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目安のランク区分及び表示方法について
(中央最低賃金審議会における検討経過)

発足の経緯
(1 ) 昭和47年以降各地方最低賃金審議会において各地域の実情に応じ地域別最低賃金額が決定・改正されていたが、「全国的な整合性の確保に資する見地から」目安が昭和53年度から提示されている。
(2 ) 昭和52年の各都道府県の地域別最低賃金額を基礎に4ランクに区分し、また、ランク付けもこれに基づいてなされたものである。
(3 ) 目安の表示は、各ランク毎の最低賃金額の中間値を基礎に引上げ額の絶対値で示す形で開始された。
(4 ) これは、中央最低賃金審議会としては各都道府県の地域別最低賃金額の水準については判断を加えず、その調整は各地方最低賃金審議会の自主的な判断に委ねるとの考え方によるものである。

昭和55年及び56年の中央最低賃金審議会目安に関する小委員会における議論
(1 ) 昭和55年及び56年の中央最低賃金審議会目安に関する小委員会において、目安の表示方法やランク区分について議論がなされた。
(2 ) 労働者側は、目安を最低賃金額の絶対額で示すべきであり、それが受け入れられないならば、各ランク同額の引上げ額にすべきであると主張し、使用者側は、ランク区分を見直し5ランクに、具体的には現行のDランクに属する県では最低賃金額が当該県の賃金実勢より高すぎる実態があるのでDランクを2分するべきであり、また、下位ランクのアップ率を低くすべきであることを主張した。
(3 ) 昭和55年、56年とも目安の表示方法、ランク区分について労使の合意は得られず、最終的に目安は従来と同様の形態で示されることとなった。

昭和57年から58年にかけての全員協議会における議論
(1 ) 昭和57年から58年にかけての全員協議会において、目安のランク区分、表示方法等について検討を行った。なお、検討の過程において、一部の地方最低賃金審議会から各都道府県の地域別最低賃金の水準問題(各都道府県ごとの低賃金労働者の賃金実態と地域別最低賃金額との整合性の確保等)及び地方最低賃金審議会の改正審議の長期化防止の問題についても検討する必要がある旨の意見が寄せられたことから、これについても検討を行った。
(2 ) 労使の主張
(1)  ランク数については、労働者側は当面は現行4ランクを維持しつつ将来的には減らしていくべきであると主張し、使用者側は少なくとも5ランク、できればそれ以上に増やすべきであると主張した。
(2)  表示方法については、労働者側は、各ランクごとの標準値として絶対額で表示すべきであると主張し、使用者側は、各ランクごとに引上げ額で表示する現行方式を維持すべきであると主張した。
(3)  各都道府県の地域別最低賃金の水準については、公益案(賃金構造基本統計調査等による各都道府県の低賃金労働者の賃金実態と地域別最低賃金との相関関係は、全体としてそれ程大きな不整合はみられず、ある程度は乖離していると認められるのは数県であり、当該地方最低賃金審議会が乖離の程度を判断するための指針としての別表(ある程度の乖離の認められる都道府県に○△の印を付したもの)を参考資料として添付するもの)に対して、労働者側は、最終的に本文には賛成するが、別表に○△の印を付することには反対であると主張し、使用者側は、別表は削るとともに本文に三重県及び奈良県にある程度の乖離は認められることを記載することを主張した。
(3 ) 対応策として考えられたものは次のとおり。
(1)  ランク数の増減
(2)  絶対額による表示
(3)  引上げ率による表示
(4)  各都道府県の賃金実態に基づくランク区分
(4 ) いずれの案についても合意が得られず、引き続き検討することとなった。

平成元年全員協議会報告における議論
(1 ) 平成元年2月に設置された全員協議会においても、目安のランク区分及び表示方法について、引き続き検討された。
(2 ) 労使の主張としては、目安の表示方法について、労働者側は、地方最低賃金審議会の自主性を拡大し、地域別最低賃金の各県別順位を是正し、全国的整合性を確保するためには、目安の形態にランク別の引上げ額からゾーンの表示(ランク間オーバーラップ方式)に変えることを主張し、使用者側は、各ランクごとの引上げ率による表示を行うことを主張した。
 また、ランク区分については、労働者側は特段の主張がなく、使用者側は、各県および各県内の地域格差の実態に即して合理的な設定をめざすべきであると主張した。
(3 ) 目安の表示方法については合意をみるに至らず、全国的整合性及び地方最低賃金審議会の自主性を確保する観点から、今後検討を行い、平成2年度からその具体化が図れるように努めることとされた。
 また、ランク区分についても、合意をみるに至らず、今後協議することとなった。

平成2年全員協議会報告における議論
(1 ) 平成元年より引き続き開催された全員協議会において、目安の表示方法については、労働者側はゾーン方式を主張し、使用者側はゾーン方式は考慮には値するが、地方最低賃金審議会における具体的な金額審議の際にその適正な運営につき不安があると主張し、この点については、今後検討を続けることとされた。
(2 ) なお、地域別最低賃金の順序については、平成2年全員協議会報告においては、現時点では整合性(各都道府県の賃金の実態の順序と地域別最低賃金の水準の順序)については幾つかの地域において問題があるものの、多くの地域について問題がないとされた。

平成7年全員協議会における議論
(1 ) 平成5年3月に設置された全員協議会において、目安のランク区分及び表示方法について議論がなされた。
(2 ) ランク区分について、労働者側は、東京の最低賃金が賃金実態との関係で低くなっていると問題にし、使用者側はランク数を含めて議論する必要があるとしたが、6年中には合意をみるに至らず、継続して審議がなされた結果、各都道府県の経済実態に基づき各都道府県の各ランクへの振分けを見直し、今後見直し後のランクで目安を示すことで合意された。このうち、各都道府県の経済実態をどのように把握するかという問題に関しては、賃金動向を始めとする諸指標を総合化した指数を各都道府県の経済実態とみなすこととし、諸指標としては、所得・消費に関する指標(5指標)、給与に関する指標(10指標)及び企業経営に関する指標(5指標)を用いることが、また、各指標については、原則として直近5年間の数値の平均値に基づいて検討することが合意された。さらに、以上の20の指標を総合化した総合指数は、20の指標についてそれぞれ東京を100とした指数を求め、そうやって出された指数を単純平均することによって算出することで了承された。次に、ランク数については、従来と同様4つとすることで合意された。さらに、各都道府県の各ランクへの振分けに当たっては、各都道府県の経済実態を示す総合指数を基本に、原則として総合指数に比較的大きな格差のある府県間に着目するとともに、各ランクにおける総合指数の分散度合を全体的に小さくする方向でランクの境界を設定することで合意された。さらに、ランク区分については、今後5年ごとに、今回用いた20の指標を総合的に指数化した総合指数に基づいて見直しを行うことが合意された。
(3 ) 表示方法については、労働者側は現行の各ランクごとに単一の額で表示する方式について、ランク間格差の拡大とランク内格差の縮小という現象を生じさせ、各ランクの上位県の最低賃金額が低く抑えられていると主張し、使用者側は、今度とも額表示を行うこと、ゾーン方式には問題があり反対であることを主張したが、6年中に合意をみるには至らず、継続して審議がなされた結果、現行の各ランク区分ごとの引上げ額による表示を引き続き用いることが、目安額の算定については「新たに各ランクに振り分けられた都道府県の地域別最低賃金額の単純平均値方式」とすることが合意された。

平成12年全員協議会における議論
(1 ) 平成11年4月に設置された全員協議会でランク振分け等ランク区分の見直しと表示方法について議論がなされた。
(2 ) ランク区分について、ランク数は従来どおり4ランクとすることが合意された。ランク区分見直しの基礎とした20の指標の取扱いについては検討の余地のあるデータもあるが基本的に変更せず、各ランクへの振分けはランク間の移動・ランクごとの変動をおさえ、各ランクにおける総合指数の分散度合いを小さくすることも考慮して決定することが合意された。
(3 ) 表示方法について、労働者側は賃金や経済諸指標に対比した地域別最低賃金の全国順位における整合性の確保という観点から、「ランク間オーバーラップゾーン方式」というようなことも含め、何らかの工夫、改善を加えるべきであると主張した。一方、使用者側は制度としては現行制度の中で地方最低賃金審議会の自主性を持たせるべきであるとし、「ランク間オーバーラップゾーン方式」対しては慎重な態度を示した。さらに審議を重ねた結果、ランク制度の意義を損なわないようにするため、当面は現行の各ランクごとの引上げ額による表示を引き続き用いることが合意された。


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