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概要情報
事件番号・通称事件名  愛知県労委平成30年(不)第7号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社・Y2会社 
命令年月日  令和2年11月24日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、Y1会社及びY2会社による次の各行為等が不当労働行為であるとして、申立てが行われた事件である。
①Y1会社がA2の給与から1万円を控除したこと
②Y1会社及びY2会社による組合の組合員の昇給及び賞与に関する議題に係る団交の対応
③Y1会社が新聞記事の写しを掲示したこと
④Y1会社がA2の定年退職後の再雇用を行わないことを組合に通告したこと
⑤Y1会社によるA2の定年退職後の再雇用に関する議題に係る団交の対応
 愛知県労働委員会は、Y1会社及びY2会社に対し、①の一部及び③について労組法第7条第3号並びに②及び⑤について同条第2号に該当する不当労働行為であるとして、文書の交付を命じ、その他の申立てを却下又は棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y1会社は、申立人に対し、下記内容の文書を本命令書交付の日から7日以内に交付しなければならない。
 当社が、平成30年7月30日、同年9月6日、平成31年1月29日及び同年3月12日の団体交渉において、平成29年度冬季賞与、平成30年度夏季賞与及び平成30年4月の基本給の昇給に係る、賞与支給の前提となった業績並びに従業員の勤務成績と賞与の支給額及び基本給の昇給額との関係について、十分な説明を行わなかったこと並びに平成31年3月12日の団体交渉において、申立人のA2組合員の満65歳定年退職後の再雇用を行わない理由について、就業規則の規定に即した説明を行わなかったことは、いずれも労働組合法第7条第2号に、同組合員の平成30年6月分の給与から1万円を控除したこと及び同年8月29日に当社C1工場において「C2労働組合支部委員長恐喝未遂容疑逮捕 C4県警」、「生コンの購入求め商社を脅した疑い 関西の組合3人逮捕」等と記載された新聞記事の写しを掲示したことは、いずれも同条第3号に、それぞれ該当する不当労働行為であると愛知県労働委員会によって認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
Y1会社        
代表取締役 B1
2 被申立人Y2会社は、申立人に対し、下記内容の文書を本命令書交付の日から 7 日以内に交付しなければならない。
 当社が、平成30年7月30日、同年9月6日、平成31年1月29日及び同年3月12日の団体交渉において、平成30年4月の基本給の昇給を行わず、平成30年度夏季賞与を支給しなかったことの前提となる業績について、十分な説明を行わなかったことは、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると愛知県労働委員会によって認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
Y2会社        
代表取締役 B1
3 次に掲げる被申立人Y1会社の行為に関する申立てはいずれも却下する。
(1) 申立人の組合員に対して平成29年4月15日の組合加入通知以降、継続的に次に掲げる行為を行ったこと
 ア 平成29年5月1日、申立人の組合員であったA3に対し、「C2労働組合を辞めなければC1で働けなくなる」と述べたこと
 イ 平成29年6月20日、申立人の組合員であるA2に対し、午前7時30分から行われる建材プラントの補修作業をさせず、スラッジの積込み及びブロックの型枠作製を命じたこと
 ウ 平成29年6月24日、申立人の組合員であるA2に対し、時間外労働の中止を指示したこと
 エ 平成29年7月26日、申立人の組合員であるA2に対し、炎天下における刈り業務を命じたこと
(2)平成29年4月5日、就業規則のうち休職期間に係る規定について、申立外C3労働組合支部代表者と図って申立人の組合員に対する説明をすることなく一方的に変更したこと
4 その余の申立ては棄却する。
 
判断の要旨  1 組合の組合員に対する嫌がらせ又は差別行為
(1)Y1会社は、組合の組合員に対して平成29年4月15日の組合加入通知以降、継続的に掲げる次の4つの行為を行ったか。当該行為は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点1-1)
・ 平成29年5月1日、組合の組合員であったA3に対し、「C2労働組合を辞めなければC1で働けなくなる」と述べたこと
・ 平成29年6月20日、組合の組合員であるA2に対し、午前7時30分から行われる建材プラントの補修作業をさせず、スラッジの積込み及びブロックの型枠作製を命じたこと
・ 平成29年6月24日、A2に対し、時間外労働の中止を指示したこと
・ 平成29年7月26日、A2に対し、炎天下における草刈り業務を命じたこと
ア 組合が本争点の各事実について救済を申し立てる意思を示したのは平成31年3月20日であると認められるところ、本争点の各事実が生じたとされる時期は、いずれも同日時点で1年を経過しており、組合の本争点に係る申立ては労組法第27条第2項に規定する申立期間を徒過したものといわざるを得ない。
イ また、本争点の各事実は、その後に行われたY1会社による本件申立てに係る行為と一体として評価すべき継続する行為であるとみることはできない。
ウ したがって、組合の本争点に係る申立ては不適法であり却下を免れない。
(2)Y1会社が、A2の平成29年10月分の給与から1万円を控除したことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点1-2)
ア 平成29年9月30日に散水車転落事故が発生し、A2がY1会社に対し始末書を提出したこと、同年10月31日にY1会社がA2に対し10月分の給与を支給するに当たり、賃金規程第20条を根拠に散水車転落事故の損害賠償金として1万円を控除したこと並びに同日及び同年11月2日に組合が当該控除は違法行為であって認められないとして返還を求め、同年12月6日にY1会社がA2に対し1万円を返還したことが認められる。
イ Y1会社には当該控除当時、賃金規程の第20条に事故を起こした場合における損害賠償の規定が存在したこと及びY1会社が平成30年1月分から11月分までの給与を支給するに当たり、事故に起因して複数月にわたって控除を行った従業員がA2以外に3名存在するほか、当該控除以前にも同様な控除を行った従業員がいたことが認められることからすれば、当該控除は、A2に限った特異な取扱いではなく、賃金規程に基づいたY1会社の従業員に対する一般的な取扱いであったといえる。
ウ そうすると、当該控除は、組合員を差別的に取り扱った不利益取扱いや、組合員を疲弊させ、組合脱退や組合加入の阻止を目的とした支配介入とはいえない。
エ したがって、本争点に係る事実は労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当しない。
(3)Y1会社が、A2の平成29年度冬季賞与を8万円としたことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点1-3)
ア Y1会社がA2に対し支給した賞与は、平成28年度の夏季賞与及び冬季賞与が各10万5,000円であったが、組合がA2に係る組合加入通知を行った平成29年4月以降においては平成29年度の夏季賞与が8万5,000円、本争点に係る平成29年度の冬季賞与が8万円であったことが認められる。
イ Y1会社の賃金規程には、「賞与の額は、会社の業績及び従業員の勤務成續などを考慮して各人ごとに決定する」との規定があること及びY1会社において平成29年度の冬季賞与の支給を受けたA2を始めとする従業員の中には、少なくとも、6万円の者が3名、6万5,000円の者が1名、7万円の者が4名、7万5,000円の者が2名、8万円の者が6名、8万5,000円の者が3名、9万円の者が6名、9万5,000円の者が4名いたほか、10万円以上20万円未満の者が58名、20万円以上の者が3名いたことが認められる。
ウ そうすると、Y1会社における賞与の支給額は、各支給時期における直近の業績に応じて変動するものであって、また、同一支給時期における各従業員間には、従業員ごとの直近の動務成續に応じて支給額に一定の差異が生じ得るものといえる。
エ A2の平成29年度冬季賞与について、上記アの組合加入通知が行われるまでの賞与の支給額との変動幅、上記イの従業員全体における支給額の分布状況、当該支給額ごとの従業員数の分布状況並びにA2に対する支給額と同程度の者及びA2に対する支給額に満たない者が従業員全体に占める割合を総合的に評価すると、A2に対する支給額が特異なものであったとまではいえず、A2の平成29年度冬季賞与が8万円であったことが組合員差別によるものであるとはいえない。
オ したがって、本争点に係る事実は労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当しない。
(4)Y1会社は、平成29年6月20日以降平成30年3月にかけて、A2に対して同組合員が資格取得した重機の作業を含まない業務配置を行ったか。当該行為は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点1-4)
ア 平成28年12月にA2が「整地」及び「掘削」に関する資格を取得したが、当該資格はY1会社がA2に命じて取得させたものではないことが認められることに加え、Y1会社には必ずしも個別の従業員に対して当該従業員が保有する資格を前提とした業務配置を行う義務はないものといえ、Y1会社がA2に対して取得した資格に基づく業務配置を行わないことを、嫌がらせであると評価することはできない。
イ したがって、Y1会社が平成29年6月20日以降、平成30年3月までにかけて、A2に対してA2が資格取得した重機の作業を含まない業務配置を行ったことが認められるが、当該事実は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当しない。
(5) Y1会社が、A2の平成30年5月分及び6月分の給与から各1万円を控除したことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点1-5)
ア 平成30年4月24日頃にA2がミラー等破損事故を発生させたこと、同年5月31日にY1会社がA2に対し5月分の給与を支給するに当たり、ミラ一等破損事故の損害賠償金として1万円を控除したこと、同日に組合が労基法第24条に違反するとして返還を求めるとともに控除理由等を協議事項として団交を申し入れたこと及び同年6月1日にY1会社がA2に対し1万円を返還したことが認められる。
イ 平成30年6月30日にY1会社がA2に対し6月分の給与を支給するに当たり、再びミラ一等破損事故の損害賠償金として1万円を控除したこと、同年7月4日に組合が違法な控除であるとして協議を求めて団交を申し入れlたこと及び同月19日にY1会社がA2に対し1万円を返還したことが認められる。
ウ 上記1(2)アで判断したとおり、Y1会社が散水車転落事故の損害賠償金としてA2の給与から1万円を控除した際にも組合から返還を求められ、平成29年12月6日にこれを返還した事実が存在することに鑑みれば、Y1会社は、遅くとも同日時点で、従業員が惹起した事故に起因する損害賠償金の給与からの控除が労基法第24条の趣旨に反することを認識していたものと考えられることから、かかる事情の存在を前提として、本争点に係る2回の控除について検討する。
エ まず、上記アの平成30年5月の控除についてみるに、Y1会社が控除から日を置かず1万円を返還したこと、上記1(2)イで判断したとおり、Y1会社がこれと同時期にA2以外の3名の従業員について事故に起因する控除を行っていることからすれば、平成30年5月の控除は、散水車転落事故に係る控除金の返還から半年近くが経過する中で、従業員が惹起した事故に起因する損害賠償金の徴収方法を是正することを失念した結果であって、Y1会社の労務管理能力のぜい弱性によるものとみるのが相当である。
 そうすると、平成30年5月の控除は、Y1会社の労務管理において不備があったというほかないが、上記1(2)イで判断したところと同様に、A2に限った特異な取扱いではなく、賃金規程に基づいたY1会社の従業員に対する一般的な取扱いであったといえるのであって、組合が主張するように組合員を疲弊させ、組合脱退や組合加入の阻止を目的としたものであるとはいえず、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当しない。
オ 次に、上記イの平成30年6月の控除についてみるに、Y1会社が控除から日を置かず1万円を返還したこと、これと同時期にA2以外の3名の従業員について事故に起因する控除を行っていることは平成30年5月の控除と同様であるから、上記1(2)イで判断したところと同様に、平成30年6月の控除は、A2に限った特異な取扱いではなく、賃金規程に基づいたY1会社の従業員に対する一般的な取扱いであったといえるのであって、少なくとも、A2に対して組合の組合員であるがゆえに不利益な取扱いを行ったものとはいえず、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当しない。
 しかしながら、Y1会社は、上記アのとおり、平成30年5月の控除をしたその日のうちに組合から労基法第24条に違反するとして返還の要求及び当該控除理由等を協議事項とする団交の申入れを受け、控除をした翌日である平成30年6月1日に当該控除した1万円をA2に対して返還したという事実がありながら、時期が近接し、同事故を根拠とする平成30年6月の控除については、平成30年5月の控除に際して組合からの返還の要求及び団交申入れがあった経過を考慮し、給与支給担当者に周知する等して当該控除を行わないことが可能であったにもかかわらず、控除を行ったものといえる。そうすると、平成30年6月の控除は、単なる労務管理の不備にとどまらず、平成30年5月の控除に係る組合からの返還要求等を無視するものであって組合を軽視するものであり、組合を弱体化させるものといえ、また、組合の組合員にとっては組合の存在意義に疑念を生じさせるものであり、組合からの脱退を助長させるものといえることから、組合の運営に対する支配介入であるといわざるを得ない。
力 したがって、Y1会社が、A2の平成30年6月分の給与から1万円を控除したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
(6) Y1会社は、平成30年5月分の給与明細書を従業員に配布するに当たり、「各位殿 求人募集」と題する紙を組合の組合員以外の従業員にのみ同封したか。当該行為は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点1-6)
 平成30年5月31日にY1会社が5月分の給与明細書を配付するに当たり、従業員のうちA2を含む一部の者に求人募集の紙を同封したことが認められる。
 そうすると、Y1会社が求人募集の紙を組合の組合員以外の従業員にのみ同封したとはいえない。
 したがって、本争点に係る不当労働行為性について判断するまでもない。
(7) Y2会社のダンプ班の班長B2班長は、平成30年6月29日に組合の組合員であるA4及び組合の組合員であったA5に対して「組合にたいそう払ってるんだろ」と述べたか。当該行為は、Y2会社の意を体して行われたものといえるか。当該行為は、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか。(争点1-7)
 B2班長がそのように述べたとの疎明はないことから、当該発言があったとは認められない。
 したがって、本争点に係る不当労働行為性について判断するまでもない。
(8) Y1会社らは、C3労働組合の組合員がC3労働組合に対し支払うべき組合費を肩代わりしているか。当該行為は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点1-8)
ア 平成30年3月分及び4月分のY1会社らの給与支給において、支給項日としての「管理」の名目で2,000円が支給され、かつ、控除項目としての「管理」の名目で2,000円が控除された従業員が、少なくとも、Y1会社において2名、Y2会社において5名それぞれ存在し、控除項目としての「管理」は、C3労働組合の組合費のチェックオフを意味するものであったことが認められるが、「管理」の名目で支給された2,000円について、C3労働組合の組合員がC3労働組合に対し支払うべき組合費をY1会社らが肩代わりしたものであることの疎明はないことからすれば、Y1会社らが当該組合費を肩代わりしているとはいえない。
イ したがって、本争点に係る不当労働行為性について判断するまでもない。
(9) Y1会社らは、工場への立入り、組合掲示板の設置及びチェックオフについてC3労働組合に認め、組合に認めなかったか。当該行為は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点1-9)
ア 工場への立入りについて、Y1会社らが工場への立入りを組合に認めなかったとはいえない。
イ 組合掲示板の設置及びチェックオフについて、31.3.12団交において組合及びY1会社らが組合掲示板の設置時期及びチェックオフの開始時期を同年4月とすることで合意したことが認められる。 
 そうすると、Y1会社らが組合掲示板の設置及びチェックオフを組合に認めなかったとはいえない。
 組合は、Y1会社らが平成27年からC3労働組合には組合掲示板の設置やチェックオフを認めていたとして、これが差別に当たる旨主張する。しかしながら、組合掲示板の設置やチェックオフといった便宜供与は、労使間の交渉の結果としてなされるものであるから、使用者において労働組合からの要求もなく当然に便宜供与をなすべき義務はないといわざるを得ないところ、組合の当該主張は、他の労働組合になした便宣供与は交渉を待たずに自らに対し当然になすべきであるとするものであって、 採用できない。
ウ したがって、本争点に係る不当労働行為性について判断するまでもない。
2 平成30年度の組合の組合員に係る昇給及び賞与
(1) Y1会社がA2、組合の組合員であるA6及び組合の組合員であったA7について並びにY2会社がA4及び又A5について、平成30年4月に昇給を行わなかったことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点2-1)
ア Y1会社について
(ア) 平成30年4月にY1会社がA2、A6及びA7について基本給の昇給を行わなかったこと、同月に組合の組合員以外にY1会社が基本給の昇給を行わなかった従業員が3名いたこと並びにY1会社の賃金規程には、「昇給額は、従業員の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する」との規定があることが認められる。
 そうすると、Y1会社においては、従業員ごとの直近の勤務成績に応じて各従業員間の昇給額に一定の差異が生じ得るものといえ、また、その結果として平成30年4月に基本給の昇給がなかった者は組合の組合員に限られないことからすれば、A2、A6及びA7について基本給の昇給を行わなかったことが特異なことであったとまではいえず、これが組合員差別によるものであるとはいえない。
(イ)組合は、31.4.18団交及び1.5.21団交において平成30年4月の昇給がC3労働組合との間で「定期昇給500円」として決定されていたことが明らかにされたことで、本争点に係る事実が不当労働行為であることが確定している旨主張する。
 しかしながら、C3労働組合の交渉結果をもってA2、A6及びA7についても基本給の昇給を行うべきであるとはいえないから、組合の当該主張は採用できない。
イ Y2会社について
 平成30年4月にY2会社がA4及びA5を始め、全ての従業員について基本給の昇給を行わなかったことが認められる。
 そうすると、Y2会社においては、一律に基本給の昇給が行われなかったのであるから、A4及びA5について基本給の昇給を行わなかったことは組合員差別によるものであるとはいえない。
ウ したがって、本争点に係る事実は労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当しない。
(2) Y1会社の代表取締役であるB1は、平成30年6月21日にA7に対して組合からの脱退を求める発言を行ったか。当該行為は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点2-2)
 当該発言を行ったとの疎明はないことから、当該発言があったとは認められない。
したがって、本争点に係る不当労働行為性について判断するまでもない。
(3) A7は、平成30年8月2日にA6に対して組合からの脱退を求める発言を行ったか。当該発言は、Y1会社の意を体して行われたものといえるか。当該行為は、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか。(争点2-3)
 当該発言を行ったとの疎明はないことから、当該発言があったとは認められない。
 したがって、本争点に係る不当労働行為性について判断するまでもない。
(4) Y1会社がA2及びA6の平成30年度夏季賞与を各8万5,000円としたこと並びにY2会社がA4に同賞与を支給しなかったことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点2-4)
ア Y1会社について
(ア)Y1会社がA2に対し支給した賞与は、平成28年度の夏季賞与及び冬季賞与が各10万5,000円であったが、組合がA2に係る組合加入通知を行った平成29年4月以降においては平成29年度の夏季賞与が8万5,000円、平成29年度の冬季賞与が8万円であったことが認められる。
(イ)Y1会社がA2及びA6に対し支給した本争点に係る平成30年度の夏季賞与は各8万5,000円であったこと並びにY1会社において同年度の夏季賞与の支給を受けたA2及びA6を始めとする従業員の中には、少なくとも、5万円の者が4名、7万円の者が2名、8万円の者が1名、8万5,000円の者が2名、9万円の者が2名、9万5,000円の者が2名、10万円の者が8名いたことが認められる。
(ウ) 上記1(3)ウで判断したところと同様に、Y1会社における賞与の支給額は、各支給時期における直近の業績に応じて変動するものであって、また、同一支給時期における各従業員間には、従業員ごとの直近の勤務成績に応じて支給額に一定の差異が生じ得るものといえる。
(エ) A2及びA6の平成30年度夏季賞与について、従業員全体における支給額の分布状況及び当該支給額ごとの従業員数の分布状況は必ずしも明らかではないものの、上記 (ア)のA2に係る組合加入通知が行われるまでの賞与の支給額との変動幅、上記 (イ)のA2及びA6に対する支給額と同程度の者並びにA2及びA6に対する支給額に満たない者が従業員全体に占める割合を総合的に評価すると、A2及びA6に対する支給額が特異なものであったとまではいえず、A2及びA6の平成30年度夏季賞与が各8万5, 000円であったことが組合員差別によるものであるとはいえない。
イ Y2会社について
(ア)Y2会社がA4を始め、全ての従業員に対し平成30年度夏季賞与を支給しなかったことが認められる。
(イ)そうすると、Y2会社においては、一律に平成30年度夏季賞与を支給しなかったのであるから、A4に平成30年度夏季賞与を支給しなかったことは組合員差別によるものであるとはいえない。
ウ したがって、本争点に係る事実は労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当しない。
3 組合の組合員の昇給及び賞与を議題とする団体交渉
(1) Y1会社らの平成30年7月30日、同年9月6日、平成31年1月29日及び同年3月12日の組合との団体交渉における組合の組合員についての昇給及び賞与に関する議題に係る対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。(争点3-1)
ア 組合の組合員の昇給及び賞与については、計4回の団交において継続的に議題とされているところ、特定の議題に係る団交の不誠実性については、連続する団交を総合的に評価することが相当であるので、この観点から検討する。
イ Y1会社について
(ア)上記1(3)ウ及び2(1)ア(ア)で判断したとおり、Y1会社の賞与の支給額は、直近の業績に応じて変動するものといえ、また、各従業員間には、従業員ごとの直近の勤務成績に応じて、賞与の支給額及び基本給の昇給額に係る一定の差異が生じ得るものといえることからすれば、賞与及び昇給を議題とする団交においてY1会社は、少なくとも、賞与支給の前提となった業績並びに従業員の勤務成績と賞与の支給額及び基本給の昇給額との関係について説明をなすべきであったといえる。
(イ)まず、賞与支給の前提となった業績に係る説明をみるに、Y1会社は、売上げ及び利益は下がる一方である、生コンの価格が上がらないため会社が苦しかった、平成29年及び平成30年の売上げ及び利益は共に前年に比して減少した、平成28年には設備投資及び見舞金として、それぞれ数千万円支出した、決算は平成28年7月が赤字、平成29年7月が黒字、平成30年7月が黒字であったなどと述べるにとどまり、これらの説明は、いずれも抽象的なものであって、 賞与の支給額の根拠といえるだけの説得力を持ち合わせていないものといわざるを得ない。また、Y1会社は、組合が求める資料を提示しなかったものであるが、必ずしも求められた資料をそのまま提示する義務はないとしても、これに代わる何らかの根拠資料を提示し、説明したとの疎明もない。
(ウ)次に、従業員の動務成績と賞与の支給額及び基本給の昇給額との関係に係る説明をみるに、Y1会社は、従業員の賞与及び昇給を判断する上での査定対象は日頃の行動、貢献度、能率等であると述べるにとどまり、A2及びA6に対する査定結果には言及していないものであるが、必ずしも個々の組合員に対する査定結果を具体的に提示する義務はないとしても、少なくとも、査定結果がどのように賞与の支給額や基本給の昇給に反映されるものであるかについては、一定の説明が必要であるのであって、この点において説明を欠くものというほかない。
(エ)以上のことからすれば、Y1会社は、団交の議題となっている平成29年度冬季賞与及び平成30年度夏季賞与並びに平成30年4月の基本給の昇給に係る、賞与支給の前提となった業績並びに従業員の勤務成續と賞与の支給額及び基本給の昇給額との関係について、十分な説明を行ったものとはいえず、誠実さに欠けるものと評価せさるを得ない。
ウ Y2会社について
(ア)上記2(1)イ及び(4)イ(ア)で判断したとおり、Y2会社は、組合の組合員を始め全ての従業員について平成30年4月の基本給の昇給を行わず、平成30年度夏季賞与を支給しなかったが、団交においては、その前提となる業績について、一定の説明が求められる。
(イ)しかしながら、Y2会社は、平成28年7月、平成29年7月及び平成30年7月の決算が「トントン」である、賞与を出す余裕がなくなっていくなどと述べるにとどまる。また、従前は、Y1会社が購入した原石をY2会社が運搬していたが、現在は、外部の者が庸車で持ってきた方が原石は安く、Y2会社が原石を運賃込みで購入し、Y1会社に運賃込みで売却している旨述べるが、これは即ち、従前と比してY1会社から得られる運賃収入が低減した旨を説明したものであるが、これらの説明を総覧しても、平成30年4月の基本給の昇給を行わず、平成30年度夏季賞与を支給しなかったことの前提となる業績について、十分な説明を行ったものとはいえず、誠実さに欠けるものと評価せざるを得ない。
エ したがって、Y1会社らの平成30年7月30日、同年9月6日、平成31年1月29日及び同年3月12日の組合との団交における組合の組合員についての昇給及び賞与に関する議題に係る対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(2) Y1会社らは、平成30年10月16日に予定されていた組合との団交を拒否したか。当該行為は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。(争点3-2)
ア 30.9.6団交においてB1社長は、平成30年10月16日の団交開催が差し支える場合はB1社長から組合に連絡して日程の再調整を図ることを承諾したものであるから、組合が、B1社長から連絡がなければ同日に団交が開催されるものと考えるのは無理からぬものといえ、B1社長がそのような連絡を行ったとの疎明もないことからすれば、B1社長は、自らが行うべき連絡を怠ったものであって、使用者の態度として望ましいものであったとはいえず、非難されるべきものであるといわざるを得ない。
イ しかしながら、30.9.6団交において、次回団交を行うこと自体については労使合意がなされていることに加え、平成30年10月16日以降において、同年11月6日に団交が開催されたことからすれば、Y1会社らに団交そのものを拒否する意図があったとはいえない。
ウ また、30.9.6団交及びその前後の計7回の団交におけるY1会社らの出席者は、B1社長及びB3顧問の2名のみであったことが認められることからすれば、30.9.6.団交当時においてY1会社らには、B1社長以外にはB3顧問のみの出席をもって団交に臨む通例があったといえることに加え、30.9.6団交においてB3顧間が、候補日である平成30年10月16日及び同月18日の両日共に差し支える旨述べたことからすれば、確定的に同月16日の団交開催が決定していたものとみることもできない。
エ そうすると、B1社長が自らに課された必要な連絡を怠ったことについては非難を免れないものの、Y1会社らが団体交渉拒否を行ったとまでは評価することはできない。
オ したがって、本争点に係る不当労働行為性について判断するまでもない。
4 平成30年3月19日付け「確認書」の取扱い及びA2の満65歳定年退職後の再雇用
(1) Y1会社が、平成30年8月29日、Y1会社C1工場において「C2労働組合委員長恐喝未遂容疑逮捕 C4県警」、「生コンの購入求め商社を脅した疑い 関西の組合3人逮捕」等と記載された新聞記事の写しを掲示したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか。(争点4-1)
ア 平成30年8月29日にY1会社が、C1工場内の従業員が通行する階段の踊り場に30.8.29掲示物を掲示したことが認められる。
イ 30.8.29掲示物の内容をみるに、C2労働組合支部(組合の上部団体である労働組合の一支部)の役員が逮捕された旨を伝える新聞記事の写しに、Y1会社により敢えて当該役員らと組合との関係を示唆する補記が行なわれていることからすれば、このような掲示物を見た組合の組合員が、自身が所属する組合に関する負の感情を抱くことは想像に難くない。
ウ また、組合は、C2労働組合支部の地方組織でもあって、組合の組合員は、組合に加入するとともに、C2労働組合支部にも加入しており、Y1会社もこれらの事実を認識していたことが認められる。
エ そうすると、Y1会社は、組合の組合員に対して自身が所属する組合に関する負の感情を抱かせることにつながり、ひいては組合からの脱退の契機となり得たものと評価せざるを得ない30. 8. 29掲示物を、組合の組合員に与える当該影響を認識した上で掲示したものといえる。
オ Y1会社は、30,8.29掲示物について、社会的に耳目を集める報道記事で、生コン業界・会社に関わるものであることから、客観的事実として報道された記事を提供したものであって、通常の社会生活上の行為である旨主張する。
 しかしながら、B1社長が、新聞記事を掲示したのは、30.8.29掲示物が初めてである旨、過去に掲示したものはダンプ力一の騒音に関する近隣からの苦情に関するものや、災害時に事業所が避難所となる旨の近隣との協定書程度である旨証言することからすれば、30.8.29掲示物の掲示は、Y1会社における掲示物掲示の通例と異なる特異な取扱いであって、通常の社会生活上の行為とは一線を画するものといわざるを得ない。
カ また、B1社長は、30,8.29掲示物について、C1工場だけではなく、ほかの全ての工場においても掲示した旨証言するが、ほかの工場に先行してC1工場において掲示したものと認められ、加えて、30.8.29掲示物の掲示時点においてC1工場にA2及びA6が勤務していたことが認められることからすれば、Y1会社は、C1工場に勤務する組合の組合員の存在を念頭に掲示したものとみるのが相当である。
キ 以上のことからすれば、30.8.29掲示物の掲示は、それ自体が組合からの脱退の契機となり得るものであったことに加え、Y1会社における掲示物掲示の通例と異なる特異な取扱いであり、C1工場に勤務する組合の組合員を念頭になされたものであるから、組合からの脱退を助長するものとして組合に対する支配介入であって、組合の組織、運営に影響を及ぼすものと評価せざるを得ない。
ク したがって、Y1会社が、30.8.29掲示物を掲示したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
(2) Y1会社が、平成30年9月22日付けで「ご連絡」と題した文書を組合の上部団体宛てに通知したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか。(争点4-2)
ア 平成30年9月22日にY1会社が、組合の上部団体であるC2労働組合の地方本部書記長に対し、反社会的勢力の例示として「暴力団」との文言を用いつつ、企業としては反社会的勢力と関係を持たないことを法的及び社会的に求められているところ、C2労働組合支部の幹部・構成員の反社会的行動が明るみに出たとして、そのような団体とは取引関係を持つことはできない旨記載した30.9.22ご連絡文書を送付したことが認められる。
イ 上記アからは、30.9.22ご連絡文書の記載内容のうち、企業として求められる反社会的勢力との関係に係る記載の部分は首肯できるが、C2労働組合支部を暴力団に例示される反社会的勢力と同列に扱ったものといえる記載の部分については、C2労働組合支部の役員が複数名逮捕された旨の報道が事実だとしても、平成30年9月22日時点において当該役員らの有罪が確定していたとの疎明もなく、また、いうまでもなく労働組合は個々の労働者が参画して組織される団体であるところ、役員の逮捕によって直ちにその労働組合が労働組合たる資格を喪失するとも、幹部の逮捕とは無関係である一般の組合員まで違法行為を行っているともいえないことからすれば、30.9.22ご連絡文書の記載内容には一部、適切ではない部分が存在するといえる。
 しかしながら、30.9.22ご連絡文書は、組合に対して直接送付されたものではなく、その上部団体に送付されたものであり、また、30.9.22ご連絡文書が組合の運営や活動に対してどのような影響を及ぼすのかについて及び組合の組合員が30.9.22ご連絡文書の存在を認知していたとの具体的な主張や疎明もない。
 そうすると、30.9.22ご連絡文書は、組合の組合員がC2労働組合支部の組合員でもあることを併せ考えたとしても、組合の運営や活動に影響を及ぼすものとはいえない。
ウ したがって、Y1会社が、30.9.22ご連絡文書を組合の上部団体宛てに通知したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当しない。
(3) Y1会社が、平成31年3月12日の団交において、組合に対してA2の満65歳定年退職後の再雇用を行わないことを通告したことは、労組法第7条第1号、第3号及び第4号の不当労働行為に該当するか。(争点4-3)
ア 31.3.12団交においてB1社長がA2の定年後の継続雇用は行わない旨述べたことが認められる。
イ 就業規則には、従業員の定年退職に係る年齢を満65歳とする旨の規定があるとともに、定年退職後の再雇用について、「定年後も希望する者、会社が必要とする者は、70歳迄再雇用する」、「会社に対して貢献度の高い者。健康である人に限る」、「社会情勢並びに会社の都合により雇えない場合も有る」との規定があることが認められることからすれば、Y1会社には、従業員を定年退職後に再屋用することについて、一定の裁量があるものとみるのが相当である。
ウ また、Y1会社の建材部門において満65歳の定年退職後に再雇用された従業員がいたとはいえない。
エ そうすると、Y1会社がA2の満65歳定年退職後の再雇用を行わないことを決定し、これを組合に対して通告したことは、建材部門において定年退職後の再雇用を行っていないというY1会社における通常の取扱いに沿ったものであって、従業員の定年退職後の再雇用に係るY1会社の裁量を逸脱したものとはいえず、A2に対する組合の組合員であるがゆえの不利益な取扱いその他の不当労働行為であるとはいえない。
オ 組合は、 Y1会社がA2の定年退職後の再雇用を行わないことは確認書第3項に違反する旨主張する。
 しかしながら、確認書第3項は、C2労働組合支部の組合員全般の定年退職後の再雇用を規定するものと解釈することはできず、確認書第2項の対象となった組合員について、就業規則第24条の規定にかかわらず、確認書第2項の対象となり得ることを明確とするための規定であるとみるのが相当である。
 よって、確認書は、Y1会社にA2の定年退職後の再雇用を義務付けたものであるとはいえず、組合の当該主張は採用できない。
カ したがって、本争点に係る事実は労組法第7条第1号、第3号及び第4号の不当労働行為に該当しない。
(4) Y1会社の前項の団交におけるA2の満65歳定年退職後の再雇用に関する議題に係る対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。(争点4-4)
ア 31.3.12団交においてB1社長が、A2の定年後の継続雇用は行わない旨述べた後、組合がその理由を尋ねたのに対して、若い人を雇いたいからである旨及びほかに理由はない旨述べ、組合が幾度かその理由を尋ねても同様の回答を繰り返したことが認められる。
イ 上記 (3)イで判断したとおり、Y1会社には、従業員を定年退職後に再雇用することについての一定の裁量があるものとみるのが相当であるが、一方で、定年退職後に再雇用されるか否かは、労働者の労働条件に直結する事項であることから、定年追職後の再雇用を行わない場合においてY1会社は、就業規則に規定されている「会社が必要とする者」「会社に対して貢献度の高い者」「健康である人」「社会情勢」「会社の都合」といった基準のいずれをもって再雇用を行わないかについて一定の説明をなすべきものといえる。
ウ しかしながら、31.3.12団交においてB1社長は、再雇用を行わない理由について、若い人を雇いたいことのみを挙げるものであるが、そもそも、Y1会社における定年退職後の再雇用は満65歳の者を対象にしたものであるから、 若い人を雇いたいという理由は、理由として体を成していないというほかない。
エ また、Y1会社は、建材部門において満65歳の定年退職後に再雇用された従業員は過去に存在しない旨、A2について勤務態度の不良等が顕著である旨主張するが、これらを団交において理由として説明したとの疎明はなく、さらに、31.3.12団交以外の団交において若い人を雇いたいという理由以外の理由を説明したとの疎明もない。
オ そうすると、Y1会社は、A2の満65歳定年退職後の再雇用を行わない理由について、就業規則の規定に即した説明をなしていないというほかなく、誠実さに欠けるものと評価せざるを得ない。
力 したがって、Y1会社の平成31年3月12日の団交におけるA2の満65歳定年退職後の再雇用に関する議題に係る対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(5) Y1会社は、令和元年5月20日にC1工場建材部門で行った安全ミ一ティングからA2を合理的な理由なく排除したか。当該行為は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点4-5)
ア 1.5.20ミーティングの内容は、冒頭と最後に安全に関する注意喚起があったほかは令和元年9月以降のC5工場の建て替え後の生産体制に関する説明であったといえることからすれば、Y1会社が、1.5.20ミーティングに、同年8月をもって定年退職となるA2を参加させなかったことは、不合理なものとはいえない。
イ 以上のことからすれば、Y1会社は、1.5.20ミーティングにA2を参加させなかったことが認められるものの、当該行為について、A2を合理的な理由なく排除したものと評価することはできない。
ウ したがって、本争点に係る不当労働行為性について判断するまでもない。
(6) Y1会社は、令和元年5月21日の組合との団交において、同月20日のミーティングにA2を参加させなかった理由について虚偽の説明をしたか。当該行為は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。(争点4-6)
ア 1.5.21団交においてB1社長は、1.5.20ミーティングの冒頭と最後は安全に関する注意喚起であった旨述べ、1.5.20ミーティングの具体的な内容については「色々と細かいことも言いました」、「企業秘密です」と述べた上で、 A2を参加させなかった理由については、A2が令和元年8月で退職となるからである旨述べたことが認められる。
イ 上記(5)アで判断したとおり、1.5.20ミーティングの内容は、冒頭と最後に安全に関する注意喚起があったほかは令和元年9月以降のC5工場の建て替え後の生産体制に関する説明であったことからすれば、1.5.21団交においてB1社長は、1.5.20ミーティングの具体的内容についての言及を避けたものといえるが、これをもってB1社長の発言が真実と相違するとはいえない。
 また、Y1会社が令和元年8月をもって定年退職となるA2に対しては定年退職後の生産体制についての説明が特段不要であると考えても、不合理とはいえず、1.5.21団交においてB1社長が、A2を参加させなかった理由について、令和元年8月で退職となるからである旨述べたことが真実と相違するとはいえない。
ウ そうすると、Y1会社が1.5.21団交において、1.5.20ミーティングにA2を参加させなかった理由について虚偽の説明をしたとはいえない。
エ したがって、本争点に係る不当労働行為性について判断するまでもない。
5 就業規則のうち休職期間に係る規定変更
(1) Y1会社は、平成29年4月5日、就業規則のうち休職期間に係る規定について、C3労働組合支部代表者と図って組合の組合員に対する説明をすることなく一方的に変更したか。当該行為は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。(争点5-1)
ア 平成29年4月4日にY1会社が就業規則のうち休職期間に係る規定を改める内容を含む変更届をC6労働基準監督署に提出し、同月5日に受理されたことが認められる。
イ 組合は、本争点の事実について、令和元年5月28日付けの追加申立書をもって救済を申し立てた。そうすると、本争点の事実が生じた時期は平成29年4月5日であって、申立てのあった令和元年5月28日時点で1年を経過しており、 組合の本争点に係る申立ては労組法第27条第2項に規定する申立期間を徒過したものといわざるを得ない。
ウ したがって、組合の本争点に係る申立ては不適法であり却下を免れない。
(2) Y1会社の令和元年7月9日の組合との団交における平成29年4月5日付け就業規則変更手続に関する議題に係る対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。(争点5-2)
ア 平成29年4月5日付け就業規則変更手続については、計5回の団交において継続的に議題とされているところ、特定の議題に係る団交の不誠実性については、連続する団交を総合的に評価することが相当であるので、この観点から検討する。
イ B1社長による説明内容からすれば、労基法の知識の乏しさが垣間見えるが、平成29年4月の就業規則改定に先立つ労働者の意見聴取や労働者に対する周知について実際の状況を説明しつつ、法令に違背しないようにこれらの手続を行ったとの自己の認識を説明したものと評価できる。
ウ そうすると、Y1会社の団交における対応は、使用者が承知しているべき事実の認識にやや欠ける面があることは否めないものの、総体として改定手続について一定程度説明しているものといえ、不誠実なものであったとまではいえない。
エ 組合は、1.7.9団交においてY1会社が「組合不介入」などと危弁を弄して誠実に交渉することを拒否した旨主張する。
 B1社長の当該発言は、要するに、「C3労働組合の支部代表者が周知した人数をC3労働組合に尋ねたが、C3労働組合から『C3労働組合の組合員数を始めとするC3労働組合の活動に関する情報は経営者に教えることはできない』と言われ、回答を断られた」との趣旨であったとみるのが相当である。そうすると、このようなB1社長とC3労働組合との間のやり取りは、B1社長が団交における議論の枢要を理解し、C3労働組合の支部代表者が全従業員に対しての周知をどのように行ったかを丁寧に尋ねていれば起き得なかったというほかないが、B1社長の当該発言は、C3労働組合から言われたことを団交の過程で述べたにとどまるものであって、誠実に交渉することを拒否したものとはいえないから、組合の当該主張は採用できない。
オ したがって、Y1会社の1.7.9団交における平成29年4月5日付け就業規則変更手続に関する議題に係る対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。 
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