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資料2


2002年度 事業報告書

財団法人京都新聞社会福祉事業団
自立生活支援センター「きらリンク」 

【運営状況】
 自立生活支援センター「きらリンク」(以下、支援センターとする)の意思決定機関である運営委員会を今年度も継続して実施した。しかしながら、運営委員全員のスケジュール調整が困難となり、十分に開催されたとはいいがたい。運営委員会を機能させるために、各運営委員に個別での意思確認と調整を図り、意思決定機能を維持させることはできたものの、当センターの課題は、スピードが求められることも多く、今後の取り組みとしてメーリングリストを活用した意思決定の仕組みを整えたいと考えている。また昨年に引き続き「ケース検討会議」を実施し、相談員レベルでの課題の共有と、より好ましい援助の実践に向け取り組んできたが、これに関しても相談員レベルでの課題共有と解決策への方向付けを目的に、より質が高く、相談上の課題のスピードに対応できる方法を模索したい。今年度も他地域の生活支援センターからの見学依頼も多く、積極的に見学を受け入れ、当センターの考え方を伝える機会を多く持つことができた。その結果、各々の地域で当支援センターの実践における理念の賛同を得て、将来にわたって意識しあえる良き協力機関が増えつつある。

【事業の状況】
相談件数は今年度も4000件を大きく上回った。1カ月の平均相談件数が400件で推移していることになる。来談者の状況とすれば、肢体不自由・知的・重複が多く、居住エリアも多岐にわたり、本来の対象者ではない方からの相談も数多く寄せられている。また支援の内容としては、自分らしく生きていくことを支援するための相談が最も多く、様々な社会資源を検討する中で、在宅サービスの利用へと移行していくという、当センターの大切にしている相談のプロセスが、数字の上でも色濃く反映されている。
障害種別としては、肢体不自由が圧倒的に多く、次いで知的障害、重複障害の順となっている。特に精神障害と他障害の重複ケースは、多くの行動障害が精神の部分に起因することが多いが支援を行うにあたっては支援スキルの部分で思い悩むことも多い。また強度行動障害を伴う知的障害の方からの相談も同様である。専門機関としては療育相談室などもあるが、先々の予約が一杯でとのことで来所されるケースが多い。このような課題にはできる限りの対応を検討しているが、まずは地域療育等支援事業の対象であるなかで、対応策を検討していただく必要を感じる。また本当は強度行動障害に対応できる自閉症児者支援センターの必要性を強く感じる。
国庫補助事業で予算化されていたと思うが、京都市としての取り組みに期待したい。

【在宅福祉施策の利用援助】
在宅福祉施策の相談では、やはり圧倒的に介護者の確保に関するものが多く、今年度も民間のレスパイトサービス事業所を頼って調整を進めてきた。しかしながら、支援費制度導入直前という時期でもあり、申請・支給量決定・事業者調整と多岐に渡っての相談も多く寄せられた。この中で、これまで制度利用が認められてこなかった障害の方のサービス利用の相談では、自らの生活を振り返り、その中で介護を必要とする部分を見極め、必要な介護がどのようなものであるかを検討し、サービス申請へと至る手順を大切にすることが重要であると再確認した。また障害のある人のITサポート事業を通じての相談も多く寄せられ、情報機器(パソコンや周辺機器)の制度支援(特に日常生活用具のパソコン・重度障害者意思伝達装置)も多かったことは、今年度の特徴であろう。

【社会資源を活用するための支援】
社会資源に関する相談では、法人として「障害のある人のITサポート事業」を京都市・京都府より受託し実施したため、その後のフォローアップ相談が増加した。当支援センターの、パソコンの使用環境に関する当センターのスキルも大幅に向上したが、当センターのみのスキルにしておくことよりも、広い地域でサポートできる方を支援し、支援者数の増大を図る必要性も感じてきたところから、支援者養成といった面で法人独自事業なども含めて展開してきたところである。引き続き、身近なところでパソコンを教えてくれる人がいる環境を作り上げるため、継続して事業を展開したい。

【社会生活力を高めるための支援】
自立生活に関する相談では、支援費申請を機に、自らの将来の生活を検討し、今必要なことを明確にするといった機会を、個別相談あるいは「障害のある福祉専攻学生のための学習支援講座」を通じて持つことができた。そういった点では、単なる制度相談に終始するのではなく、サービスは自分らしい生活をするための手段であるという考えのもと、相談業務に従事することが求められていると同時に、単なるサービス調整という意味合いでのケアマネジメントではなく、あくまで自立生活支援相談であることの重要性を、再認識させられる一年であった。

【ピアカウンセリング】
ピアカウンセリングについては、利用者数は横這いであり、また長期にわたる継続ケースが多いことは昨年と同様の傾向である。しかしながらピアカウンセリングそのものの認知は十分になされたとも思えないため、周知していく必要性を感じる一方で、ピアカウンセリングでなければならない相談とは何なのかという問いに対して、当センターとしても、今一度検討をしていく必要性を感じてもいる。また第二回ピアカウンセラー養成講座を、京都市障害者生活支援事業連絡協議会と京都新聞社会福祉事業団の共催で実施し、18名の受講者から16名の修了者を輩出した。第一回修了者で組織される「ピアカウンセラーきょうと」に加入される方も多く、今後の当該事業のみならずボランタリーな領域での活躍が期待される。

【専門機関の紹介】
専門機関の紹介に関しては、それほど多くの場面を記憶に残していない。やはり、他機関が支援を継続できなかった困難ケースが多いため、紹介先が見つけられないことが第一に挙げられる。一方で、圏域あるいは障害種別から、本来担当すべき支援センターが存在するにも関わらず、相談に応じてもらえなかったためという理由で来所に至ることも多く、また重複する障害に対しても対象外の障害があることを理由に相談を拒絶され、当センターに来所されるケースも多く存在した。これらの課題は、同じ事業を実施している京都市障害者生活支援事業連絡協議会でも議論され、当面は他障害領域の支援センター間の温度差がある中では、圏域・障害種別を問わず相談を受けていくことを申し合わせた経緯がある。しかしながら、そのような状況が改善されるべきであるとも考えており、何らかの対応策が必要であると認識している。

【その他】
今年度は意味ある他機関ネットワークの構築を目指し、対外活動を重視して事業を実施してきた。その中で、生活支援に前向きな支援センターと事業所とで構成する「京都市生活支援連絡会」が立ち上がり、生活支援に生じる様々な課題を共有し、互いに解決策を議論し、実際のサービス提供にまで結びつけるネットワークが生まれた。一方では、サービスの質が問われる時代でもあり、「第三者評価事業きょうと研究会」の活動にも当センターの3名の相談員と1名の運営委員が研究員として参加している。このような取り組みを通じて、支援センター業務の質向上を図るために尽力してきた。一方では、福祉事務所あるいは療育相談室・保健所といった公的機関との継続的なかかわりの中から、協力的な関係が拡大しつつある。今後の課題としては、業務として形成されてきたインフォーマルなサポートシステムを京都市内でのフォーマルなネットワークへと転化させ、システムとして機能する形にまで高めていくことを視野に入れて、継続して関わっていきたいと考えている。

【特記事項】
今年度は、支援費制度の導入という嵐の中、急遽当該事業の厚生労働省予算からの消滅と地方交付税化という運営の基盤を揺るがす激震が走ったことに触れずにはいられない。当センターも2年6カ月の活動を通じ、不充分な点があることは認めつつも、形あるものも生み出してもきた。その過程の中では、福祉事務所・更生相談所・保健所といった公的機関や様々なサービス提供事業所との関わりが生まれ、うまく機能した例なども積み上げてきている。一方では、他支援センターへの助言なども行ってきており、意味ある活動を実践してきたという自負もある。次年度では、そのような実状の中で、京都市内でどのような役割が期待され、どのような役割を果たすべきなのかといった基本事業の検証作業が求められていると感じている。その中から、独自に事業展開している部分が明確となり、独自性も自覚できるようになるからである。基本を明確にし、独自色を明確にするという過程を、京都市とも相談しながら、当該事業のあり方と必要性を確認し、次のレベルへのステップアップを図りたい。


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