概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京都労委平成29年(不)第82号
トールエクスプレスジャパン不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y1会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和元年6月4日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
1 会社では、集配業務を担当する従業員(集配職)の能率手当を算定するに当たり、賃金対象額から時間外手当相当額を控除する方法を採用していた(本件賃金体系)。
平成28年5月、組合は、会社に支部を結成し、組合は、本件賃金体系の是正を要求した。
29年10月2日、組合は、本件賃金体系の是正を求めて会社と団体交渉を行ったものの、合意に至らなかったため、一定の残業を拒否する残業拒否闘争(本件拒否闘争)を開始した。
11月1日、会社は、組合員について、朝に指示する集荷業務及び午後に電話で指示する集荷業務の量を減少させ、定時で帰宅させる措置(本件措置)を開始した。
30年1月31日、組合が本件拒否闘争を終了し、これを受けて会社も本件措置を終了した。
2 本件は、29年11月1日から30年1月31日までの組合の組合員らに対する本件措置が組合活動を理由とする不利益取扱い及び組合の組織・運営に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。
東京都労働委員会は、会社に対し、不利益取扱い及び支配介入にあたるとして、賃金の減少差額相当のバックペイの支払いとともに、文書の交付及び掲示を命じた。
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命令主文 |
1 被申立人会社は、別紙記載の組合員に対し、平成29年11月1日から30年1月31日までの間に被申立人会社が組合員の集荷業務の量を減らしたことによって減少した賃金差額相当額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートルX80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社Y2支店及び同Y3支店の従業の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
記 年 月 日
組合
中央執行委員長 A殿
会社
代表取締役 B
当社が、平成29年11月1日から平成30年1月31日までの間、貴組合の組合員の集荷業務の量を減らし、賃金を減額させたことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は交付又は掲示した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、第1項及び前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 |
判断の要旨 |
1 労働組合の正当な行為といえるかについて
本件拒否闘争は、本件賃金体系の是正を求めるために、労働組合として一部の残業を拒否したものであり、労働組合の正当な行為ということができる。
2 本件措置の不利益性について
組合が一部の集荷業務を拒否する形態の本件拒否闘争を行っている以上、会社がこれに対応する業務を組合員に命じないことは当然である。
しかしながら、組合員個人にとっても組合組織にとっても打撃の大きい本件措置には、不利益性が認められる。
3 会社は、組合が労働組合の正当な行為を行ったことを理由として本件措置を執ったといえるかについて
会社の対応は、本件拒否闘争による業務上の支障に対処するため、実際に業務上の支障を生じさせた組合員に残業を行わせなかったというよりも、組合が本件賃金体系の是正を求めて組合活動を行っていることを理由に組合員全員に対して本件措置を執ったのではないかと疑わせるに足りるものといえる。
この点に加え、本件措置が行われた時期が労使関係の極めて緊迫した時期であったこと、会社が本件措置を執ったとする理由がいずれも採用できないことを併せ考えれば、会社は、労働組合の正当な行為である本件拒否闘争を嫌悪し、これを理由に同聞争を行った組合及び組合員に打撃を与える意図で本件措置を行ったものとみざるを得ない。
4 結論
したがって、本件措置は、組合が労働組合の正当な行為である本件拒否闘争を行ったことを理由とする不利益取扱いに当たるとともに、組合活動を萎縮させることを企図した組合の運営に対する支配介入にも当たる。
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掲載文献 |
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