労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和元年(不)第28号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年11月24日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合が、①総務部長の昇格人事、②営業本部長が送信したメールの取消し、③組合員3名に対する賞与支給額の根拠等について、団体交渉を申し入れたが、会社は、団体交渉事項たり得ないなどとして、これに応じないこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
大阪府労働委員会は、会社に対し、②及び③について正当な理由のない団体交渉の拒否に当たる不当労働行為であるとして、団交応諾とともに、文書の手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人からの平成31年4月25日付け団体交渉申入れのうち、「C部長に対する、2019年2月1日付けの要求について」及び「組合員3名に関する2018年12月支給の賞与の支給額の根拠についての説明」に関する団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
会社         
代表取締役 B
 当社が、貴組合からの平成31年4月25日付け団体交渉申入れのうち、「C部長に対する、2019年2月1日付けの要求について」及び「組合員3名に関する2018年12月支給の賞与の支給額の根拠についての説明」に関する団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

 
判断の要旨  (争点)平成31年4月25日付け団体交渉申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか。
1 組合が会社に対し、31.4.25団交申入書により、①C総務部長の昇格問題について、②営業本部長に対する平成31年2月1日付けの要求について、③組合員3名に関する平成30年12月支結の賞与の支給額の根拠についての説明、を協議事項とする団交を申し入れたところ、本件申立て時点において、31.4.25団交申入書に係る団交が開催されていないことについては争いがない。
2 そこで、31.4.25団交申入書に係る団交が開催されていないことについて、正当な理由があるかについて、以下、協議事項毎にみる。
ア C総務部長の昇格問題について
(ア)C総務部長は、組合の組合員ではないことが認められ、C総務部長の昇格間題は、管理職の人事であるとともに、非組合員の労働条件に関する事項であるといえ、当然には義務的団交事項に当たるものではない。しかしながら、そのような場合においても、それが将来にわたり組合員の労働条件、権利等に影響を及ぼす可能性が大きく、組合員の労働条件との関わりが強い事項については、義務的団交事項に当たると解されている。
 そこで、C総務部長の昇格問題と組合員の労働条件との関連性についてみる。
(イ)この点について、組合は、C総務部長は、過去にA2組合員に対するパワハラ問題を起こしたことにより降格となった経緯がある旨、職場環境改善・安全配慮義務の観点から会社の姿勢や具体的改善点を知る権利がある旨主張する。
 平成25年1月18日、会社は、懲罰委員会を開催したこと、懲罰委員会において、C総務部長のA2組合員に対する面談における発言内容が検討され、同年2月1日付けで、C総務部長を管理本部総務部長から同総務部長代理に降格させることとなったこと、会社は同日付けで、その旨の辞令を交付したことが認められ、これらのことからすると、C総務部長はA2組合員に対する面談における発言内容を理由に、降格された経緯はある。
 しかしながら、C総務部長が、平成25年2月1日付けで管理本部総務部長代理に降格になって以降、A2組合員に対し、過去に問題視されたような言動があったとの疎明はなく、また、A2組合員自身、本件審問において、C総務部長が降格となって以降は長時間の面談等がなかったことを認めている。
 また、①組合は、会社に対し、31.1.10質問書により、C総務部長が以前にA2組合員に対して行った長時間に及ぶ面談を、現在、他の社員に対して行っていないかどうかを調査の上、示すよう求めたこと、②会社は、31.1.30回答書により、「長時間に及ぶ面談」については、調査した結果、現在、他の社員に対して行われていない旨回答したこと、③組合は、会社に対し、31.3.6再質問書により、再度、調査等を求めたこと、④会社は、31.3.12回答書により、再調査について、既に会社が行った調査で、そのような事実はないことが確認されており、なお再調査を求めるのであれば、組合が「長時間に及ぶ面談」について具体的に把握している事実があれば指摘してほしい旨、そのような指摘があれば調査を検討する旨回答したことが認められる一方で、⑤組合が、会社に対し、長時間に及ぶ面談等について具体的な事例を挙げたとの疎明はなく、これらのことからすると、組合は、会社に対し、具体的な事例を示すことなく、漫然と、C総務部長が現在も「長時間に及ぶ面談」を行っている懸念があるとの見解を示しているとみざるを得ない。
 以上のことからすると、確かに、C総務部長はA2組合員に対する面談における発言内容を理由に降格された経緯があるものの、C総務部長が降格となって以降、A2組合員に対し、同様の言動を行ったとの疎明もなく、また、C総務部長の昇格により、組合員の職場環境にいかなる影響を与えるかについて、組合は具体的な根拠をもって示しているとはいえず、C総務部長の昇格問題について、職場環境改善、安全配慮義務の観点から協議する必要があるとする組合の主張は具体性を欠くものといわさるを得ない。
 そうすると、C総務部長の昇格問題に係る組合の主張は、具体的な疎明に乏しく、採用できず、組合員の労働条件と関連性があるとまではいえないのであるから、義務的団交事項に当たるとはいえない。
(ウ)以上のとおりであるから、C総務部長の昇格問題について、会社が団交に応じなかったことにつき、正当な理由があるといえる。
イ 営業本部長に対する平成31年2月1日付けの要求について
(ア)組合からの団交申入れのうち、営業本部長に対する平成31年2月1日付けの要求については、会社は、会社の営業政策に関わることで会社の専権に属する事柄であり、団交事項たり得ない旨回答したことが認められる。
 31.2.1要求書には、組合の要求として、①営業本部長が営業本部員全員及びその他関係部署の担当者に30.12.3メールを送信した行為について、営業本部長はこれを取り消し、送信先であるA2組合員を含め営業部員及び関係者に謝罪すること、②本件案件リストを精査し、営業部次長及び課長と相談し、営業部員への指導方法を検討すること、③「原価シート」を使った見積作業の改善などを営業部全体で協議し、同シートを正確性や妥当性があるものにすること、が記載されていたことが認められ、かかる記載をみると、要求事項に、会社の営業政策に関わる事項が含まれることは否定できない。
 しかしながら、①31.2.1要求書には、要求に至る経緯として、(i)A2組合員は、粗利率40%に満たない受注について、営業部員全員、その他関係部署員に知らしめられたこと、粗利率が低い受注案件の事情や理由の説明が行われないまま公表されたことにより、営業員として不適格者であると印象づけられたことで精神的苦痛を受けた旨、(ii)営業本部長は、これまで今回のような業務命令を行ったことはなかった旨、(iii)組合としては、メールで全員に送信する必要はなく、必要と思えば次長や課長を通じて行えばよいと考える旨、(iv)組合員であるA2組合員を狙い撃ちにしたとすれば不当労働行為となる旨の記載があること、②31.3.6団交申入書には、組合の見解として、(i)組合は営業本部の目標に関して非難しているのではなく、何の配慮・調整もなくメールで公表したことを問題としている旨、(ii)メールによる業務命令が、営業実績について何の配慮・調整・実態把握もなく行われた結果、A2組合員が精神的苦痛を受けたことを問題としている旨の記載があること、③31.4.25団交申入書には、営業本部長の問題について、組合員が精神的苦痛を受けた関係で問題視している旨の記載があることが認められ、これらのことからすると、組合は、営業政策そのものに関して団交を申し入れているのではなく、業務命令の方法やそれにより組合員が精神的苦痛を受けたことを問題視し、これに関して団交を申し入れていることは明らかである。
 そうすると、30.12.3メールの内容の是非はともかく、営業本部長に対する平成31年2月1日付けの要求は、組合員の職場環境に関する事項であるといえ、組合員の労働条件に関する事項であり、義務的団交事項に相当するといわざるを得ない。
(イ)一方、会社は、30.12.3メールは、A2組合員を狙い撃ちにするものでも、営業員として不適格者と印象づけるものでもなかったことは明らかである旨主張する。
 しかしながら、上記の会社主張は、会社が団交に応じ、団交において主張すべき事柄であって、上記の会社主張をもって、団交応諾義務が免ぜられるものではない。
(ウ)以上のとおりであるから、営業本部長に対する平成31年2月1日付けの要求について、会社が団交に応じなかったことにつき、正当な理由があるとはいえない。
ウ 組合員3名に関する平成30年12月支給の賞与の支給額の根拠についての説明
(ア)組合は、組合員3名に対する賞与の支給額の根拠について団交を求めているところ、かかる事項が、組合員の労働条件に関する事項であり、義務的団交事項であることは明らかである。
(イ)会社は、①組合が、これまで賞与の算定基準・方法や支給額について団交の要求等も行わず、31.1.10質問書でも何ら言及していないにもかかわらず、突然、組合員個々人の賞与支給額について事後的に協議を求めてきたことからすると、組合の真意は、C総務部長の昇格問題が団交事項たり得ないことから、支給済み賞与の件を便宜的に持ち出し、会社に団交に応じさせた上でC総務部長の昇格問題を持ち出そうとしたものにすぎない旨、②賞与査定を含む個々の従業員の人事考課においては会社の広範な裁量が認められる一方で、個々の従業員の人事考課の結果や賞与の額の決定過程等について団交の場で開示することは従業員のプライバシーの点から間題である旨主張する。
 まず、上記①の会社主張についてみると、団交を申し入れるに際し、相当の期間内であれば、どのような議題をどのように申し入れるかは、組合が決定すべきものであって、会社の主張は採用できない。
 また、上記②の会社主張を考慮しても、当該協議事項が義務的団交事項であることには変わりなく、プライバシー保護を盾に何の説明もなく一切回答しないことまで許容されるわけではないから、上記②の会社主張をもって、会社の団交応諾義務が免ぜられるものではない。
(ウ)したがって、組合員3名に関する平成30年12月支給の賞与の支給額の根拠の説明について、会社が団交に応じなかったことにつき、正当な理由があるとはいえない。
3 以上のとおり、31.4.25団交申入書記載の議題のうち、営業本部長に対する平成31年2月1日付けの要求について、及び、組合員3名に関する平成30年12月支給の賞与の支給額の根拠についての説明は、団交に応じる義務があるにもかかわらず、会社は、正当な理由なく応じておらず、会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約288KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。