概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京高裁令和4年(行コ)第305号
トールエクスプレスジャパン不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 |
控訴人 |
X株式会社(「会社」) |
被控訴人 |
国(処分行政庁 中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
Z組合(「組合」) |
判決年月日 |
令和5年4月26日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
1 会社では、集配業務を担当する従業員(以下「集配職」という。)の能率手当を算定するに当たり、賃金対象額から時間外手当相当額を控除する方法を採用していた(以下、この賃金体系を「本件賃金体系」という。)。組合は、本件賃金体系の是正を求めて会社と団体交渉を行ったものの、合意に至らなかったため、平成29年10月2日、組合が一定の残業を拒否する残業拒否闘争(以下「本件拒否闘争」という。)を開始した。これに対し、同年11月1日、会社は、組合の集配職の組合員(以下「組合の組合員」という。)について残業となる可能性のある業務を命じない措置(以下「本件措置」という。)を開始し、組合が平成30年1月31日に本件拒否闘争を終了するまで継続した。
2 本件は、本件措置が組合活動を理由とする不利益取扱い及び組合の組織・運営に対する支配介入に当たるとして、救済が申し立てられた事案である。
3 東京都労委は、労組法7条1号及び3号に該当すると判断し、会社に対し、①集荷業務量の減少により減少した賃金差額相当額の支払、②文書の交付及び掲示を命じた。
4 会社は、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、本件申立てを棄却した。
5 会社はこれを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、会社の請求を棄却した。
6 会社はこれを不服として、東京高裁に控訴したところ、同高裁は、会社の控訴を棄却した。
|
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は控訴人の負担とする。
|
判決の要旨 |
1 当裁判所も、会社の請求は理由がないと判断する。その理由は、後記2で控訴理由に対する判断を示すほかは、原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1から3までに記載のとおりであるから、これを引用する。
2 控訴理由に対する判断
⑴ 会社は、本件拒否闘争は、賃金の増額につながりにくい残業の回避を目的とするものであって、本件賃金体系の改定による時間外手当の増額は少なくとも主たる目的ではないと主張する。
しかし、組合は、広島分会の結成後、一貫して本件賃金体系の改定を求めていたことや、会社に対し、本件拒否闘争が開始される前にされた団体交渉において集荷残業に係る残業代の支払要求をしたところ、当該要求は本件賃金体系が是正されることを前提とするものであったことなど、本件拒否闘争は、本件賃金体系の改定による時間外手当の増額を目的とするものであったと認めるのが相当である。
したがって、会社の上記主張は採用することができない。
⑵ 会社は、仮に、本件拒否闘争の目的が本件賃金体系の改定による時間外手当の増額にあったとしても、本件拒否闘争は、要求実現型ストライキに該当するものであり、少なくともその要素を多分に含むものであるから、争議行為としての正当性が認められないと主張する。
しかし、組合の要求事項は、本件賃金体系の改定による時間外手当の増額であり、争議行為の内容は、一定の残業を拒否する残業拒否闘争であるから、本件拒否闘争をもって、要求を自力執行の形で実現することを目的として行われる争議行為ということはできない。
したがって、要求実現型ストライキの適法性を論ずるまでもなく、会社の上記主張は採用することができない。
⑶ 会社は、本件拒否闘争は、単純な残業の拒否ではなく、組合が会社に代わって選択的に残業指示権を行使するに等しいものであり、団体交渉によることなく自らの目的を達成しようとするものであって、争議権を濫用するものとして違法であると主張する。
しかし、会社の上記主張は、本件拒否闘争が一定の残業を拒否するという形をとっているところ、その態様が不当であることをいうものと解されるが、会社は、本件拒否闘争の対象を把握することは容易であったと認められるのであるから、本件拒否闘争のような残業の一部拒否をもって、争議権の濫用に当たるということはできない。
したがって、会社の上記主張は採用することはできない。
3 結語
原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却する。
|
その他 |
|