労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第41号
田中酸素不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  X労働組合(「組合」) 
命令年月日  令和2年2月5日 
命令区分  一部変更・棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、組合の組合員A1(「A1」)に、平成29年2月20日付けでC1営業所への配置転換を命じたこと(「本件配転命令」)が、組合の組合員であることを理由とした不利益取扱い(労働組合法(「労組法」)第7条第1号)の不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審山口県労働委員会(「山口県労委」)は、本件配転命令が労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる等として、会社に対し文書手交を命じ、その余の救済申立てを棄却する旨の命令を発したところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、初審命令の一部を変更し、その余りの再審査申立てを棄却した。 
命令主文  1 初審命令主文第1項を次のとおり変更する。
 再審査申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を再審査被申立人に手交しなければならない。
令和 年 月 日
X労働組合
執行委員長 A2 様
Y株式会社    
代表取締役 B

 当社が、貴組合の組合員であるA1に対し、平成29年2月20日付けでC1営業所への配置転換を命じたことは、山口県労働委員会及び中央労働委員会において、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 当社は、今後、このようなことを繰り返さないように留意します。
 (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
2 その余の本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨   本件配転命令は、以下のとおり、A1が組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たり、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当する。
(1)判断枠組み
 本件配転命令が、労組法第7条第1号の要件に該当するか否かと、配転権の濫用により私法上違法、無効とされるものであるか否かとは別個の問題であるというべきである。したがって、本件配転命令の私法上の効力の判断基準を同号の不当労働行為の成否の判断に用いるのは相当でない。
(2)本件配転命令の不利益性
 本件配転命令は、①会社において本人の意向に沿わない配転は行われていないという実情の下で、A1が異動を明確に拒否したにもかかわらず行われ、他の従業員一般にとっても不利益なものである、②通勤時間は約4倍に増加し、経済的負担も増加した、③A1のC1営業所勤務での任期は、会社において予め決定されておらず、②のような負担がいつまで続くかの見通しもつかないものであった。これらの事情を総合すると、本件配転命令は、A1にとって不利益であるのみならず、会社の従業員の一般認識においても不利益であると受け止められるのが通常であると推認されるのであって、不利益な取扱いに当たる。
(3)不当労働行為意思の有無
ア C1営業所における営業担当の欠員を補充するために配転をする必要性があったことは否定できないものの、会社は、会社による評価が低く本人が異動を明確に拒否しているA1を、他の人選を検討することなく、あえて本件配転命令の対象者としたというべきであって、このような人選には合理性が認められないから、本件配転命令は合理性を欠く。
 なお、人選の経緯について、会社側関係者は、当委員会審問において、他の従業員の名前が出た旨証言するが、当該証言は信用することができず、その他A以外の人選が検討されたことを認めるに足りる証拠はない。
イ また、①平成16年の組合結成以降これと対立関係にあった会社が、組合員であるA1を対象者として不利益な取扱いである本件配転命令を発したこと、②発令の時期は、36協定締結を拒否する組合の組合員であるA1が労働者代表を務めるC2営業所において約一年間36協定を締結することができなかった後であること、③その状況において、会社は、組合との協議を十分に経ることなく、組合との関係を悪化させ、不意打ちになる状況の下で辞令を交付したこと、④発令直後に、組合員のいなくなったC2営業所において非組合員が労働者代表となって36協定が締結されたことなどを総合勘案すると、本件配転命令は、会社が組合を嫌悪し、A1が組合の組合員であるが故にされたものであると推認され、専ら不当労働行為意思によるものと認めるのが相当である。
(4)救済方法
 A1は初審命令交付前に自主退職しており、組合は文書の手交を求めていないが、これまでの労使関係の経緯に照らすと、会社が、残る組合員に対して、今後同様の不当労働行為を繰り返さないようにする措置を講ずる救済命令を発する必要がある。
 したがって、組合が求めていない文書の手交を命じたのは労働委員会に与えられた裁量権を逸脱するものとの会社の主張は採用できない。
 もっとも、本件において不当労働行為に当たると判断された事実は本件配転命令であることから、初審命令主文第1項を配転命令のみに係るものに変更する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
山口県労委平成29年(不)第1号 一部救済 平成30年7月26日
 
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