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資料1
 自立生活支援センター「きらリンク」(京都市)の設立経緯と概要

 自立生活支援センター『きらリンク』は、京都市内では初めて運営主体となる財団法人京都新聞社会福祉事業団が市町村障害者生活(身体障害者相談)支援事業の委託を受け、2000年10月1日に誕生しました。
 純民間の財団法人が自立生活支援センターを手掛けた事例は過去になく、社会福祉法人や障害当事者団体でもない組織が、障害のある人たちの生活支援を始めるようになった経緯から書いていきたいと思います。当事業団は「車いす自立への旅」という研修旅行を20年近く続けてきた実績があり、「障害のある人たちの海釣り体験講座」や「障害のある人たちのパソコン教室」を地道に続けるなど、常に障害のある人たちと共に歩んできました。それら個々の事業の中で、障害のある人たちの生活における苦労や問題点、更には悩み事を聞く機会が増えてきたのです。京都市内から行事に参加してくれる方々は勿論のこと、京都府下や滋賀県からもさまざまなニーズは年月が進むにつれ、大きなうねりとなってきたのです。その中でも、最も大きな課題として上がって来たのが「自立生活への援助」でした。京都は「京阪神」と言われる大都会に位置し、古風な建物と近代的な建築物が調和を取り、我が国随一の観光地として知られています。しかしながら、伝統を重んじ、古き良きものが残る京都は、住民の心にも「古都」のように偏見や差別が他の地域に比べて根深く残っているように思えます。そのような風土の中で生きている障害のある人たちは、相談できる相手に出会うことが許される行事に参加して、自分の考え方を聞いてもらうことが唯一の機会だったのかも知れません。
 そのような相談をしている参加者の中から、「地域社会での自立生活について学べるような講座を開催して欲しい」という声があがり、それに応えて1995年から「障害をもつ人たちの自立生活教室」という自立生活プログラムを始めることになりました。更に、「個別に対応した支援を始めて欲しい」というニーズが参加者の中から表出されるようになり、二年後には「自立生活技術教室」と名付けた個人別プログラムを展開していく講座を持つに至ったのです。これらの講座から卒業していった障害のある人の中には、地域社会での自立生活を営む者も数名でてきており、自立生活予備軍と言われるような人たちも数多く潜在するようになってきました。そんな折、京都市では「全身性障害者介護人派遣事業」などの障害者制度がスタートし、重い障害のある人たちでも地域社会での生活を営める環境が徐々に整い始めました。
 このような状況の中で、地域社会で自立生活を営む障害のある人たちが増加し、生活のニーズに対して、即座に相談に乗り、迅速に対応してくれる場所が必要になってきた訳です。要するに、行事があるのを心待ちにし、相談者を見つけ、対応を検討していたのでは問題が山積みになってしまうほど、障害のある人たちが現実に生活するようになってきたのです。そこで、当事業団が開設したのが「ピアリンク」という相談窓口でした。この「ピアリンク」は、交通の便がよい「京都府総合福祉会館(ハートピア京都)」の一室を二週間に一回の割合で借り、私自身が相談員として生活ニーズばかりではなく、精神的な悩み事に対してもカウンセラーとして対応していこうとするものでした。対象は、身体障害のある人たちばかりではなく、知的障害のある人たちや精神障害のある人たちも含まれており、更には家族の方々も相談室を訪ねてくださいました。しかし、月に二回という対応では「即効性」という問題をクリアすることが出来ず、常時応対してくれる機関の存在が熱望されていたのです。
 「障害者プラン」によって定められた自立生活支援センターの整備に関して、京都市の対応は遅く、2000年度の予算にようやく計上され、『きらリンク』が市内では第一号の自立生活支援センターとしてスタートしました。開所した当初は、『きらリンク』の存在を知っていただくことに時間を必要としましたが、数ヶ月も経たない間に月間400件を超える相談が寄せられるようになったのです。現在の『きらリンク』は、ピアカウンセリングを含めた相談支援が主な事業であることは確かですが、その他にも「障害のある福祉専攻学生の学習支援講座」や「障害のある人のIT講習事業」、そして「余暇活動支援事業」等のプログラムを実施しています。さらに、必要に応じて、時代が必要としている講座(支援費制度に関する当事者説明会他)の開催も予定しています。また、京都市障害者生活支援事業連絡協議会を組織し、「ピアカウンセラー養成講座」を2001年度から開催し、障害のあるカウンセラーの養成に尽力しています。京都市という地域の中で充分に活躍できるピアカウンセラーを育てていくことは、支援費制度におけるケアマネジメントを円滑に進めていくために必要不可欠です。支援費制度のもとで障害のある人たちの生活を安定したものにしていく為に、自立生活支援センター『きらリンク』が果たしていかなければならない役割は、たいへん大きなものがあると痛感しています。

自立生活支援センター『きらリンク』事務局長 谷口明広



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