概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成29年(不再)第61号
長澤運輸不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
Y1株式会社(会社) |
再審査被申立人 |
X1労働組合X2支部(組合) |
命令年月日 |
令和元年7月3日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、 会社が、 定年退職後再雇用者の労働条件や賃上げ等を議題とする組合との団体交渉(「本件団交」)において、代表取締役を出席させず、資料を提示して説明しなかったことが不当労働行為であるとして、 救済申立てがあった事案である。
2 初審東京都労委は、本件団交における会社の対応が労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、 会社に対し、 ①団体交渉に代表取締役が出席し、 又は代表取締役が出席できない場合はその合理的な理由を説明して実質的な権限を十分に付与した者を出席させた上で、 自らの主張の裏付けとなる資料を提示して具体的な説明を行うなどして誠実に応じること、②文書交付及び③履行報告を命じたところ、会社は、 これを不服として、再審査を申し立てた。
3 中労委は、主文を変更し、その余の請求を棄却した。 |
命令主文 |
Ⅰ 初審命令主文を次のとおり変更する。
1 再審査申立人Y1株式会社は、再審査被申立人X1労働組合X2支部が申し入れた賃上げ等を議題とする団体交渉において、代表取締役又は代表取締役に準ずる実質的な交渉権限を付与した者を出席させ、自らの主張の裏付けとなる資料を提示して具体的な説明を行うなどして誠実に応じなければならない。
2 再審査申立人Y1株式会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を再審査被申立人X1労働組合X2支部に交付しなければならない。
年 月 日
X1労働組合X2支部
執行委員長 A1 殿
Y1株式会社
代表取締役 B1
貴組合との間で、 平成27年3月24日、 同年4月21日及び同年7月9日に開催した定年退職後再雇用者の労働条件や賃上げ等を議題とする団体交渉における当社の対応は、 中央労働委員会において不当労働行為であると認定されました。 今後、 このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
Ⅱ その余の本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 団体交渉の出席者について
本件救済申立て以前に組合と会社間で成立した和解協定には、 「会社は、 組合に対して、 労働条件につき、 会社の代表者ないしこれに準ずる権限のある者を出席させて、労使の合意が図れるように、 交渉事項につき必要な経営に関する資料を提出するなどして、誠実に団体交渉を行うことを約束する」 との条項があった (「前件和解条項」)。会社は、 本件団交において、 代表取締役を出席させず営業所長及び弁護士を出席させて対応しているが、 営業所長は、 組合の質問や要求に対し、 会社の判断を一方的に伝えるだけで、 その具体的な理由や根拠の説明をせず、 即答を避けて曖昧な説明を繰り返しており、 しかも、 営業所長と弁護士とで回答内容が異なっていることが多々見受けられ、 会社が組合との団体交渉に臨む前に十分な検討を行っていたのか疑われるところである。殊に、 次回団体交渉期日の調整については、代表者に準ずる実質的な交渉権限を有する者であれば、 団体交渉の場で決定することができるはずの事項であるのに、 この決定さえもしていない。
本件団交における営業所長及び弁護士の上記対応をみれば、 会社が同人らに実質的な交渉権限を付与していたとは認め難く、会社の対応は、前件和解条項に反するものであり、 かつ、 不誠実な団体交渉であったというべきである。
(2) 資料の提示について
会社は、 本件団交において、 組合から資料の提示や説明を求められても、 資料の提出の必要がないというのであればその論拠を示して反論すべきであるのに、 世間水準であるなどと抽象的に述べるだけで、 資料の提示を一切していない。 このような会社の対応は、前件和解条項に反するものであり、かつ、会社は、定年退職後再雇用者の労働条件や賃上げ等という基本的労働条件について、 会社の主張を組合に理解させ、納得させるために必要な経営に関する資料を提出して、見解の対立を解消させることを目指して誠実に団体交渉を行ったとは認められない。
(3) 救済方法について
定年退職後再雇用者の労働条件に関しては組合と会社との間で和解が成立していることが認められる。また、上記不当労働行為に対する救済方法としては、今後の賃金交渉等の団体交渉において、 前件和解条項に沿った救済方法とするのが相当である。
以上のとおりであるので、 初審命令主文を主文のとおり変更する。 |
掲載文献 |
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