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資料7


支援費制度下における相談支援事業の現状と課題
―― 自立生活支援センター「きらリンク」(京都市)の事例を通して ――

自立生活支援センター「きらリンク」
事務局長  谷口明広

1. 自立生活支援センター「きらリンク」の概要
(1) 「きらリンク」の経緯
設立   2000年10月1日(2年半を経過している)
運営主体   財団法人 京都新聞社会福祉事業団
  全国でも民間の財団法人が「市町村障害者生活支援事業」の委託を受けているのは珍しいことである
業務内容   資料1
事業実績   資料2

(2) 京都市障害者生活支援事業連絡協議会の設立
設立   2001年6月21日
事業内容   資料4
現行体制   資料5

(3) 京都市生活支援連絡会(サービス調整ネットワーク会議)
 支援センター4ヶ所とサービス事業所2ヶ所の相談員が集まり、地域生活支援に関する情報の共有とサービス調整を試みている。現在は、賛同者による私的集団ではあるが、有効に機能しており、将来は公的な調整会議に発展させていきたいと考えている。

2. 相談支援事業から見る支援費制度の問題点と課題
(1) 支援費支給申請における問題点
障害者生活支援事業所の量的不足および質的な問題点の露呈
  障害をもつ人たち自身が自分の必要な介護時間が算定できず、市町村職員も知識および経験不足という現状では、適切な申請が為されなかった可能性がある
障害者ケアマネジメント従事者の機能不全と経験不足
  障害をもつ人たちの障害種別や生活実態を知らないケアマネジメント従事者が多く、介護量の算定ができなかった

(2) 支給決定における問題点
居宅生活支援におけるサービス種別による困惑
  本来は、日常生活支援中心の支給決定をされなければならない障害をもつ人たちが、日常生活支援を担当してくれる事業所が少ないという理由で、身体介護中心の支給決定を余儀なくされている
市町村が作成した支給決定ガイドラインによる困惑
  大阪市の例【資料6】に見るように、障害程度の重軽により、一律に機械的な決定を実施しているが、支援費制度の趣旨からして疑問を感じざるを得ない

(3) 支援費制度が実施されてからの問題点と課題
サービス事業所の不足による選択不可能という状況
  サービス事業所が量的な不足状態にあり、自らがサービスを選べる制度ではなくなっている現状にあり、ホームヘルパー不足と関連して、利用が抑制されている
サービス量の維持を意識した「無意味な利用」が多くなっているという現状
  月毎に定められたサービス量を使い切らないと、来年度に削減されるという恐怖心から、無意味な利用が増えていると思われる。本人が外出を望んではいないのに連れ出されたり、親が定期的な利用を決めてしまったりする例が多く見られてきている

3. 支援費制度下における地域生活支援の問題点と課題
(1) 京都市特有の問題点と相談支援事業の役割と機能
障害をもつ学生の支援費活用における問題点
  仕送りを受けている学生は、親の居住地で支給決定を受けなければならないという規定のもとで、現在居住している地域の福祉事務所では相談に乗ってくれないケースが多発してきている。この問題に取り組み、支援しているのは、支援センターである
高齢者専門事業所への支援費制度介入への積極的なアプローチ
  当支援センターが位置する地域は、担当が広域になっており、介護保険の事業所しか存在しない場所もある。障害者を敬遠しがちな事業所に対して、ヘルパーの再教育プログラム等を提案している

(2) 支援費サービス事業所における問題点
事業所が不足していることによる主体性の相違に関する問題点
  事業所を選択できないという問題点に関連して、契約できた事業所の意向でサービス提供の時間数や時間帯が決められることが多くなっている。利用者主体という名目であるが、事業者主体という実態が浮かび上がってくる
事業者が誘導して「本人の意思ではない利用」を促進している疑問点
  「支給量の全てを使用しないと、来年度に削減される」という不安から、知的障害をもつ人たちに対して、「本人の意思ではない利用」が為されているという報告を受けている
ホームヘルパーに対して支給される給与の格差に対する問題点
  事業所からヘルパーに支払われる時給は、900円から1000円という金額である。支援費制度における身体介護においては、4000円を超える金額が支給されているにも関わらず、時給が安過ぎるのではないだろうか。NPO法人の事業所が多いという現状を見ると、利益還元という問題は大きいと思われる

(3) 障害をもつ人たち自身の問題点
支援費制度の充実によるエンパワメント低下への不安
  「来週の介護者を探すために、毎晩二時間も電話をしている」という状況にあった重度の障害をもつ人たちが、事業所へ一本の電話を掛けるだけで事足りてしまうという状況は、歓迎すべきではあるが、彼らのエネルギーを奪うものになり兼ねないという危険性を感じる
ボランティア不足による問題点
  今まで関わってきたボランティアが、「お金がもらえる」という意識から、ヘルパー資格を習得し、有資格者となってきている。一見は良い傾向と思われるが、自由であり、友人感覚で関係が持てるボランティアが減少していることは、今後の大きな問題点となると思われる
第三者評価的な存在感が薄れていく問題点
  オンブズマンや監査委員とは異なり、不正を摘発するのではなく、サービスの質を向上させるように活動する第三者評価の役割は、今まで障害者自身や障害者団体が担ってきたと認識している。障害をもつ人たち自身が事業所を立ち上げてきていることにより、この機能が弱まってきているのではないかと懸念している


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