愛知県豊田市

自治体概要

人口:421,765人 面積:918.47㎢(※人口一人あたり面積: 0.00021㎢)
小学校数:77 中学校数:28(令和3年3月1日時点)

豊田市における重層的支援体制推進事業

平成29年度からモデル事業として包括的相談支援体制の整備や支え合いの地域づくりを進めてきました。これまでの取組をベースとしつつ、課題となっている点を改善する事業構造としたことから、重層的支援体制「推進」事業と称しています。大きな改善点は以下の2点です。
多機関協働事業において、福祉総合相談課と社会福祉協議会コミュニティソーシャルワーカーが多機関協働事業者となっていましたが、他の主たる支援機関8課にも拡大し、特定の課に複合課題の対応が集中しない体制を構築し、部局を超えて情報共有や支援分析などを実施する会議体を新設し、支援機関間の相互理解を図ります。
参加支援事業において、とよた多世代参加支援プロジェクトという高齢・障がい・子ども・若者・困窮分野などの民間事業者で構成される任意組織を立ち上げ、これまではサービスや地域資源がなく解決が困難だった事例について支援協力を要請し、民間の活力により個々のニーズに合うサービスや居場所を創出します。行政だけではなく、民間事業所も巻き込み、オール豊田の支援体制を目指します。

個別支援を起因とした福祉事業所等多機関協働の取組み

【CSW(コミュニティーソーシャルワーカー)の活動支援】
 個別支援を通じて受け止めた生活課題を地域の課題として捉え、だれもが安心して暮らし続けることが出来る地域となるよう住民等が主体となり、課題解決に向けて取り組む支え合い活動を支援していきます。
【事 例】
1.きっかけ
 賃貸住宅に住んでいる要支援の独居高齢者がゴミをゴミステーションまで持って行くことが出来ず困っていたため、管理人が代わりにゴミ捨てをしていた。しかし、今後もずっと管理人がゴミ捨てを行うことが難しいため、別のアイデアはないか住民や各関係機関と検討した。検討の結果、既存の制度を有効活用することになったが、このケースをきっかけとして、このような地域の困りごとの解決に向けて定期的に話し合いを行うことになった。
2. 参加者
 相談支援事業所(地域包括支援センター、障がい相談支援事業所)、福祉事業所(地域密着型通所介護事業所、 就労継続支援B型事業所、生活介護事業所)、地域団体(交流館)、CSW
3. 取組み

(内容)
 1.福祉事業所が包括の担当利用者の自宅の庭の草取りを行う。
  ⇒高齢者が抱えている困りごとを福祉事業所が社会参加として取り組み困りごとを解決する。
  
 2.包括が行っている認知症カフェで給仕を生活介護事業所利用者が行う。
  ⇒福祉事業所で作っているクッキーを認知症カフェで提供、給仕することで、認知症カフェの参加者は障がい者の方と関わり知る機会となり、福祉事業所の利用者は自分達が作ったクッキーやコーヒーを喜んで食べている姿を実際に見て、感じる機会となり利用者のモチベーションや自己肯定感が上がる。

多世代・多様な方が集い参加する「まめきちカフェ」

豊田市には、通所リハビリ利用者や事業所職員の期待を乗せて活動しているカフェがあります。このカフェは、「〇〇さんの体が動くようになり、日曜大工をやってみたいという声が聞けました」「職員と利用者という関係ではなく、人と人という関係でゆっくり話がしてみたい」「職員同士の自由な発想で新しい取組をしたいが、開催する場所が身近にない」といった声を何とかしたいと思ったことから企画され、オープンに至っています。
こうした背景もあることから、ここでは、通常のカフェやランチ営業に加え、様々な方の社会参加が育まれています。例えば、デイ利用者の自立に向けては、作業療法士が関わりながら「片麻痺利用者向けの料理教室」を開催しています。
また、コミュニティソーシャルワーカーからの相談を受け、一人暮らし男性が困窮状態にならないように、「男性調理会」を企画。この調理会には、カフェの常連であり、定職に着けない30代女性が調理指導に加わるなど、「まめきちカフェ」では、それぞれができることを行い、サポートをし合う形で様々な取組にチャレンジしています。

参加支援が脱プラスチックを救う!?「もみ殻燻炭づくり」と「麦ストローチャレンジ」

豊田市では、社会参加を支援する団体(まめきちカフェ)や、市内の福祉事業所、障害者や高齢者などが協力し、持続可能な社会づくりに取り組んでいます。
段ボール箱を利用した生ゴミ処理容器の展開を試験的に進めるにあたり、容器の材料として、もみ殻燻炭の確保が課題となりました。もみ殻燻炭の作成は手間暇がかかることから、一般農家では敬遠されていたからです。この解決のため、障害者の活動として引き受け、作成することを進めました。作った燻炭は買い取られ、障害者の工賃になっています。
また、脱プラストロー実現のため、市内のバーテンダーや農家等と福祉関係者が連携し、「麦の栽培」を実施中。この活動では、種まき、麦ふみ、刈り取り、分別、皮むき、梱包などを通じ、新たな参加の機会が数多く創出されます。実際に、障害者や認知症高齢者がこの活動に参加し、麦を育てています。春には成長した麦の刈り取りを実施します。

障害のある方と法人、地域の方々で取り組む活動が、しあわせな地域づくりに

豊田市における地域課題の一つとして、休耕地の活用があります。
社会福祉法人無門福祉会では、すべての人が自由で対等に生き、平等に権利が守られる社会の実現、平たく言うと、「しあわせな地域づくり」という法人の理念のもと、障害のある利用者さんや、地域の方々と共に、休耕地を借りて作物を栽培するなど、農福連携の取組を進めています。
これらの利用者さんと休耕地を再生する活動は、地域課題の解決、つまり、しあわせな地域づくりに貢献しているということであり、地域共生社会の実現に寄与していると実感しています。
また、SDGsの理念でもある「誰一人取り残さない」にも通じると思います。

農福連携の取組を通じて感じること

まず、感じることは、利用者さんご自身の変化です。
農業には作業や工程が数多くありますが、その中から、利用者さんは何か得意なことや好きなことを見つけられると、楽しく活動することができるようになります。そして、利用者さんが「役割が見つかった」時の喜びを素直に表現している様子を見ると、好きなことを仕事にすることは、幸せづくりにつながるのだなと実感しています。
次に、こうした利用者さんの変化は、地域の変化にも影響していると思います。
利用者さんが楽しみながら「地域の困りごと」に取り組むことで、地域の方も少しずつ顔を見せてくれたり、共に活動をするようになりました。活動を始めた頃は、障害のある方が「地域につながる」取組だったものが、徐々に「地域をつなげる」取組に変化していったと感じています。
さらに、これらの変化によって、法人として活動の捉え方も変わりました。
今まで私たちは、利用者さんに何かを「教える」ことを目的とすることが多かったですが、これまで述べたような気づきを、反対に「教えてもらう」ことになりました。これからも「教える、教えられるフラットな関係」で、お互いを尊重しあう関係づくりが重要であると感じています。