労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成27 年(不再)第13号
ファミリーマート不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y会社 
再審査被申立人  X組合 
命令年月日  平成31年2月6日 
命令区分  取消、棄却 
重要度   
事件概要  本件は、会社とフランチャイズ契約を締結する加盟者を主な構成員とする組合が、「再契約の可否に関する具体的基準」を議題とする団体交渉を申し入れた(「本件団体交渉申入れ」)ところ、会社がこれに応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済申し立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、会社に対し、団体交渉を行うこと等を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  初審命令を取り消し、本件救済申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 加盟者の労働組合法上の労働者性について
ア 労働組合法上の労働者性の判断枠組み
(ア) 労務供給関係にある者の労働組合法上の労働者性は、以下のように解されてきている。
a 労務の供給が業務委託等の労働契約以外の契約形式によってなされる者であっても、実質的に、①当該労務供給を行う者たちが、相手方の事業活動に不可欠な労働力として恒常的に労務供給を行うなど、いわば相手方の事業組織に組み入れられているといえるか、②当該労務供給契約の全部又は重要部分が、相手方により一方的・定型的に決定されているか、③当該労務供給者への報酬が当該労務供給に対する対価ないし同対価に類似するものとみることができるか、という判断要素に照らし、団体交渉の保護を及ぼすべき必要性と適切性が認められる場合には、当該労務供給者は、労働組合法上、「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する」労働者に当たるとみるべきである。
b 上記a①の「事業組織への組入れ」の判断に関しては、補充的に、(a)当該労務供給者が相手方からの個別の業務の依頼に応ずべき関係にあるか、(b)当該労務供給者が労務供給の日時・場所について拘束を受け、労務供給の態様についても、相手方の指示ないし広い意味での指揮監督に従って業務に従事しているか、(c)当該労務供給者が相手方に対して専属的に労務を供給しているか、といった要素も考慮されている。
c 他方、当該労務供給者が、自己の独立した経営判断でその業務を差配すること等により利得する機会を恒常的に有するなど、事業者性が顕著である場合には、労働組合法上の労働者性は否定されることとなる。
(イ) 本件フランチャイズ契約の規定だけをみれば、会社と加盟者の関係は、フランチャイズ・システムの提供事業者と、それを利用して店舗を経営する小売事業者との関係にすぎないのであって、加盟者が会社に対して労務を供給する関係にあるとはいえない。そのため、本件においては、労務供給関係にある者について示されてきた、上記(ア)の労働組合法上の労働者性の判断要素は適用されないのではないかが問題となる。
 しかしながら、本件においては、①本件フランチャイズ契約の規定は、会社により一方的・定型的に定められたものであり、加盟者が個別交渉により変更する余地はないこと、②加盟者は、会社により一方的・定型的に定められた契約の下で、加盟店の経営に当たり会社の助言・指導等を受けており、しかも多くの場合、店長として自らの店舗において相当時間稼働していること、③加盟店は、Yのイメージに基づく内外装や看板、ユニフォームなどの外観からすると、会社を本部とするYチェーンの一店舗となっているようにみえること、④会社は、フランチャイズ・チェーンの本部として、独自の経営戦略に基づく出店計画や商品開発など、加盟者への経営支援にとどまらない事業活動も行い、自らの収益を拡大するために加盟者の活動を利用する側面があることが認められる。これらの事情からすると、会社と加盟者の関係を実質的にみた場合、加盟者自身が、会社の事業のために労務を供給していると評価できる可能性がないとはいえない。
 したがって、本件においても、フランチャイズ関係の特質も踏まえつつ、上記(ア)の要素を用いて判断することとし、会社と加盟者の関係について労務供給関係と評価できる実態があるかという点も含めて検討することが必要である。
イ 事業組織への組入れ
 本件においては、加盟者は小売事業者として、自ら資金を調達するとともに事業の費用を負担しており、また、損失や利益の帰属主体となり、自らの判断で従業員の雇用や人事管理等を行うことで他人労働力等を活用し、自ら選択した場所でコンビニエンスストアの経営を行っているのであって、資金の管理、商品の仕入れ及び営業日・営業時間について一定の制約はあるものの、なお経営者として相当の裁量を有する独立した小売事業者としての性格を失っていないものである。
 他方で、会社は、加盟店の運営に関し、研修や評価の制度等を設け、Yチェーンとして会社と一体のものと認識されるような外部への表示を加盟店に求めているが、これらは、加盟者の事業活動としての店舗運営への制約としての面があるとしても、加盟者が会社の事業のための労働力としてその組織に組み入れられていることを根拠付けるものとはいえない。次に、加盟者は、会社から時間的・場所的拘束を受けて労務を供給しているとはいえない上、店舗において店舗運営業務に従事する際には、実際上マニュアルに従い、スーパーバイザーの助言・指導を受けてはいるものの、本件フランチャイズ契約に違反する行為に対するものを除いては、これらに拘束力があるとはいえず、それにより店舗での業務遂行が事実上制約を受ける面があるとしても、かかる制約は加盟者の事業活動としての店舗運営への制約とみるべきものであり、加盟者は広い意味でも会社の指揮監督の下で労務を供給しているとはいえない。そのほか、加盟者は、コンビニエンスストアの経営という面に関する限りでは会社に対する専属性はあるが、本件においては、そのことを事業組織への組入れの判断において重視すべきではない。これらのことを総合考慮すると、加盟者は、会社の事業活動に不可欠な労働力として、会社の事業組織に組み入れられていると評価することはできない。
ウ 契約内容の一方的・定型的決定
 本件フランチャイズ契約の内容は、会社により一方的かつ定型的に決定されているとみるのが相当である。ただし、前述したとおり、加盟者は独立した小売事業者であることからすると、本件フランチャイズ契約は、加盟者の労務供給や労働条件というよりは、加盟者による店舗経営という事業活動の態様について規定しているとみるのが相当であり、会社がその内容を一方的に決定していることは、会社と加盟者の間での事業者としての交渉力の格差を示すものであるとしても、加盟者の労働組合法上の労働者性を根拠付けるものとはいえない。
エ 報酬の労務対価性
 加盟者が会社から受領する金員については、本件フランチャイズ契約の主旨や、加盟者と会社の関係の実態を踏まえると、加盟者の労務供給に対する報酬としての性格を有するものと評価する前提を欠くというべきである。また、当該金員の性格をみても報酬の労務対価性を肯定することはできない。したがって、加盟者が会社から労務供給の対価として報酬を受け取っているということはできない。
オ 顕著な事業者性
 加盟者は、独立した小売事業者であるところ、自身の小売事業の経営全体に関し、法人化、契約形態、店舗数等に関する経営判断、また、日々の商品の仕入れの工夫や経費の支出等に関する判断や業務の差配によって、恒常的に独立した経営判断により利得する機会を有しているとともに、自らの行う小売事業の費用を負担し、その損失や利益の帰属主体となり、補助的な範囲のものにとどまらない他人労働力等を活用して、自らリスクを引き受けて事業を行っているのであって、顕著な事業者性を備えているということができる。
カ 結論
 加盟者は、独立した小売事業者であって、会社の事業の遂行に不可欠な労働力として会社の事業組織に組み入れられ、労働契約に類する契約によって労務を供給しているとはいえない。さらに、加盟者は、会社から労務供給の対価として報酬を受け取っているということはできず、他方で、加盟者の事業者性は顕著である。以上を総合考慮すると、本件加盟者は、使用者との交渉上の対等性を確保するために労働組合法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者として、会社との関係において労働組合法上の労働者に当たると評価することはできない。
2 不当労働行為の成否について
 本件加盟者は、労働組合法上の労働者には当たらないことからすれば、会社が本件団体交渉申入れに応じなかったことは、労働組合法第7条第2号の団体交渉拒否には当たらない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成24年(不)第96号 全部救済 平成27年3月17日
東京地裁令和元年(行ウ)第459号 棄却 令和5年5月25日
 
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