労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和2年(不再)第56・57号
不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y会社(「会社」)(56号)、X組合(「組合」)(57号) 
再審査被申立人  X組合(「組合」)(56号)、Y会社(「会社」)(57号) 
命令年月日  令和4年4月6日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①Aに対する平成24年1月(以下「平成」の元号を略する。)の面談(本件面談)における発言(本件発言)等を理由として総務部長代理に降格したB1を30年12月1日付けで総務部長に昇格させたこと(本件昇格)、②会社のB2営業本部長が、同月3日、会社の営業部員らに送信した電子メール(本件メール)に会社の前期営業目標を達成していない案件名、営業担当者名等を記載したリスト(本件案件リスト)を添付したことに関し、本件メールの取消し等を求める組合の31年2月1日付け要求書(31.2.1要求書)、③30年12月に組合員3名に支給された賞与額(本件賞与額)の根拠説明等を協議事項とする組合の31年4月25日付け団体交渉申入れに応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労働委員会は、会社に対し、1の②及び③について、団体交渉応諾及び文書の手交を命じ、その余の本件申立てを棄却したところ、会社及び組合は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  (1) 初審命令主文を次のとおり変更する。
ア 本件賞与額の根拠説明に関する団交応諾
イ 文書手交
(2) 会社のその余の再審査申立て及び組合の再審査申立ての棄却 
判断の要旨  (1) 本件昇格問題に関する団体交渉申入れについて
本件面談や本件発言から本件昇格までには約6年が経過しており、本件面談や本件発言については、28年7月22日、大阪地裁の労働審判において、調停が成立したことにより、一定の解決をみたと評価できる。本件昇格の時点でB1が組合員に対して本件面談や本件発言のような行為を繰り返すおそれがあることを裏付ける証拠はない。そうすると、本件昇格は組合員の労働条件や待遇に影響を与える蓋然性が乏しいことから、義務的団交事項に当たるとまではいえない。したがって、会社が、本件昇格について団体交渉に応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為には当たらない。
(2) 31.2.1要求書に関する団体交渉申入れについて
本件案件リストは、表計算ソフトに部門別に約2000件の案件に係るデータを記載した表であり、営業担当者ごとに案件をまとめるという記載方法を採っておらず、本件メールの受信者が簡単に営業担当者ごとの件数を比較できるものではなかった。また、本件メールには、組合員であるAを狙い撃ちする意図があるとは認められない。そうすると、本件メールの送信及び本件案件リストの送付は、会社が設定した目標等を営業部員等に伝達するものにすぎず、組合員の労働条件その他の待遇に影響を及ぼすものであったとは認められないから、義務的団交事項には当たらない。したがって、本件案件リストの送付について、会社が団体交渉に応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為には当たらない。
(3) 本件賞与額の根拠に関する団体交渉申入れについて
組合はそれまで会社に対して賞与に関する団体交渉を申し入れたことはなく、会社が本件昇格問題に係る団交申入れに応じない中、本件賞与額の根拠の説明を協議事項に加えたものであり、このような経緯からみると、同協議事項を加えたのは本件昇格問題に係る団体交渉に応じさせるためのものではないかとの疑念も生じ得ないではない。しかし、本件賞与額の根拠説明という協議事項についてどのタイミングで団体交渉を申し入れるかは、基本的に組合が決定できるものである。上記の経緯のみから、直ちに本件賞与額の根拠説明が本件昇格問題に係る団体交渉に会社に応じさせるために便宜的に持ち出されたと推認することはできない。
組合員の賞与の支給額に関する事項が義務的団交事項に当たることは明らかであり、団体交渉において組合に対して本件賞与額の根拠を説明することが必ずしも各組合員のプライバシーを侵害するとはいえないから、当該事項について会社が団体交渉を拒否する正当な理由は認められない。したがって、本件賞与額の根拠の説明について、会社が団体交渉に応じなかったことは労組法7条2号の不当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委令和元年(不)第28号 全部救済 令和2年11月24日
東京地裁令和4年(行ウ)第230号 棄却 令和4年12月21日
東京高裁令和5年(行コ)第10号 却下・棄却 令和5年9月14日
最高裁令和5年(行ヒ)第451号 上告不受理 令和6年2月22日
 
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