労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和2年(不再)第9号
ワットラインサービス不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y会社(「会社」) 
再審査被申立人  X1地方本部(「地本」)、X2労働組合(「労組」)、X3分会(「分会」) 
命令年月日  令和4年4月6日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社と個人請負契約を締結して電気メーターの取替工事等(「計器工事」)に従事する作業者(「計器工事作業者」)が結成した分会とその上部団体である地本及び労組(分会と地本及び労組を併せて「組合」)が連名で、会社に対し、①平成31年度の計器工事件数の割当て等を議題とする団体交渉申入れをし、また、②会社から提示された請負契約書が従来の契約の不利益変更であるとしてこれに係る団体交渉申入れをしたところ、会社が、組合は会社が雇用する労働者の代表ではないとして、これに応じなかったことが、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、計器工事作業者は労組法上の労働者に当たることから、会社が団体交渉申入れに応じなかったことが、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、会社に対し、団体交渉の応諾及び文書の交付・掲示並びに履行報告を命じたところ、会社は、これを不服であるとして再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1)争点1(地本、労組及び分会は、労組法に適合する労働組合といえるか。)について
会社は、①分会が組合規約を有しておらず、②独立した労働組合といえない、③会計監査報告について、地本と労組の規約や分会の分会基準に沿った組合運営が立証されていない旨主張するが、その主張はいずれも採用できず、その他、労組法第2条の規定に適合しないことをうかがわせる事情もないのであるから、地本、労組及び分会はいずれも労組法に適合した労働組合といえる。
(2)争点2(計器工事作業者は、労組法上の労働者といえるか。)について
ア 労務の供給が請負契約等の労働契約以外の契約形式による場合であっても、実質的に、①事業組織への組入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性、という判断要素に照らし、団体交渉の保護を及ぼすべき必要性と適切性が認められる場合には、労組法上の労働者に当たるというべきである。
イ 上記判断に当たっては、補充的に、④業務の依頼に応ずべき関係、⑤広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束、といった要素も考慮される。他方、⑥顕著な事業者性がある場合には、労組法上の労働者性は否定されることとなる。
ウ 計器工事作業者は、①会社の計器工事の施工に不可欠ないし枢要な労働力として、会社の事業組織に組み入れられており、②会社が請負契約の中核となる契約内容を一方的・定型的に決定しており、③計器工事作業者に支払われる報酬は、労務提供の対価性を有するものと解することができる。
また、④計器工事作業者は、提供すべき業務とその量については、予め契約によって工事件数として定められているが、その具体的内容は会社からの指示・依頼によって特定され、その指示・依頼には基本的に応ずべき関係にあり、⑤契約された工事件数を施工するに当たっては、広い意味での会社の指揮監督の下に労務の提供を行っていることが優に認められ、また、一定の時間的場所的拘束が認められる一方、⑥顕著な事業者性は認められない。
したがって、計器工事作業者は労組法上の労働者に該当する。
(3)争点3(上記(1)及び(2)が認められた場合、会社が本件団体交渉申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるか。)について
ア 団体交渉拒否について
会社は、①組合は会社が雇用する労働者の代表者ではない、②組合が申し入れた団交議題がいずれも義務的団交事項ではない、③本件団体交渉申入れが三重交渉の申入れであり、この整理がされるまでは団交応諾義務はない旨主張するが、会社が主張する理由はいずれも団体交渉を拒否する正当な理由とは認められず、本件団体交渉申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たり、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
イ 支配介入について
本件当時、会社と計器工事作業者との関係が契約のための個別協議を行うに至っていた中で、会社は、組合からの団体交渉申入れを拒むと同時に、その団体交渉事項である平成31年度請負契約書の提出を短期間で求めることは、組合を弱体化させるおそれがある対応というべきであり、会社が本件団体交渉申入れを拒否したことは支配介入に当たり、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
(4)争点4(上記(3)において不当労働行為に当たる場合、救済の利益は存在するか。)について
会社は、①平成30年度請負契約の終了と平成31年度請負契約の締結・終了により契約がすべて決着したことは明らかである、②組合員Aの契約終了は請負契約の必然的結果であって、団体交渉で当事者が議論してもこの解釈を変更することはできないので、救済の必要性がない旨主張するが、契約内容をめぐる問題や請負契約の終了に関する紛争が解決したとはいえず、団体交渉を行う必要性は失われていない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成30年(不)第93号 全部救済 令和2年2月4日
 
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