地域共生社会の実現に向けた取組の経緯

地域共生社会が目指すもの

平成27年9月に「新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討PT」報告として、「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」が示され、翌年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」に地域共生社会の実現が盛り込まれました。

新たな時代に対応した福祉の提供ビジョンでは、高齢化の中で人口減少が進行し、福祉ニーズが多様化・複雑化しており、福祉の提供において、「包括的な相談から見立て、支援調整の組み立てに加えて、資源開発し、総合的な支援が提供され、誰もがそのニーズに合った支援を受けられる地域づくり」を行う新しい地域包括支援体制を構築するとともに、新しい支援体制を支える環境の整備(人材の育成・確保等)を行い、地域住民の参画と協働により、誰もが支え合う共生社会の実現を目指す必要があるとの旨が示されました。

ニッポン一億総活躍プラン(平成28年6月2日閣議決定)では、「子供・高齢者・障害者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる『地域共生社会』を実現する。このため、支え手側と受け手側に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成し、福祉などの地域の公的サービスと協働して助け合いながら暮らすことのできる仕組みを構築する。また、寄附文化を醸成し、NPO との連携や民間資金の活用を図る。」とされました。

これらのことから、地域共生社会は、福祉施策が担う「支え・支えられる関係が循環し、誰もが役割と生きがいを持つ地域社会の醸成」だけでなく、社会・経済活動の基盤としての地域での「人と資源が循環し、地域社会の持続的発展の実現」の視点も重要であり、地域での暮らしを構成する幅広い関係者による“参加と協働”が求められる取組といえます。

実現に向けた改革

ニッポン一億総活躍プランの閣議決定を受け、厚生労働省では「『地域共生社会』の実現に向けて(当面の改革工程)」(平成29年2月7日 厚生労働省「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部決定)に基づいて、その具体化に向けた改革を進めています。

この当面の改革工程の背景として、

かつては、地域の相互扶助や家族同士の助け合いなど、地域・家庭・職場といった人々の生活の様々な場面において、支え合いの機能が存在しました。社会保障制度は、これまで社会の様々な変化が生じる過中で、地域や家庭が果たしてき役割の一部を代替する必要性が高まったことに対応して、高齢者、障害者、子どもなどの対象者ごとや、生活に必要な機能ごとに、公的支援制度の整備と公的支援の充実が図られてきました。

しかし、現在では、高齢化や人口減少が進み、地域・家庭・職場という人々の生活領域における支え合いの基盤が弱まってきています。暮らしにおける人と人とのつながりが弱まる中、関係性を再構築することにより、人生における様々な困難に直面した場合でも、誰もが役割を持ち、お互いが配慮し存在を認め合い、そして時に支え合うことで、その人らしい生活を送ることができるような社会としていくことが求められています。

また、人口減少の波は、多くの地域社会で社会経済の担い手の減少を招き、それを背景に、耕作放棄地や、空き家、商店街の空き店舗など、様々な課題が顕在化しています。地域社会の存続への危機感が生まれる中、人口減少を乗り越えていく上で、社会保障や産業などの領域を超えてつながり、地域社会全体を支えていくことが、これまでにも増して重要となっています。

さらに、対象者別・機能別に整備された公的支援についても、昨今、様々な分野の課題が絡み合って複雑化したり、個人や世帯単位で複数分野の課題を抱え、複合的な支援を必要とするといった状況がみられ、対応が困難なケースが浮き彫りとなっています。

こうした背景を踏まえ、地域共生社会の実現を目指すための当面の改革工程として、「地域課題の解決力の強化」、「地域丸ごとのつながりの強化」、「地域を基盤とする包括的支援の強化」、「専門人材の機能強化・最大活用」の骨格が示され、以下のような取組等が実施されてきました。

「地域課題の解決力の強化」のため、以下のような取組等が実施されてきました。

平成28年10月に「地域力強化検討会(地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会)」(座長:原田正樹日本福祉大学学長補佐)を設置。住民主体による地域課題の解決力強化・体制づくりの在り方や包括的な相談支援体制の整備の在り方についての検討が行われ、平成28年12月に中間とりまとめ、平成29年9月に最終とりまとめを策定・公表しています。

改正「社会福祉法に基づく市町村における包括的な支援体制の整備に関する指針」を策定・公表し、併せて(1)社会福祉法改正の趣旨、(2)社会福祉法に基づく市町村における包括的な支援体制の整備に関する指針に関する補足説明、(3)社会福祉法改正による記載事項の追加等を踏まえて改定した市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画の策定ガイドライン等を内容とする通知を発出しています。

「地域丸ごとのつながりの強化」に向けた取組として、以下のような通知を発出しています。

市町村や社会福祉施設等の事業者が、地域づくりに取り組みやすくする観点から、平成29年3月31日に、以下の2本の通知を発出しました。

社会福祉法人が「地域における公益的な取組」について、より一層取り組みやすくすることを目的に、平成30年1月23日に、以下の通知を発出しました。

子ども食堂の活動に関する関係機関の連携強化や運営に当たっての安全管理を促進する観点から、平成30年6月28日に、以下の通知を発出しました。

介護サービス事業所が、その利用者を対象とした社会参加活動等を円滑に実施することができるようにする観点から、平成30年7月27日に、以下の事務連絡を発出しました。

「地域を基盤とする包括的支援の強化」に向けた取組として、高齢者と障害児者が同一の事業所でサービスを受けやすくするため、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律により、介護保険と障害福祉両方の制度に新たに共生型サービスを位置づけています。これにより、介護保険又は障害福祉のいずれかの指定を受けている事業所が、もう一方の制度における指定も受けやすくなりました。(平成29年6月2日公布。平成30年4月1日施行)

「専門人材の機能強化・最大活用」向けた取組として、厚生労働科学特別研究において、保健医療福祉の共通基礎課程のあり方について検討を進めています。

福祉系国家資格を持つ者への保育士養成課程・保育士試験科目の一部免除について

共通基礎課程創設までの間の当面の措置として、平成30年度より、福祉系国家資格所有者(介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士)が保育士試験を受験する際に全9科目のうち3科目(社会福祉、児童家庭福祉、社会的養護)の受験を免除する、介護福祉士養成施設の卒業者が指定保育士養成施設で学ぶ場合に必修科目のうち6科目(10単位)の履修免除を行うなどの措置を講ずることとしています。

実現に向けた法改正①(平成29年)

平成29年6月に公布された改正社会福祉法において、地域福祉推進の理念を規定し、「支援を必要とする住民(世帯)が抱える多様で複合的な地域生活課題について、住民や福祉関係者による把握及び関係機関との連携等による解決が図られることを目指す旨」を明記しています。また、この理念を実現するため、市町村が「地域住民の地域福祉活動への参加を促進するための環境整備」、及び「住民に身近な圏域において、分野を超えて地域生活課題について総合的に相談に応じ、関係機関と連絡調整等を行う体制包括的な支援体制づくり」に努める旨が規定されています。

社会福祉法に規定された「地域福祉の理念」について

(地域福祉の推進)
第四条 地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者(以下「地域住民等」という。)は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるように、地域福祉の推進に努めなければならない。
2 地域住民等は、地域福祉の推進に当たつては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題(以下「地域生活課題」という。)を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関(以下「支援関係機関」という。)との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。

実現に向けた法改正②(令和2年)

この平成29年介護保険法等改正法の附則に規定される公布後3年(令和2年)の見直し規定に基づき、市町村における包括的な支援体制の全国的な整備を推進する方策について検討を進めるため、有識者による「地域共生社会推進検討会」」(座長:宮本太郎中央大学法学部教授)が令和元年5月から開催されました。この検討会での議論において、「具体的な課題解決を目指すアプローチ」だけでなく、「つながり続けることを目指すアプローチ(伴走型支援)」の2つのアプローチを支援の両輪として組み合わせ、専門職による伴走型支援と地域住民同士の支え合いや緩やかな見守りといった双方の視点を重視することにより、セーフティネットを強化し、重層的なものにしていく必要があると提案されました。

こうした地域における重層的なセーフティネットを確保していく観点として、住民をはじめ多様な主体の参画による地域共生に資する地域活動を普及・促進することが望ましく、福祉分野に留まらず、これまでは関わりが少なかった分野・領域を超えた地域づくりの担い手が出会い、更なる展開が生まれる“場”となるプラットフォームの構築が望まれることも示されています。

この検討会の最終とりまとめにおける提言として、地域住民の複合化・複雑化した支援ニーズに対応する市町村における包括的な支援体制の構築を推進するため、①「断らない相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」の3つの支援を一体的に行う市町村の新たな事業を創設すべき。②本人・世帯の属性を問わず 、福祉、介護、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題や地域社会からの孤立など様々な課題を抱える全ての地域住民を対象とすべき。③新たな事業を実施するに当たっては、既存の取組や機関等を活かしながら進めていくが、地域ごとに住民のニーズや資源の状況等が異なることから、圏域の設定や会議体の設置等は、市町村が裁量を発揮しやすい仕組みとする必要がある、④国の財政支援については、市町村が柔軟に包括的な支援体制を構築することを可能とするために、一本の補助要綱に基づく申請などにより、制度別に設けられた財政支援の一体的な実施を促進する必要があると提言されました。

これらの提言をうけ、令和2年6月に改正社会福祉法が可決・成立し、令和3年4月より「重層的支援体制整備事業」が施行されることになりました。