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改定のあり方について


これまでの議論の経緯
(1)  中央最低賃金審議会答申(昭和52年12月25日)
 「今後の最低賃金制度のあり方について(答申)」において、最低賃金額の改定につき、以下の内容が同意された。これ以降(昭和53年度以降)、地域別最低賃金額改定の目安について、毎年、諮問・答申が行われている。

今後の最低賃金制度のあり方について(答申)(抜粋)

地域別最低賃金について、中央最低賃金審議会は、毎年、47都道府県を数等のランクに分け、最低賃金額の改定について目安を提示するものとする
目安は、一定時期までに示すものとする

(2)  中央最低賃金審議会第1小委員会報告(昭和53年7月27日)
 昭和53年度における地域別最低賃金額改定の目安を検討するため、中央最低賃金審議会第1小委員会が設置された。当小委員会において、地域別最低賃金額改定の目安につき以下のような基本的考え方が示された。

中央最低賃金審議会第1小委員会報告(昭和53年7月27日)(抜粋)

.基本的考え方
 従来の地域別最低賃金額の改定が中小企業の春季の賃上げ状況と密接に関連していることに注目し、本年度の目安についてもこの関係を考慮した。
 また最低賃金額の引上げ率は、消費者物価上昇率を下廻らないようにする必要があると判断した。
.目安
(略)

(3)  使用者側団体からの要望(1)(昭和58年5月18日)
 第2次石油ショック以降、経済の低成長が続く中、日本経営者団体連盟、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会の3団体より労働大臣に対して、目安及び地域別最低賃金の改正の諮問見送りの要望が提出された。

申し入れ書(抜粋)

.基本的考え方
 経済・経営環境が激変した今日、地方最低賃金審議会における最低賃金の改訂諮問および中央最低賃金審議会における目安の改訂諮問については、毎年必ず諮問するとの考え方を改めるべきである。従って昭和52年の中央最低賃金審議会答申にある「毎年・・・・・目安を提示する」という文言は当然見直すべきである。

(略)

(4)  中央最低賃金審議会専門委員会報告(平成2年4月27日)
 平成元年に設けられた全員協議会では、平成2年3月16日に専門委員会が設置され、目安の表示方法及び金額審議の参考資料の整備、充実を中心に審議が重ねられたが、その中で「地域別最低賃金の改正の基本的な考え方」につき以下のような整理がされている。

中央最低賃金審議会専門委員会報告(平成2年4月27日)(抜粋)

地域別最低賃金の改正の基本的な考え方
(1)  地域別最低賃金の水準と改正の幅と頻度
 わが国においては、労使の交渉により賃金が毎年引き上げられるという慣行があり、最低賃金についてもこのような一般的な賃金水準の上昇を念頭に置きつつ、改正を行っていくべきである
(略)
 複雑で多様な経済社会の状況において、最低賃金の改正について、自動的に改正幅を示すルールがあるとは考えられない。毎回の改正は、その時々の状況に応じ、最低賃金審議会において、識見を有する委員の意見交換を通じて、検討を加え、決定されるべきものであると考える。この点、昭和52年の答申に基づく目安制度発足以来、毎年目安を提示し、これを参考として毎年の地域別最低賃金の改正決定が行われてきたことは、適切であったと考える
(2) 、(3)
今後取るべき具体的措置
(1)  中央最低賃金審議会による目安の提示
 中央最低賃金審議会は、今後も、昭和52年(9月28日)の小委員会報告に当たり了解されたとおりの考え方(別添)に立つものとする。

以下略

中央最低賃金審議会小委員会報告(昭和52年9月28日 中賃了解)

 昭和52年3月29日の総会において了承された当小委員会の中間報告の「2 得られた結論」の(2)項(「最低賃金額の改定については、できるだけ全国的に整合性ある決定が行われるよう、毎年中央最低賃金審議会がそのときの情勢に応じ、何らかの方針を作成し、これを地方最低賃金審議会に提示するものとする。」)の「何らかの方針」の具体的なあり方については、その後の検討の結果、以下のような「目安」が妥当であるとの結論に達した。
(1)  地域別最低賃金について、中央最低賃金審議会は、毎年、47都道府県を数等のランクに分け、最低賃金額の改定について目安を提示するものとする。
(2)  目安は、一定時期までに示すものとする。
(3)  目安提示については、昭和53年度より行うものとする。

(5)  使用者側団体からの要望(2)(平成6年7月19日)
 平成6年の目安審議中の7月19日に、日本経営者団体連盟より労働大臣に対し地域別最低賃金の凍結の要望が出された。これに対して日本労働組合総連合会からは、日経連に対し最低賃金凍結声明の撤回を求める緊急声明が出された。

地域別最低賃金の改定凍結を(抜粋)(平成6年7月19日)

(略)
 地域別最低賃金の改定時期にあたり、従来型の「横並び」を排し「高賃金・高物価」の悪循環を断ち切る一環として、今年度は最低賃金の改定を凍結することをお願いしたい。

(6)  全員協議会中間取りまとめ(平成12年3月24日中賃了承)
 経済情勢等を踏まえた目安の決定のあり方等につき検討がなされ、賃金改定状況調査における「賃金引上げを実施しない事業所(凍結事業所)」割合の扱いが問題となった。その結果、以下のような結論を得ている。

全員協議会報告(抜粋)(平成12年3月24日中賃了承)

 経済情勢等を踏まえた目安の決定のあり方等について
(3)凍結事業所割合の状況の取扱い
(略)
 また、凍結事業所割合の増加という状況と低賃金層の賃金動向との関係が必ずしも明確でないこと等も考慮すると、その割合に応じて目安額を調整し又は凍結するというような形で目安の決定ルールを作るとの考え方を直ちに採用することは困難である。しかしながら、特に昨今の厳しい経済情勢を踏まえると、こうした状況についても、最低賃金をめぐる諸情勢に係る諸指標の一つとして、目安の審議に当たって勘案していくことが必要である。 (以下略)

(7)  「目安に関する小委員会」(平成14年度)における議論
 労働者側より、最低賃金の水準につき、その水準の改善が必要である旨主張があった一方、使用者側より、目安の改定は据置きにとどまらずむしろ、引下げ額の提示が必要なときではないかとの主張があった。

中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(平成14年7月22日)(抜粋)

 使用者側見解
(略)
 ・・・すべての事象がかつての右上がりから右下がりの時代になっており、最低賃金だけが毎年引き上げられていくことはすでに不可能になっているのであることから、異常で危機的でもある今日の経済情勢に鑑み、今年の目安改定については、据置きにとどまらずむしろ、引下げ額の提示が必要な時ではないかと最後まで強く主張した


諸外国の状況
(1)  アメリカ
 連邦最低賃金の改定は、最低賃金改定案が連邦議会に提出、審議、承認の上、大統領が承認のサインをすることにより認められる。直近では1997年に前年の4.75ドルから5.15ドルに引き上げられた。

(2)  イギリス
 政府からの諮問に応じ、低所得委員会(Low Pay Commission)で検討。同委員会の勧告を踏まえ賃金率が決定される。最低賃金制度が導入された1999年以降、諮問は毎年行われている。

(3)  フランス
 労働協議高等審議会が国家財政、経済予測等を含めた経済変動について検討、その結果改定が必要であると認められた場合には「肯定的答申」を以って政府に最低賃金の改定を提案。政府はこれに基づいて最低賃金額を決定、公布する。改定は毎年7月1日に行われるが、政府はその必要性に応じて随時改定を行うことができる。
 なお、物価指数スライド制の適用による改定も、必然的に随時行われる(消費者物価指数の上昇率が2%に達した時点で自動的に改定)。

(4)  ドイツ
 法定最低賃金はなく、労働協約で定められた賃金の拡張適用であるため、改定の時期等について特別の規定はない。


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