均値を取ることになります。次に、それぞれの指標について、東京を100として指数化した数字を作ります。指数化した指標が20出てくるわけですが、それを単純平均することで、総合指数を試算しています。
 このように試算された指数について、以下の3つの考え方に基づいて分けております。1つ目は、指数の差が比較的大きい所に着目する。2つ目は、ランクの新しい指数に基づき、ランクを移動する県は極力抑える。3つ目は、それぞれのランクがまとまるように、分散度合をできる限り小さくするとの考え方の下で分けております。
 1頁では、この指数の順位に基づいてランク替えを行っております。計算された指数は、1頁の真ん中の表です。平成12年より、茨城県がBランクからCランク、長野県と広島県がCランクからBランク、福島県がDランクからCランクにランク替えになっております。このランク替えは、先ほどの総合指数に基づいた順位に応じております。
 いちばん右の表は、現時点での最低賃金額をランクごとで見たものになっております。ランクが上位に変更された県である長野県、広島県、福島県については、各ランクで下位となっております。Bランクで下位の長野県と広島県の2県を見ますと、長野県についてはCランクの上位県である奈良県よりも低い値、広島県についてはCランクの和歌山県よりも低い状況になっております。福島県についても、時間額610円ということで、Dランクの高知県などの県よりも低い状況になっております。
 これだけを見ると、ランク替えの影響があまり出ていないようにも見えますが、もともとCランク、Dランクであった県がBランク、Cランクに上がっていることもありますので、個別にランク替えされた4県の状況について資料No.3で見ております。
 資料No.3では、平成12年度からランク替えをされた長野県、広島県、福島県、茨城県について見ております。長野県については、CランクからBランクへとランク替えがありました。平成12年度長野県の場合は、旧Cランクでとどまった場合は引上げ額が40円だったわけですが、新ランクでは42円の引上げ額が示されたということで、目安どおり積み上げた長野県は、旧ランクにとどまっていた場合よりも、2円積上げがされていることになります。
 平成13年度について、長野県は新しいランクの目安額よりも2円積み上げておりますので、旧ランクの目安どおりの積上げを行った場合、35円に比べて3円多い積み上げとなっております。このように見ると、ランク替えがあった県では、ランクがとどまった場合に比べて、確実に積上げがなされている状況があります。長野県については、平成12年度、平成13年度で5円、広島県については8円、福島県については8円となっております。茨城県については、ランクが下がったわけですが、新しいランクでの目安どおりの積上げを行っておりますので、旧ランクにとどまった場合に比べて、積上げは3円ほど低く、積上けが抑制されたと考えられます。
 2頁で、ランクが入替えられた県と、そうではなかった県との比較ということで資料を付けております。網掛け部分が、ランクの入替えが行われた県です。滋賀県の場合、平成7年にCランクからBランクに替えられております。長野県と広島県については、平成12年にCランクからBランクに引き上げられております。
 網掛けがされております入替え県では、他の入替えが行われなかった県に比べて、新しいランクでの目安額以上に積上げがされているように見受けられます。これを見る限りでは、ランクの入替えがされた県には影響を与えたのではないかと見えるかと思います。
 資料No.4では、各ランク内でばらつきがどうなっているのか、またランク間の格差、ここでは上位ランクの下位県と、下位ランクの上位県の格差になりますが、その状況を見たものです。1頁では、各ランクの標準偏差を見ております。2頁では、標準偏差の考え方を整理しております。標準偏差の考え方としては、データの散らばり具合を表す指標です。平均値から、個々の数字の離れ具合を取って試算しております。標準偏差が大きくなれば、ばらつきが大きくなったものと考えられます。
 1頁に戻り、標準偏差から状況を見ますと、昭和53年から平成6年にかけて、Aランク、Cランクでばらつきが縮小、Bランクで拡大、Dランクではほぼ横ばいの状況が見られています。Aランクについては、昭和53年には3.30だったのが、平成6年には0.00。Cランクについては、昭和53年には27.69だったのが、平成6年には23.61ということで標準偏差が小さくなっています。Bランクについては、昭和53年には23.58から平成6年には27.68ということで拡大が見られています。Dランクについては、昭和53年には28.56だったのが平成6年には28.51ということでほぼ横ばいの状況かと思われます。
 平成7年、平成12年にランク替えがあったこともあり、一時的にばらつきが拡大しております。平成7年、平成12年を基準にしますと、平成7年は平成11年と比べて、平成12年については平成13年へと格差に縮小傾向があるように見られます。平成7年の数字と平成11年の数字を比べると、それぞれの数字が小さくなっていますので、ばらつきが小さくなっているように見られます。平成12年、平成13年についても、数字が小さくなっていますので、ばらつきの縮小が見られております。
 いちばん下の表は、各ランクの平均値について標準偏差を見ています。昭和53年当時の標準偏差は141.77だったのが、平成6年には254.84、平成11年には270.93、平成13年には274.70ということで大きくなっていますので、ばらつきとしては拡大しているのではないかと思われます。
 3頁では、各ランクの最高額と最低額に着目しております。最高額、最低額、差、率を左側で取っております。「差」というのは、最高額と最低額の値の差で、「率」というのは最高額を分母として、最低額を割ったときに何パーセントになるかを示したものです。率が高まっているということは、最高額と最低額の差が縮小していることを意味していると考えられます。
 最低賃金額の水準自体が、昭和53年当時から、平成6年まで2倍弱となっておりますので、差の絶対額というよりも、ここでは絶対額だけではなくて率も合わせて見ております。これを見ますと、各ランクとも率は上昇傾向で推移しているように思われます。Aランクでは昭和53年の99.7から、平成6年の100。Bランクでは、昭和53年の97.2から平成6年には98.3。Cランクでは、昭和53年の96.7から平成6年の98.3。Dランクでは、昭和53年の96.5から平成6年の98.0という具合に率が上昇しておりますので、率で見た場合には格差は縮小傾向にあるのかと考えられます。
 4頁では、ランク間格差ということで、ランク上位の下位県と、ランク下位の上位県との格差を比較しております。具体的には、Aランクのいちばん下の県と、Bランクのいちばん上の県、Bランクのいちばん下の県とCランクのいちばん上の県、Cランクのいちばん下の県とDランクのいちばん上の県で比較しております。
 ここで、ランク間の格差を見る上で注意が必要な点があります。京都府が昭和54年から平成元年まで、南と北に分かれておりました。南京都は昭和56年から平成元年まで、Aランクのいちばん下の県でした。逆に北京都は、昭和54年から平成元年まで、Cランクのいちばん上の県でした。
 南京都と北京都があった平成元年までは、ちょっとイレギュラーな動きになっておりますが、昭和53年には京都も南北に分かれていませんでしたので、このときと平成6年とを比べてみますと、日額差で見ると、昭和53年と平成6年では差が拡大しております。率で見ても、若干ではありますが小さくなっております。率が小さくなっているということは、上位ランクと下位ランクの間の拡大が見られているのではないかと考えられます。ここでの率の出し方は、上位ランクのいちばん下の県で、下位ランクのいちばん上の県を割ったもので計算しております。
 最後に、全体で見た場合の最高額と最低額の状況です。表のいちばん下ですが、率は上昇傾向で推移しております。これは前回も提示させていただいたのですが、格差は縮小していると考えられます。具体的には、昭和53年は84.4だったのが、平成6年には86.0となっております。平成12年、平成13年まで見ますと86.2となっております。
 前回、委員から指摘がありましたように、絶対額で見ると確かに拡大が見られております。昭和53年の最高から最低を引いた場合の差は410円だったのが、平成6年には706円、平成11年には758円、平成13年には770円と、額で見ると拡大している状況になっております。以上が、これまでのランクの影響です。
 資料No.5は、20指標と最低賃金との関係について比較したものです。●で出しているものが、最低賃金額を、東京を100として各都道府県がいくつになるかです。■で示しておりますのが、平成12年のときの総合指数の数字を、各都道府県に当てはめてプロットしたものです。
 これを見ると、総合指数の形状と最低賃金を、平成15年度の時間額の指数で見ると、大体似通った形状になっているのではないかと、ただ九州地区を見ると、最低賃金を、時間額指数を見るとほぼ横並びですが、総合指数で見るとばらつきがありますので、その辺りで若干ずれが生じているように見られるかと思います。
 これまでは各ランクの状況を見てきましたが、資料No.6は時間額表示への一本化の影響ということで整理しております。ここでは、「日額」から「時間額」へと表示単位が変更されたことで、どのような状況が生じるかということで整理させていただきました。
 1頁の下の表の真ん中のように、ランク内の最高県と、最低県の格差は小さくなります。表の右端のように、ランク間の格差も縮小されます。表のいちばん左のように、各ランクの平均額も小さくなります。平均額が小さくなるということは、一定の引上げ率を掛けた場合は、各ランクで日額で平均を出していた時代よりも、差が生じにくくなることを意味していると考えられます。
 2頁は、時間額表示への移行に加え、最近の低い引上げ率の影響を見たものです。下の表は、伸び率と各ランクの引上げ額を見たものです。伸び率が0.1、0.2、0.3だったときに、各ランクの引上げ額はそれぞれいくらになるかを表で整理したものです。
 これで見ると、ランクごとで差が生じにくくなっていると見られます。3%程度の引上げ率となった場合、各ランクで1円ずつの相違が生じております。直近で引上げ率が3%を超えた状況を見ますと、平成5年まで遡ることになります。
 3頁は、これまでの目安の算定方法について説明しております。日額表示の場合は、各ランクごとに異なる引上げ額の目安が提示されたこともあり、ランク設定や、5年ごとのランク入替えというのは、一定の影響を与えていたものと考えられます。下の箱は、表示単位が一本化されたことで、今後低い引上げ率が続く場合、各ランクごとの引上げ額に差が生じにくくなるのではないかということが考えられます。このため、ランク設定の影響や、ランク振分けの見直しの影響は薄れていくことが考えられます。私からのご説明は以上です。

○会長
 資料No.1から資料No.6まで通して説明をしていただきましたが、ご質問、ご意見がありましたらフリートーキングでお願いします。現行、時間額の引上げ額をランクごとに示すということで来ているわけですが、表示方法の問題で、資料No.6でご説明いただいたように、時間額の引上げ額表示でいくと、3%を超えてランク間の1円の違いが初めて出てくるが、それ未満だと表にあるような状況になるということです。資料No.1にあるように、長い議論の経過がありますが、現時点で表示方法とランク区分のあり方についてご意見はありませんか。端的に、ランクごとの金額に差異が生じにくい方式になったとすれば、仮に引上げ率一本で示すと考えた場合に、どういう問題が出てくるか、ということを考えておいてもいいような気がします。

○使側委員
 私は、委員になって間がないのですが、この経過を見ると、金額でランクを付けていたのが、途中から指標に変わっているような感じがします。最初からこのデータどおりに見ると格差が縮まってきています。目安を出す観点からいくと、昔どおり金額順にランクを付けていただいたほうが、いまは100円ぐらいの差ですから、最低額のところから東京まで25円ぐらいのランクに分かれてきます。そういう考え方も1つあるのではないかと思います。
 非常に細かい計算の中で、指標によってランクが分けられていますが、その中で金額が高い所と低い所と入り組んでいて、素人から見るとわかりにくい表になっております。その中でいくらという目安を出しても、そのときの地域の経済事情で、来年は栃木県が悪くなってしまうかもしれません。極端に金額を下げたりということはできないと思うのです。最低額のところから東京まで、25円なら25円ぐらいの差の中でランクを分けて、その中で目安を出していく昔のような分け方も将来は考えてもいいのではないかということが1つです。
 引上げ率の影響も3%ぐらいですが、これだけ見ると非常に低いように見えるのですが、これを日額に直してみると非常に差が出てくる感じもしますので、パーセンテージにあまり騙されてはいけないと思います。

○労側委員
 私も今年初めてですのでよく分からないのですけれども、先ほど会長がおっしゃられた、引上げ率で一本にしたときにはという問題ですが、ない所からあるものを作るのは割に説明しやすいのですが、現状あるランク制をやめていくことにつながりますと、なぜランク制をやめるかという説明をするのはかなり難しいのではないかと思います。どうしてランクができたのかということと、なぜいまはランクが必要ないのかを説明しなければなりません。それが、私にはどういう説明があるのかがわかりかねるというのが1点です。
 もう1つは、前回の全員協議会の中で、どうして4ランクができたのかを質問しましたが、調べても文章になっていないので分かりません。当時の時代背景の中で、最低賃金の有り様としての議論がいくつかあって、その中の1つに全国一律最低賃金制みたいなものがあったことと、ある意味ではその妥協のようなものの中で生まれたのかとも私は推定いたしました。
 労働者側からすると、まだお諮りしていないので何とも言えないのですが、ランク制によって、各ランクの中位なり単純平均を取ることにより、率での格差が縮小してきた、あるいは全体としていちばん高い所(東京)と、いちばん低い行政県との格差が、指数で見ると縮小してきたことになっています。そのことは、一定の合意の中でつくられてきた、ということだろうと思います。
 ところが率でやると金額ではいまよりさらに拡大することになりますから、考え方が逆転すると思います。そうしたときに、それをどうやって説明するかということが非常に難しいのかと思っております。

○労側委員
 先ほど、会長から意見としてご指摘いただいた、率方式の場合の率というのは同率ということなのですか、それともランク別の率ということなのですか。

○会長
 同率だと思ったのですが、そういう考え方もあるわけですね。

○労側委員
 まだ、具体的にどうしていくかという議論の段階ではないのですが、これは大変な議論だと思いました。表示方法とランク区分を一体に考えなければいけないといいますか、1つは賃上げ率や引上げ率自体が、昨今の経済環境で低くなってきた影響もありますが、もう1つは表示単位を日額から時間額に切り替えた。その2つの影響で、当初昭和53年からそれなりの意義づけをしていたランク別の引上げ額を設定することにより、ランクごとそれぞれの水準に一定の有意差を付けてくるという流れの効果が期待できなくなるということで、ランク区分のあり方と、表示方法のあり方を一緒に議論しなければいけないのかという感じがしています。
 例えばということで、率方式という議論になると、仮に同率にすればランクは要らなくなってしまうことになります。ランク別に引上げ額に差を付けるからランクの意味があるので、全部同率であれば、ランクを抜きにして、今年の目安は何パーセントとするということになってしまいます。これは、大変な議論であって、どうしたらいいか良い知恵が浮かびません。

○労側委員
 私も一生懸命悩んでいるのですが、上げ幅準拠の弊害が、年金関係やいろいろな所で議論されてきたと思いますし、私自身もそう思っています。我々が水準論と言うのも、いろいろな見方があって、一致しているかどうかも分からないのですが、いまの賃金関係を見ると、相対的に高い所の下げ率は大変大きいです。
 大企業の大卒、高卒のホワイトカラーの賃金の下げ率と、全体的には単年度で見るとそういう気もします。ただ、長期的に率で見ると、中小のほうが2割とか3割とか大変下がっています。これは、一時金との関係があるのですが、元の賃金の動態観測という総合的な第4表の問題なり、その関係と実際に最低賃金の水準の関係はもう少しきちんとしなければいけないのではないか。
 本日の資料でもそうなのですが、率としてはそう開いていないのですが、額としてはかなり開いています。最低生計を送れるという意味で、これだけの開きはあっていいのだろう。率である程度整合性が保たれてきたのだけれども、水準自体として、我々が主張する最低生計費を担保できるという意味でいくと、それだけ実態的な格差が開いているということに対してどうなのか、という気持が大変強いです。確かに、10万円が10%下がるのと、5万円で生活している人が10%下がるというのは、生活に与える影響がどうだこうだという話もしますから、そういう点ではランク内収斂なり乖離という率だけで見るというのがいいのかどうなのかという気がします。
 ランクを分けたというのは、実態生計なり、実態賃金に差があり、それに応じて有効に機能しようというのが大きな目標だったと思います。最初から整合性がとれていなかったので、矛盾を引きずってきている。本来、整合性という意味では高いところにある所が、低いところにあったおかげで、先ほどのマイナスの影響を強く受けていた。逆に言えば、実態の整合性よりも高いところにあった所は、ランクの影響でいえばずっとプラスの影響を受けます。この矛盾を解消しようということで、平成7年度のランクの入替えが現実的に行われたと思うのです。
 ただ、上げ幅でやってきていますから、元の位置に戻るのは大変な差が付いているから難しい。そのまま実際に流れてきて、今度時間額にしたら差が付きづらいからますますということになる。水準については地方に任せますよ、と最初から言ってきているわけです。水準そのものは地方に任せますと言いながら、我々が示す上げ幅の影響力が強い上に、今回それが大変収斂されてきて差が付けられない。
 そうなってくると、果たしてこの時期に目安を示す必要があるのかないのか。気持ちとしては、大胆に水準なり整合性に対しては、地方でもう少しきちんとやってみたらどうですか。いまは動態があまり激しくないときなのだから、無理やり率などは示さずに、という考え方だって実際あることはあると思うのです。
 生活に対する影響なり、経営に対する影響が、最低賃金の水準自体でどうなのか、ということを改めてそれぞれの地域で見直す時期にあるのかも分からないという気がするのです。いまのまま無理して、目安を出すことに窮々としているけれども、その影響を考えると、どう改善してもあまりいい示し方はないような気もします。

○会長
 大変な問題ですね。

○労側委員
 ある時期でもいいと思うのです。この影響が何年続くか分かりませんけれども、この厳しさを乗り越えるには3年ないし数年かかるだろうと考えています。それは、それなりのいろいろな手当もあるでしょうけれども、そのときに最低賃金の水準自体がどうなのか。この中でも水準論はこれからやっていただきたいと私たちが言っているように、本来いまあるべき水準に関しては立ち返って、地方の中でも議論する時期ではないかという気がします。

○会長
 水準の問題は、また次回ということになっております。同率の引上げ率方式にいったとすると、平成15年現在の最低賃金額が基準になり、それがそのままずっと続いていくわけです。4ランク設けるという意味は、額だけが問題になってきて、ランク区分を設けるということ自体の意味は、あまりなくなってくるということなのでしょうか。そのランクを移動させた場合の効果というのも、日額から時間額になった時点からあまり見られなくなってきていることです。仮にそうすれば、ランク区分自体の存在意味は何か、ということをもう一度考え直さなければいけないことになります。

○労側委員
 もう1つはランク間で移動していますから、単純に率を掛けると、岐阜県などはランクが自動的に変わってしまう現象も起きるのではないでしょうか。高いランクの水準自体がそちらのほうに近いですから、いまあるランクの考え方ではなくて、金額でランクが自動的に引かれることになりますから、実態に応じて移動してしまうこともありますね。

○会長
 それは、おっしゃるとおりです。資料No.2のいちばん右側の金額を見れば、そのとおりだと思います。

○労側委員
 ランク内は収斂したことは間違いないのですが、ランク間の格差が少し縮小してきたのか、あるいは拡大してきたのかというところは、いろいろ議論の余地があります。労働者側は、過去からランク間の乖離というのは、金額で見てかなり拡大してきたと見ています。
 各ランクごとの中間値なり、平均値に同じ率を掛けて目安を示しますから、ランクごとに引上げ額に差が付いてまいります。これを時間額にすることにより、どういう変化になるのかという問題はありますが、ランク間の乖離が随分拡大してきたことは確かだろうと思います。
 過去に2回ランクの入替えをやっていますが、資料No.2の表のように、ランク間の乖離があまりにも大きいものですから、ランクが上位県に移ったとしても、そのランクの平均的な水準といいますか、ランク内の他県の水準とはかなり離れた水準にあるというのが現状です。
 それをどうするかという問題は別にして、それに率を掛けると、労側委員がおっしゃったように、引上げ額が逆転する可能性もあるかもしれません。これは、高い引上げ率になった場合ですが、3%ぐらいまではそんなに影響はないのだろうと思います。仮に、将来それ以上高い引上げ率になった場合には、そういう問題も発生するという感じがします。

○会長
 もう1つ、改定の方法について残しておりますが、本日はフリートーキングですので、あえて議論のまとめはせずに、次のテーマに移っていってよろしいでしょうか。

○使側委員
 いまの議論なのですが、目安をランクごとに額で出していくやり方というのは、確かに長い歴史の積上げの結果こうなっているのだということで、いまの姿を変えていくのは難しいという感じがするのが率直なところです。
 確かに、時間額に変えたことによっていろいろ考えなければいけないし、難しい問題が改めて出てきたという感じがするわけです。考えてみれば、時間額表示による影響ということでまとめた資料No.6のいくつかの叙述というのは全くそのとおりで、予定したものではないか。我々は、これは問題である、問題だから、これから何か考えなければいけない、ということをいまここで考える必要はないのではないか。我々は、まだ時間額を決めたばかりなのだから、これからしばらくやって、いろいろ難しさをその中から見つけていって、もう少しやり方を変えなければいけないのかどうかということを考えればいいのです。
 今回変えたばかりなのに、またやり方まで変えるのか。使用者側の立場からいうと、時間額はあまり賛成ではなかったのです。歴史的には、時間額のほうがシンプルにするためにいいのかなと思ってきたわけです。
 使側の地方の人の意見を聞けば、おそらく「なんだ、時間額になったのにまた変えるのか。変えなければ良かったではないか。」というようなことを言われかねないという気もするので、しばらくは時間額を折角やったのだから、いいのではないか、3%まで上がらなければ、差が出てこないのは結構ではないかという気さえするわけで、これは非常に難しいです。率直に言って一挙にリスクがどうかという議論をしてしまうのは、少し早いのではないかという感じがします。

○使側委員
 いろいろな資料が出てきましたので、これに基づいて地方の意見も聞いてみないと正式な意見はあまり申し上げられないのですが、こういうランクのあり方等、項目の議論は分かっておりましたので、ある程度地方の意見も聞いてみたのですが、ランクについては一言で言ってしまうと、現行の制度がいいという意見が圧倒的にいまは多いです。
 その理由としては「いまの枠組みを変えたときの理由説明は何かあるのか。非常に混乱だけを招くのではないか。」という意見が非常に強いということです。したがって、いまのランク分けは必要だし、現行のままでいいのではないですかと。変えたほうがいいという人は、先ほど使用者側の委員が昔から言っているような、少しランクを増やしたほうがいいのではないかという意見の方は数箇所ありますが、基本的にはいまのランクは現行のほうがいいというご意見が圧倒的という状況です。理由は混乱をする。そしてきちんとした説明は不可能に近いのではないか。見直しはいまの時間額になった中で、また時間額のばらつきもあるので、見直しは必要なのだけれども、ではどうしたらいいかというときに、考え方を整理するのが非常に難しいという意見が多いということです。

○会長
 よく分かりました。それは記録として書き足しておいていただいて、今後の議論の参考にしていただくことにします。続いて改定のあり方について、事務局から配付資料の説明をお願いします。

○事務局
 改定のあり方について、これまでの議論を中心に説明します。資料No.7です。これまでの議論の経緯は、昭和52年12月25日に地域別最低賃金について、「中央最低賃金審議会は毎年47都道府県を数等のランクに分け、最低賃金額の改定について目安を提示するものとする。目安は一定時期までに示すものとする。」という答申が出されています。これ以降、現在に至るまで地域別最低賃金額の改定の目安について、毎年諮問・答申が行われているという状況です。
 続いて(2)です。昭和53年度の地域別最低賃金額改定の目安を検討するために、中央最低賃金審議会小委員会が設置されていますが、この中で、「従来の地域別最低賃金額の改定が、中小企業の春季の賃上げ状況と密接に関連していることに注目し、今年度の目安についてもこの関係を考慮した。また最低賃金額の引上げ率は、消費者物価上昇率を下廻らないようにする必要があると判断した。」という具合に、改定の目安について、基本的な考え方がこの小委員会報告で示されています。
 続いて2頁の(3)です。昭和58年に使用者側団体から経済・経営環境が激変した中で、目安の改定諮問、最低賃金の改定諮問を見送ってほしいということで、中央最低賃金審議会答申については当然見直すべきであるという要求が出ています。
 続いて(4)は、平成2年に設置された中央最低賃金審議会専門委員会で、最低賃金の改正の基本的な考え方が示されています。(1)で、「わが国においては労使の交渉により、賃金が毎年引き上げられるという慣行があり、最低賃金についても、このような一般的な賃金水準の上昇を念頭に置きつつ、改正を行っていくべきである。」とされています。
 次頁です。アンダーラインを付けている所ですが、昭和52年の答申に基づく目安制度発足以来、毎年目安を提示し、これを参考として毎年の地域別最低賃金の改正決定が行われてきたことは適切であったと考えると評価されています。
 (5)です。平成6年、再び使用者側団体より最低賃金の改定を凍結するという要望が出ています。4頁の枠で囲った所です。地域別最低賃金の改定時期にあたり、従来型の「横並び」を廃止し、「高賃金・高物価」の悪循環を断ち切る一環として、今年度は最低賃金の改定を凍結することをお願いしたいといった内容です。
 続いて最近の動向で、(6)平成12年の全員協議会の中間取りまとめです。この時期については「賃金引上げを実施しない事業所(凍結事業所)」割合が問題となっています。凍結事業所割合の関係については全員協議会の報告の中で考え方が示されています。アンダーラインで付しているところですが、「凍結事業所割合に応じて目安額を調整し、または凍結するという形で目安の決定ルールを作るとの考え方を直ちに採用することは困難である。しかしながら、特に昨今の厳しい経済情勢を踏まえると、こうした状況についても最低賃金をめぐる諸情勢に係る諸指標の1つとして、目安の審議に当たって勘案していくことが必要である。」という整理がされています。
 最後に直近の平成14年度の「目安に関する小委員会」における議論です。このときは労働者側からは最低賃金の水準につき、その水準の改善が必要であるという主張があった一方で、使用者側からは、「今年の目安の改定については据置きにとどまらず、むしろ引下げ額の提示が必要なときではないか。」ということが主張されています。5頁の四角枠で囲ったところのアンダーラインを付したところです。
 以上が、これまで改定について議論があったことを、雑駁ですが整理したものになります。参考までに諸外国の状況を見てみますと、アメリカでは連邦最低賃金の改定については、大統領が承認のサインをすることで認められていますが、直近では1997年に前年の4.75ドルから5.15ドルに引き上げられた状況です。イギリスは最低賃金制度が導入された1999年以降、毎年諮問が行われています。フランスは労働協議高等審議会の「肯定的答申」を踏まえて、政府が最低賃金額を決定、公布することになりますが、毎年7月1日に行われています。またこれとは別に、消費者物価指数の上昇率が2%に達した時点で、自動的に改定されることもあります。最後にドイツは労働協約で定められた賃金の拡張適用ということですので、特段改定の時期等については特別の規定はありません。
 資料No.8は、労側委員から、日額ではなくて時間額で示したものも作ってほしいという要望があり、当方で作成したものです。昭和53年度315円だったものが、直近の平成15年では664円と、大体2倍くらいになっています。当然この間、14年度から時間額が一本化されたということもあるので、従前の時間額とは必ずしも継続していないことについては一定のご理解をいただきたいと思います。
 2頁目以降では、各都道府県のランク別の時間額を示したものになっています。

○会長
 主として資料で改定のあり方について、これまでの議論の経緯を示していただきました。ご質問ご意見がありましたらどうぞ。

○使側委員
 資料の中でアメリカが5ドル15セントで、日本でいうとCランクとDランクの間ぐらいの金額だと思うのですが、聞くところによるとアメリカは連邦で州によって違って、高い所があったり、これよりも低い所があると聞いています。アメリカの場合はほとんどチップが多いでしょうから、実態的な賃金はもっと高いとは思うのですが、実際に日本はアメリカに追い越せときて、現状ではアメリカと同じくらいですごく高いです。この辺が日本のいまの経済力のなさと思っているのですが、中国はもっと低いのに、アメリカが異常に高いという実態の中で、アメリカの労働者の平均賃金の実態が、ある程度州で高い所と低い所でどれくらいかということがお分かりになるでしょうか。

○事務局
 調べさせていただきます。

○使側委員
 過去経済情勢が右肩上がりで、春闘も毎年賃上げされてきたわけですが、いま考えるとやはり厳しい経済情勢にあって、景気も悪い、あるいは中国との熾烈なコスト競争で各企業は頑張っているわけです。また、商業関係などではデフレの影響で価格が下がっていて、競争が非常に厳しくなっているということで、企業は人件費のコストを下げるのに日夜大変な苦労をしているわけです。中小企業も同じことをしており、人件費のコストをなるべく切り詰めようという方向にあるわけです。したがって、民間の賃金改定でも、昔のような賃上げがすんなりいくというような状況ではなくなってきているわけです。
 もう1つはいまも出た目安などでも分かるように、低い賃上げ率で変化に差がないということを考えると、地方最低賃金審議会、あるいは中央最低賃金審議会の目安について、改定をこれからも毎年必ず行う必要性があるのかということが、疑問になってくるのではないかと思います。
 47県と中央最低賃金審議会の作業は、膨大な行政コストとエネルギーを使っているわけです。毎年の成長率も低く、これからは日本の賃金はある程度頭打ちになり、働く側も雇用する側も多様性を重視するということもあるので、毎年地方、中央ともに諮問改定作業を行う必要はなく、何年かに一遍ということでいいのではないかと思います。私ども中小企業では東京で10月30日に全国大会を開いたわけですが、そのときもそういう意見で、毎年改定をするような現行システムを改めるべきだという意見があり、大会決議として採択した経緯があります。

○労側委員
 いま、低成長率や一般賃金が伸び悩んている中で、毎年この審議会を開く必然性があるかどうかという意見がありましたが、高いところの賃金の引上げと、最低賃金を審議するのは別だと思います。もう1つ、人件費ということでは、確かに賃金の上昇率で見てみると、一般的には伸びていないところはあるかもしれませんが、その中身を見てみると、例えば仕事に与えられる賃金の支払い方が変わってきていると思うのです。どういう仕事をしているから、何にとっての対価かということで、年功序列の部分が変わってきたり、企業でも総額人件費を考えていると思います。例えば総額人件費の中でも、生産性をアップして、なるべく時間外をなくしていく中で、総額人件費を抑えようという動きもあると思います。先ほど言った何に対しての賃金が払われるかをそれぞれの企業が見直していることも背景にはあると思いますので、一般的にいままであったものが、ただコストを削減するだけで賃金を頭打ちにカットしている状況にはないと思っています。

○労側委員
 労側委員が言った具体的な水準のあり方という観点ではないのですが、毎年諮問をして、審議会で議論して目安を示すという現行の仕組みで、私は基本的にいいのではないかと思っています。というのは、1つは最低賃金額は基本的には地方最低賃金審議会で決めるというルールですから、地方審議にあたっての中央としての参考値というか、目安を提示する。
 もう1つは、改定額については諮問を受けて、相当真剣な議論をこの中央最低賃金審議会の場で交わしながら、一定の幅を設けた目安が示されているわけで、ここ1、2年の経過などもあり、経済環境やその他生活実態や賃金実態など総合勘案しながら、公益委員見解ではありますが目安が提示されているわけですから、そうした流れは一応原則として置いておいたほうがいいのではないかという意見です。
 そもそも目安を示すか示さないかということは、諮問をするかしないかという判断でして、諮問をするかしないかということを行政サイドから判断をして、審議会に諮問をする。諮問をしない場合には、何か一定のルールが必要なわけで、その議論については今日配られた資料7の4頁目に、かつて使用者側から賃金改定状況調査の凍結事業所割合を見て、諮問するかしないかのルール化をしたらどうかというご意見もありました。最終的な結論として、この4頁にアンダーラインで引いているような形で、整理されている考えでいいのではないかという感じを持っています。

○使側委員
 いま言われたのは2つあり、1つは現行どおり毎年諮問、目安を出すことがいちばん原則的にいいのではないか。2つ目は仮に目安を毎年出さないという議論をする場合であれば、そのときは一定のルールが必要ですというお話ですね。

○労側委員
 要するに目安を示さないということで、諮問を受けて審議会で真剣な議論を交わしながら、一定の幅をもって目安が示されているわけです。労使意見が噛み合わない中で、近年はずっと公益委員見解という形です。そうすると、毎年改定が必要ではないのではないかという議論の前提としては、諮問をしなくてもいいということにつながります。今年は諮問するかしないかという判断は、審議会ベースではなくて、行政サイドから判断をしなければならない。行政サイドが判断するにあたっては、何か一定のルールが考えられるわけですが、そのルールについてデジタルにというか、数字的なルールで決めるべきものではないのではないか。したがって、この資料7の4頁目にあるような前回の中央最低賃金審議会の取りまとめの考え方でいいのではないかという思いで、もともと地方が決定すべきものです。

○使側委員
 いま大手の企業が合併して何とか生き延びていくという中で、私ども中小企業や零細企業は大変です。山梨県の地方銀行も第2と第3のグループが一緒になって、来年2月からスタートするわけです。その経営者会議の役員をさせていただいており、先日その会議に行きました。各町村に第2の銀行と第3の銀行があり、それが1つになる場合はどこを残すかというと、利用者の利便性など全然考えず、必ず家賃が少しでも低い所を残すのが現実です。
 私の住んでいる所は南アルプス市といい、今年の4月に6町村が合併したわけですが、1つの町村では生きていけないからということで町村合併が始まりました。いま山梨県も経済を養っていくために、合併が進んで7つの市になっています。地方の公的な所もそんなような状態です。
 中小にしてみると、上から高い値段のものを仕入れて、売るときはそのままで売らなければならないということがあり、年々企業が縮小して、人件費も少なくなり、経営者の給料を削って従業員には払っていかなければならないということが続いています。そういう中で、このように毎年最低賃金を上げて、中央最低賃金審議会も地方最低賃金審議会も1年ごとになると、かなりの経費がかかっていると思うのです。そういうことで私は先ほどの使側委員の意見に賛成させていただきます。

○使側委員
 いまの毎年目安を出すか出さないかということについては、全体にはまだ聞いていないのですが、地方でいくつか聞いたところでも、意見は分かれているのが実態です。つまり、先ほど労側委員も言われていましたが、そもそも地方最低賃金審議会で、地方で決めるというベースがあるわけで、その上でどう考えるかという話がまず1つあると思います。
 2つ目は、確かにこういう経済情勢ですので、毎年する必要はないのではないかという意見もたくさんあります。ただそのときに、中央だけ目安を出さなくなって、地方でやるとなると、これはこれでまた困ったことになってしまいます。ない年とある年はどう判断するかとか、中央で毎年諮問しないという形になった場合は、当然地方においても諮問をしない。つまり、中央、地方とも審議しませんという形でないと、地方においてやったとかやらないとかが出てくると整合性が取りにくくなるし、目安が出たときは出たときの受け取り方が全然違ってきてしまいます。毎年やらないのだったら両方ともというご意見があったということだけをお伝えしておきます。
 まだ正式に全体の調整という段階ではないので、こういう情勢で毎年やるのという疑問の声がたくさんあることは事実です。ただ、そのときの技術論の問題というか、ではそのときどうするのかということについては、いろいろなご意見があります。

○会長
 現状は諮問はあったけれども、中央最低賃金審議会としては2年続けて、14年は「目安を示さない」15年は「目安はゼロ円」という形で、経済の実情との関係で、そういう判断をしていただく。ですから、諮問がないということと、目安を示さないということとは全く別問題で、いまのご議論は行政コストの問題なのか、それとも諮問を受けて目安を示さないということなのか。示さないのならば諮問を受けないほうがコストがかからないという議論なのか。いまお話になっていたのは諮問の段階の話ですね。

○使側委員
 要するに今年示した「ゼロ」、その前は「示さない」という形になったわけですが、実際的にはあれはあれで目安として話し合ったものとして出ているという位置づけですね。これはゼロであろうが、プラスであろうがマイナスであろうが、出ているのだという考え方です。したがって、目安を示さないということになれば、結局諮問がないという形が原則なのだろうと思います。例えば諮問があっても結局本当に何も出さない。プラスかマイナスかゼロなのか、そのイメージは何も出さないで、ただ出しませんという結論があり得るのかどうか分かりませんが、原則はそもそも諮問をしないということになるのではないかと思います。
 そういう意味では、もしも毎年しないという話の中では、先ほど使側委員が発言されましたが、何年かに1回という決め方は1つ検討する余地はあると思います。ルール作りとは関係ない話です。要するに鉄鋼労連が隔年春闘に切り換えたみたいな話で、どういうやり方があるかは分かりませんが、何年かに1回かというやり方もあるのかと思います。ただ、その際絶対に中央だけの話では済まないので、その場合は地方も同じようにしないと整合性がとれてこないという問題があるということを、先ほど言ったわけです。

○会長
 先ほど労側委員がおっしゃったことですが、諮問するかしないかの根本的な判断を、こういう審議会の場ではなくて、行政サイドで一方的に判断する。法による行政とすれば、ルールが必要になってきて、それをデジタルで出すことは難しいのではないかという話もあったわけです。

○使側委員
 この中に平成6年に値下げもあっていいのではないかという話が出てきました。諮問したら必ずゼロかプラスかという諮問のあり方の中で、この間初めてゼロになったのですが、いままでは諮問すると必ず上げなければいけないという流れができていると思うのです。だから、下げてもいいという諮問であれば、経営者側は毎年やっていいと思うのですが、実態的にいちばん最後の数字を見ても、昭和53年からいままででいちばん最高といちばん最低の額が76から85に縮まっていますので、上のほうに近付いてきているという感じがします。
 経営者側からすれば、全国で最高と最低はいま100円の幅があるのだから、上げようとすれば上げられる余地が、あるわけです。別に目安がなくても、都道府県で決められるのであれば目安諮問がなくても上げられるのではないかという解釈をすれば、やらなくてもいいのではないかという解釈が成り立ちます。
 逆に下げてもいい、下げたいということがあれば、それはあちらとは意見が違うとは思うのですが、我々はなるべく企業として競争していくためには、下げたいということがあります。それが決められてしまうと、ゼロかプラス以外にはないということであれば、やる意味はないということになります。それがいいという可能性があるのであれば、やる意味はあると思います。
 ですから、その辺で金額的に分けているランク別もこれからはあり得ていいのではないかということで、マイナスもあり得るのであれば、毎年やる意味はあるけれども、上げることしかないのであれば、まだまだ幅があるのだから毎年やる必要はない。経営者側は失業者を増やさないで雇用するということを第1条件で考えれば、下げてでも雇用していこうという行政指導があれば、下げられるのであれば下げて、雇用を確保していこうと。企業の競争からいえば、下げられないのなら、やはり人を減らすのは仕方ないという考えになると思います。

○使側委員
 いまの使側委員の示し方の問題のご発言は、私ども地方の使側の意見も大体共通しております。これについては中央で目安審議をするときには、いままでの上げ幅という話でゼロも含んでいますが、状況によってはゼロ以下ということ、要するに下げるという可能性もあるので、上げ幅、またはフラット、または下げ額ということも含めて、毎年目安は示してもらいたいという意見は、過去から非常に多いということを申し上げておきたいと思います。

○労側委員
 先ほどから企業経営の問題や行政コストの問題が出ていますが、最低賃金というのは社会の安全帯としての非常に重要なセーフティネットとしての役割を持っていると思っています。その意味からいうと、昨今の自殺者の増加や犯罪に走る人が増加しているということも考慮の中にきちんと入れた上で、社会のセーフティネットというか、社会全体を安定させるための役割としての最低賃金制の役割が、非常に重要になっているのではないかと私は考えています。そのときに、いまの情勢ですから、ゼロとかが改訂諮問の中で目安として出されることはあり得るわけです。それでは諮問をしないなり、審議をしないというときのルール作り、例えばゼロにしろ目安を出すときはかなりの改定状況調査なども含めて資料を検討して、決定をしているわけです。そのいままで審議してきた中身のことをルール化することが、労側委員もいま言われましたが本当に可能なのだろうか。
 ルール化することができるとするならば、賃金が上がろうと上がるまいと、この何10年という長い間にルールができたはずなのです。それがルール化できなかったということは、やはり難しかったからなのではないかと私は考えています。その意味で言いますと、非常にルール化が難しい中で、行政コストはかかるかもしれないけれども、冒頭申し上げた最低賃金制の重要性に鑑みれば、毎年審議をするのはやむを得ないことなのではなかろうかと考えています。

○使側委員
 私は別に審議をしなくてもいいという意味で言っているわけではありません。いま自殺者ということが出ましたが、自殺者は労働者の方だけでなく事業主も非常に増えています。それぞれの立場でそれぞれ苦しい、ということだろうと思います。最低賃金が社会のセーフティネットだということを否定するつもりはありませんが、あくまでも要素の1つとしての賃金ということですから、すべてセーフティネットということで議論できるものでもない。
 また、先ほど言いましたように、いままでのような右肩上がりで、それぞれの賃金を引上げ引上げと出していたような時代と、これから変わってくるのではないかという考え方があるわけです。いままでの延長線上で重大時だからといって、毎年やることの効果、引上げというのはここ何年かはずっと低く抑えられているわけですから、そういうことからいっても、それが3年に一遍ということで、諮問自体は3年に一遍にするということでルールを作れば、別に3年前と当年と比べて引上げなり引下げをすればいいわけです。20年前とは経済環境が変わってきているのだということをもう少し考えたほうがいいのではないかというのが私の提案です。

○使側委員
 いままで長い間審議してきたので、自動的にそういう方法があるのならば、もうすでにやっているでしょうという話がありました。いままでこれだけ蓄積してきているので、景気との連動というか、何らかの傾向が分かると思うのです。労側委員も自動的にそういう目安は出せるのだろうかというお話でした。私は単純に考えるものですから、なぜできないのかと、いままでずっと思っていたのですが、フランスの場合に、消費者物価指数の上昇率が2%に達したときにという、こういうルールが出てくるような指標があってもいいのかという気はします。それがいままで20年間、実際の目安とそのときの消費者物価指数でもいいのですが、消費者動向との相関関係がどのようになっていたかというデータを取れば、ある程度の傾向が見えると思うのです。
 それだけでやってしまうといまの使側委員のお話のように3年に1回の諮問とか、そこにルール作りが必要とは思うのですが、少なくとも全く審議のみというよりは、いままで積み上げてきたデータから、自動的に算出できる方法というのも、この際探ってみてもいいのではないかと思います。

○労側委員
 何回も言うのは本当に嫌なのですが、水準自体が、みんなが納得する水準だったら、確かに上げ下げがあっても現実にはいいと思うのです。アメリカの話もされましたが、いろいろな考え方があって、ああいう制度になっているだけの話です。そういう点では、我々が常に言うのは、やはり大変厳しいのは分かっています。だからああいう結果になっています。地方でも大変な議論をしています。でも、地方でもマイナスの議論もないわけではないわけです。でも、腹の中ではやはり何とか守りたいというみんなの気持があって、今回は大変ゼロが多かったし、引き上げを行った地方最低賃金審議会が大変少なくなった。でも、その中でもまだ産業別最低賃金などはかなり頑張って、そういうところは労使が工夫をして、1円ぐらいはかなり出しています。そういう点では平均的な姿、890円という姿だって、1円プラスになったり、でもマイナスになるときもあるという、それは確かにあるのです。でも、それは最低という最低の話ではないのです。職場を守るために賃金カットなど現実的にはいっぱいしています。それは苦しくても職場を守る、企業を守るというのは労働者も同じです。これは少なくとも最低の生計費で、それを担保するために、企業経営がこれでつぶれるという所もあるというけれども、逆に言えば、これも出せない企業は社会から出て行ってもらわなければいけないという考え方もあるわけです。
 そういう点で、確かに厳しさなり、賃金と相関関係でやってきたからそれを否定するものではないけれども、だから、それが悪いからこっちもおっしゃられたように物価が上がるとか、賃金が上がるという1つのものでないと、確認するというルールを作るというのは、私はいかがなものか。そういう議論を常にしてきたわけです。経営者の皆さんはマイナスがあってもいいのではないかと。私自身はマイナスがあってはいけないという制度は、水準自体はよくないと思っています。ただ、マイナスというのは、マイナスにする水準の正当性なり何なりかがあって、そこまで議論をし尽せないと思っているのです。そういう点で厳しさの中でこの2年間実質ゼロです。
 我々は水準からいったら、後ろから叱られるのです。お前ら何を言っているのだと。労働者側は生計費だ何だかんだと上げていくべきだという主張をしているではないか。その意味からいったら、こんなときにでも上げていくべきだというのが我々の後ろにはいっぱいいます。だから、我々もそういう主張をするけれども、そういう中でもああいう結論が出るということは、私たち自身も経済情勢からすれば、やはり一般的な引上げというのは、公益見解として出すのも無理だろうし、大変だろうなということでそうなっています。
 マイナスだったら、マイナスの公益見解が出るかどうかは議論の中でして、そうなったときは我々の対応はまた違ってくるとは思うのですが、そういう点では、水準の別の場でするというところで、どこまで合致するかどうかは分かりませんが、そういう兼ね合いは先ほどの引上げの幅もあるのだけれどもあると思うのです。そこに日本的な良さというか、今回使側委員も引下げの話を聞かなかったように、多分いつかは聞くのでしょうけれども、私自身、引き下げていいというのはなかなか言いづらいのですが、ある程度のきちんとした水準が担保されているという認識が全部合えば、当然引下げがあってもいいのではないかという、これは個人的な見解ではあります。そうでない限りは、引下げも含めて議論をした結果、引下げではない、上げもできないという2年間の落とし所としては、私は良かったと思うし、これからもそういうところで、本当にその中でも、私どもの上げていくという主張が通るかも分からない。むしろ使用者側が言うマイナスが通るかも分かりません。そういう中では上げるべきだとか、下げるべきだということよりも、真摯にそういう議論をして、この目安制度というのはそういう意味では大変重要だし、これからも継続すべきではないかと思います。

○使側委員
 私が先ほど申し上げたのは、目安の審議や、先の目安を示すとかそういう話をしているのではありません。議論するに当たって、例えばいま物価が下がっている状況が続いているので、結果目安がどうなるかではなくて、いままでの上げ幅という概念が非常に強く定着しているので、審議の中には当然下げも上げも含んだ中で検討して、目安を示していくというものを確認できればということで申し上げています。したがって、当然そうであっても議論して、結果がどうなるかは別物だろうと思います。そういう枠組みの話として申し上げたということです。

○労側委員
 枠組みとして水準論が通らないと、上げも下げもという表記の中で、目安制度を議論するというのは。

○使側委員
 目安制度そのものが、最近上げも幅がある中で議論していくのだけれども、その議論の中には当然生計費の基準と、類似の労働者の賃金とか、企業の支払い能力の3つの視点から議論されていくのだろうと思っています。結果がどうなるかは別問題なのだけれども、枠としては下げも含んだ中で、それがあり得るという形の枠組みにしたいということで意見を申し上げました。

○公益委員
 ランクのあり方も改定のあり方も、労使の皆さんのご意見を聞いていると、大変難しいなと思います。現状の最低賃金制度の枠組みの中で議論するとなると、どうしても限界があるかと思ってしまうのですが、私はとにかくシンプル・イズ・ザ・ベストと思っていまして、簡素で分かりやすいことがいちばん大事かと思います。何か議論するたびにシステムそのものを複雑にしていくのです。いままでの資料を見てもとても複雑です。だから、何かを変えるというのは後々に影響するので大変です。ランクのあり方についても時間額表示にすれば差が小さくなるというのは当然のことといえば当然で、折角時間額表示に変えたわけですから、使側委員が言っていたように、当面はいまの状態でもう少し推移を見守ったほうがいいかと思います。
 改定のあり方ですが、これを何年に一度改定すると決めてしまうことには反対です。いまはそれほど経済環境は変化していませんが、経済環境の変化が著しくなりますと、フランスのように物価水準を指標に自動的にというのであれば問題ないのですが、何年に1回と決めるのには賛成しかねます。ただ、毎年やる必要があるかというと、そうでもないかとも思いますし、その場合諮問するしないは誰が決めるのかとか、制度に関わることがいっぱい出てきてしまって、どうしても議論しているときに限界を感じているのが私の感想です。

○会長
 諮問も中央の諮問と地方の諮問もあるわけです。ここで議論するのは中央最低賃金審議会だから中央のことだけを考えればいい、というわけにもいかないでしょうから、少し目安を受けていままで地方最低賃金審議会が審議をしていたので、使側委員のおっしゃったように、地方の体制も考えながら、ここで議論しなければいけないだろうと思います。
 今日の会議の目的はフリートーキングですので、印象としては随分率直な意見が交わされたと思います。次回以降にこれを活かして、より良い結果を得たいと思います。ほかに特にご発言がないようでしたら、今日はこの程度にさせていただいてよろしいでしょうか。

○公益委員
 1つ質問ですが、資料7の5頁のイギリスの賃金率が決定されるというのはどういう意味なのか、ちょっと分からなかったものですから教えてください。

○事務局
 時間当たりの額で出しています。

○公益委員
 それは分かりました。もう1点だけ。何人かの方がフランスの物価スライド制に触れられていましたが、物価スライド制はかなり慎重にやらないと上にも下にもかなり副作用が出るというか、スパイラル傾向というものがあります。日本が将来的にそうなるということはないと思いますが、万一そういうことが視野に入るのであれば、慎重にしたほうがいいかと思います。

○労側委員
 フランスは物価2%を超えたら自動的、そうでないときは勧告で毎年やっています。だから年に2回あるときもありますということで、それなりの大変複雑な制度になっています。いまは6通りか7通りぐらいあるのではないでしょうか。

○使側委員
 使用者側は大反対です。

○会長
 それでは次回の全員協議会についてですが、12月16日(火)午後1時から、専用第17会議室において開催します。議題は今日と同様にフリートーキングですが、具体的には賃金改定状況調査と、参考資料のあり方と、最低賃金の金額水準、それに付随するその他の論点ということになっていますが、そういうことで進めていってよろしいですか。ではこれで、第2回目の目安制度のあり方に関する全員協議会を終了します。本日の議事録の署名は内海委員と横山委員にお願いします。どうもありがとうございました。


(照会先)
厚生労働省労働基準局賃金時間課最低賃金係(内線5530)


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