労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁令和2年(行コ)第130号
長澤運輸不当労働行為救済命令取消請求控訴事件  
控訴人  X株式会社(「会社」)  
被控訴人  国(処分行政庁 中央労働委員会)  
同補助参加人  Z支部(「組合」)  
判決年月日  令和3年1月28日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、定年退職後再雇用者の労働条件や賃上げ等を議題とする組合との団体交渉(本件団交)において、代表取締役を出席させず、資料を提示して説明しなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 東京都労委は、本件団交における会社の対応が労組法7条2号に該当する不当労働行為であるとして、会社に対し、①団体交渉に代表取締役が出席し、又は代表取締役が出席できない場合はその合理的な理由を説明して実質的な権限を十分に付与した者を出席させた上で、自らの主張の裏付けとなる資料を提示して具体的な説明を行うなどして誠実に応じること、②文書交付、③履行報告を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てたが、中労委は、主文を変更し、その余の請求を棄却した。
3 会社は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を棄却した。
4 会社は、これを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は、会社の控訴を棄却した。  
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(補助参加によって生じた費用も含む。)は控訴人の負担とする。  
判決の要旨  1 当裁判所も、会社の請求は理由がないと判断するものであり、その理由は、原判決を一部補正し、2のとおり当審における会社の主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審における会社の主張に対する判断
(1)交渉担当者が実質的な交渉権限を有していたか否かは、形式的な交渉権限の有無だけではなく、実際の団体交渉における具体的な言動を踏まえて、実質的な交渉権限を有する者としての対応を行ったか否かを事柄の実質に即して検討すべきであるところ、本件団交におけるB2所長及びB1弁護士の具体的対応をみると、定年後再雇用者の労働条件の見直しをやめた理由や経営資料を提示しない理由について、具体的な理由を挙げて会社の判断を説明することなく、具体的な理由や中身に触れることのないまま即答を避ける態度に終始し、会社の判断である旨や説明するつもりがない旨の回答を繰り返したことに加え、資料の提示等の要否につき、B2所長とB1弁護士の意見が必ずしも一致していなかったことも考慮すると、本件団交におけるB2所長及びB1弁護士の対応は、定年後再雇用者の労働条件の見直しをやめた理由や経営資料を提示しない理由について、会社の見解の根拠を具体的に示して会社の方針や判断を説明したものとは認められず、次回期日の調整や決定について具体的な理由を説明することもなく頑なに拒否し続けたことを含め、実質的な交渉権限を有する者としての対応を行ったものということはできないのであって、単にB2所長とB1弁護士が本件団交に至るまでの間に長年にわたって組合との団体交渉に出席してやり取りをしてきたという過去の経緯のみをもって、直ちにB2所長とB1弁護士が本件団交において実質的な交渉権限を有する者としての対応を行ったものとは認められないから、実質的交渉権限を有していなかったことはない旨の会社の主張は採用できない。
(2)組合が、会社の経営状況を把握した上で労働条件向上の余地を検討し協議するために経営資料の提出を求めていたのに対し、会社は、資料の提出の必要がないと考える理由を具体的に説明することなく、世間水準であるなどと抽象的に述べるのみで資料の提示を一切行わなかったことなどから、団体交渉における議論が進展しない状況であったことが認められ、このような会社の対応は、自己の主張の論拠を組合に具体的に説明し、合意の形成に向けた真摯な努力をしていたものと評価することはできず、和解条項が定年後再雇用者の労働条件に関する団体交渉における従前の会社の対応が不誠実であるとして組合が申し立てた救済申立てについて都労委の関与により締結された和解協定の内容として定められたものであることにも照らすと、会社の上記の対応は、交渉事項につき必要な経営に関する資料を提出するなどして誠実に団体交渉を行うことを約束する旨の和解条項に反する不誠実なものというべきであって、B2所長及びB1弁護士が過去の団体交渉において本件団交における説明と同様の説明を繰り返していたことをもって、会社が和解条項の趣旨及び内容に則した団体交渉における誠実交渉義務を尽くしたものとは認められないから、誠実な対応をした旨の会社の主張は採用できない。
3 結論
 以上によれば、会社の請求は理由がないから、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却する。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成27年(不)第100号 全部救済 平成29年11月7日
中労委平成29年(不再)第61号 一部変更 令和元年7月3日
東京地裁令和元年(行ウ)第444号 棄却 令和2年6月4日
 
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