重層的支援体制整備事業について

社会福祉法改正による新たな事業の創設

社会福祉法の改正により、重層的支援体制整備事業が創設されました。この事業が創設された背景として、地域住民が抱える課題が複雑化・複合化しており、子ども・障がい・高齢・生活困窮といった分野別の支援体制では、複雑・複合的な課題や狭間のニーズへの対応が困難になっている現状があります。

従来の分野別の支援体制において、複合的な課題や狭間のニーズに対応するために、属性を問わず相談を受け止める窓口を設置する場合、各制度の補助金等の目的外使用と指摘されないように属性ごとのタイムスタディ等での按分処理が必要となり、市町村の事務負担の増大により実施しにくいという実情がありました。

そのため、属性を問わず広く地域住民を対象とした重層的支援体制整備事業を創設し、この事業を実施する市町村に対して交付金を一体的に交付することで、市町村において属性や分野を超えた取組を柔軟に実施可能となり、課題を抱える相談者やその世帯への包括的な支援や、地域住民等による地域福祉の推進を展開しやすい仕組みになっています。

重層的支援体制整備事業は、市町村全体の支援機関・地域の関係者が断らず受け止め、つながり続ける支援体制を構築することをコンセプトに、「属性を問わない相談支援」、「参加支援」、「地域づくりに向けた支援」の3つの支援を一体的に実施することを必須にしています。

なお、市町村全体がチームとして支援を進めるためには、市町村、地域住民や地域の関係機関等が議論を行い、考え方や進め方などを共有しながら取組を進めていくプロセスを丁寧に行う必要があります。このため、全ての市町村が実施する必須事業ではなく、実施を希望する市町村の手あげに基づく任意事業としています。

重層的支援体制整備事業における各事業の概要

重層的支援体制整備事業における各事業の内容については、以下のように社会福祉法第106条の4第2項に規定しています。3つの支援を第1~3号に規定し、それを支えるための事業として第4号以降を規定しており、それぞれの事業を個別に行うのではなく、一体的に展開することが重要です。

包括的相談支援事業
(社会福祉法第106条の4第2項第1号)
  • 属性や世代を問わず包括的に相談を受け止める
  • 支援機関のネットワークで対応する
  • 複雑化・複合化した課題については適切に多機関協働事業につなぐ
参加支援事業
(社会福祉法第106条の4第2項第2号)
  • 社会とのつながりを作るための支援を行う
  • 利用者のニーズを踏まえた丁寧なマッチングやメニューをつくる
  • 本人への定着支援と受け入れ先の支援を行う
地域づくり事業
(社会福祉法第106条の4第2項第3号)
  • 世代や属性を超えて交流できる場や居場所を整備する
  • 交流・参加・学びの機会を生み出すために個別の活動や人をコーディネートする
  • 地域のプラットフォームの形成や地域における活動の活性化を図る
アウトリーチ等を通じた
継続的支援事業
(社会福祉法第106条の4第2項第4号)
  • 支援が届いていない人に支援を届ける
  • 会議や関係機関とのネットワークの中から潜在的な相談者を見付ける
  • 本人との信頼関係の構築に向けた支援に力点を置く
多機関協働事業
(社会福祉法第106条の4第2項第5号)
  • 市町村全体で包括的な相談支援体制を構築する
  • 重層的支援体制整備事業の中核を担う役割を果たす
  • 支援関係機関の役割分担を図る

実施計画 及び 会議体について

重層的支援体制整備事業実施計画の策定

市町村は、本事業を適切かつ効果的に実施するため、「重層的支援体制整備事業実施計画」を策定するよう努めることとしています。(法第百六条の五)

策定過程を通じて、市町村が住民や関係者・関係機関との意見交換等を重ね、事業実施の理念や目指すべき方向性について、共通認識を醸成することが重要です。

既存制度からの財源を一括化し、関係機関による連携の下で実施するものであり、円滑かつ効果的に事業を実施していくための手段として、「関係機関の共通認識を基にした事業実施計画の策定」→「計画に基づいた事業実施」→「事業実施結果の評価・検証」→「実施結果等を踏まえた計画見直し」といったPDCAサイクルにより、事業を実施していくことが必要です。

重層的支援会議及び支援会議について

円滑な実施を推進するための会議体が重要であり、多職種による連携や多機関の協働が重要な基盤となるため、情報共有や協議を行う場の機能が求められます。

重層的支援会議は、多機関協働事業において実施し、関係機関間の連携やプランの適切さ、支援の終結、資源の把握や創出等について検討するための会議です。

支援会議は、社会福祉法第106条の6に規定された会議であり、市町村が実施し、守秘義務を設けることで、潜在的な相談者に支援を届けられるよう、本人の同意がない場合にも情報共有に基づく支援の検討等が可能です。

多職種連携事業における重層的支援会議や支援会議から集積された地域における支援等のニーズについて、市町村の職員も参画した上で検討を行うことが求められます。

事業を展開する際の留意点

市町村が取組を進めるに当たって、以下のような点に留意が必要です。

既にある地域のつながりや支え合う関係性を十分理解し、地域住民の主体性を中心に置き、活動を応援することを基本とする。

地域住民や関係機関等と振り返りや議論を繰り返し行いつつ、事業の実施状況等を定期的に分析・評価し、改善していく。

多様な関係者が参画できる場を設置し、包括的な支援が円滑に提供されているか、一部の相談機関等に過剰な負担が生じていないか、既存の取組等の推進を妨げていないか、財政支援が適切に配分されているかなど、幅広い観点での議論を行う。