労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和元年(不再)第40号
田中酸素(平成30年団交拒否)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  X組合(「組合」) 
命令年月日  令和3年3月17日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が平成31年賞与を議題とする団体交渉に応じないことは、労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号の不当労働行為であるとして、組合が、30年12月14日に山口県労働委員会(以下「山口県労委」という。)に対し、救済申立てをした事案である。
2 初審山口県労委は、代表取締役社長出席の上、誠実団交応諾、平成29年及び30年の売上げ、利益等を明記した資料の団体交渉における手交を命じ、その余の申立てを棄却する旨の命令を発したところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  (1) 初審命令主文第1項のうち、会社の団体交渉出席者について、一部変更する。(2) 前項の団体交渉の場で、組合に手交する資料について、一部変更する。 
判断の要旨  本件団交申入れにおける議題は31年の賞与についてであり、労働者の労働条件に関する事項であるから、義務的団交事項である。しかるに、会社はこれに応じていないから、正当な理由のない限り、労組法第7条第2号の団体交渉拒否に当たる。
(1) 執行委員長の過去の行為を拒否の理由とするもの
 会社は、組合執行委員長には、会社の社長との間に社会通念上許容される範囲を超えた行為があったとし、団体交渉の正常化のためには、当該行為に対する組合の反省、謝罪及び正常な団体交渉が行える旨の誓約が不可欠であり、これを欠く状況で団体交渉に応じないのは正当な理由があると主張するが、使用者は義務的団交事項について団体交渉を行うことを労組法によって義務付けられているから、使用者がそのような態度をとることができる場合は限られるというべきである。
 執行委員長の当該行為は、団体交渉の場で行われたものではなく、偶発的なものであり、組合活動や団体交渉との直接の関係はないといえる。
 また、これまで団体交渉の場で会社側の出席者が執行委員長から問題の行為を受けたことがないこと、当該行為は本件団交申入れから約1年8か月前の出来事であること等を併せ考慮すれば、将来行われる団体交渉の場において同様の行為を行う蓋然性があるとはいえず、会社は組合が誓約をしない限り、団体交渉に応じないとの態度をとることはできない。
(2) 執行委員長の現在の身分を拒否の理由とするもの
 会社は、 執行委員長が会社の従業員ではないから 「使用者が雇用する労働者の代表者」 (労組法第7条第2号) には当たらず、 「労働組合の代表者」 (労組法第6条)となる適格を欠き、 このような者から申し入れられた本件団交申入れについては、 団体交渉拒否をする正当な理由があると主張する。
 しかしながら、 組合規約では、 この組合は、 会社の従業員及びその他をもって構成すると規定しており、組合の構成員は会社の従業員に限られておらず、 また、 執行委員長が従業員に限られる等の制限を定める規定もない。 したがって、 執行委員長の組合の構成員資格や執行委員長たる地位を否定する根拠となるものではない。
 なお、 労組法第7条第2号の 「使用者が雇用する労働者の代表者」 とは労組法上の労働組合を指すものであって、 組合がこれに当たる。 組合の執行委員長は、 組合の代表者として本件団交申入れをしているものである。 したがって、 本件団交申入れは組合による適法な団体交渉の申入れであり、 この点からみても、 会社が本件団交申入れに応じないことの正当な理由にならない。
(3) 救済方法
 上記のとおり、本件団交申入れに会社が応じないことは労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。この不当労働行為から組合を救済して正常な集団的労使関係秩序の回復、 確保を図るためには、 会社に対し団体交渉の応諾を命ずることが相当である。
団体交渉の経緯及び内容に照らせば、 救済命令の具体的内容としては、 会社に対し、本命令書の受領後2週間以内に、本件団交申入れに係る団体交渉に代表取締役又は当該団体交渉の議題について実質的交渉権限を有する者を出席させて誠実に対応することを命ずるのが相当である。
 また、一連の交渉のうちに組合と会社との間で、労働協約としては成立していないものの、会社が組合に対し一定の書類を交付すべき合意がされたことから、団体交渉の場で組合から合意に基づく書類等の提出を求められた場合に会社がこれを拒否することは、 労使間の信義則に照らし許されないというべきである。
そうすると、基本的には、会社に対し初審命令主文第2項と同様の資料の手交を命ずるのが相当であるが、資料が何かであるかについては必ずしも明らかではないので、 この点を明確にすべく、 初審命令主文第2項を一部変更するものとする。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
山口県労委平成30年(不)第1号 一部救済 令和元年8月22日
東京地裁令和3年(行ウ)第186号 棄却 令和4年8月22日
東京高裁令和4年(行コ)第265号 棄却 令和5年2月15日
最高裁令和5年(行ツ)第207号・令和5年(行ヒ)第225号 上告棄却・上告不受理 令和5年9月8日
 
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