労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成28年(不再)第12号
福岡教育大学不当労働行為再審査事件 
再審査申立人   法人 
再審査被申立人   組合 
命令年月日  平成29年3月1日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 本件は、法人が、① A1ら組合員が行ったビラ配布(「本件ビラ配布」)を信用失墜行為であるなどと発言したこと(「本件学長発言」)及び同発言を法人のウェブサイト(「公式ウェブサイト」) に掲載したこと、② A1を大学院教育学研究科長(「研究科長」)に任命しなかったこと、③ A2を教育研究評議会評議員(「評議員」)に指名しなかったこと、④ A2が主任を務める講座について、学長が自ら教員人事ヒアリングを行わず他の理事に行わせたこと等が不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審福岡県労委は、上記①ないし④は不当労働行為に当たると判断し、法人に対し、公式ウェブサイト掲載文書の一部削除、 文書手交及び学内イントラネットへの掲示を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、法人がこれを不服として再審査を申し 立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件学長発言及び同発言を公式ウェブサイトへ掲載したことは労 組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか
 本件学長発言で言及されている本件ビラ配布は、執行委員会で機関決定の上、実施されたものであり、記載内容や表現ぶりにお いても穏当なものというべきで、配布の際も特段の混乱があったともうかがわれないことなどから、正当な組合活動であるといえ る。そして、学長が本件ビラ配布を信用失墜行為であるなど
と発言した上、教育学部長と研究科長に今回の事案にどう対応するのか文書で提出するよう命じていることは、本件ビラ配布を 行った組合員に対し、何らかの不利益を与える可能性を示唆したものとみることができる。よって、本件学長発言及び同発言を公 式ウェブサイトに掲載したことは、組合員の組合活動を萎縮させ組合の弱体化をはかるものであり、労組法第7条第3号の不当労 働行為に該当する。
2 A1を研究科長に任命しなかったことは労組法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に該当するか
 法人は、A1を研究科長に任命できない理由として、A1が本件ビラ配布に参加したことを挙げるが、前記1のとおり,本件ビ ラ配布は正当な組合活動である。そうすると、法人は、A1が正当な組合活動を行ったことの故をもって、A1を研究科長に任命 しなかったものというほかなく、これによりA1は、職務上、経済上の不利益を被ったものといえる。よって、法人がA1を研究 科長に任命しなかったことは、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たり、また、組合活動を萎縮させて組合の弱体化をはかる ものであるから、同条第3号の不当労働行為にも当たる。
3 A2を評議員に指名しなかったことは労組法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に該当するか
 法人は、A2が法人を被告とする未払賃金請求訴訟(「本件訴訟」)の原告であることを理由にA2を評議員に指名することを 拒んでいるが、本件訴訟は、組合の臨時総会で決定されて組合が全面的に支援するもので、A2は組合書記長としての立場から原 告となったものであり、訴訟の対象が賃金の減額という基本的な労働条件に関わるものであることも考慮すれば、本件訴訟の提起 やその訴訟活動は正当な組合活動といえ、法人も本件訴訟の提起等が組合活動の一環であると認識していたことは明らかである。 そうすると、法人は、A2が正当な組合活動を行ったことを理由として、A2を評議員に指名しなかったものというほかなく、こ れは、A2の講座主任としての影響力等の低下を招く不利益な取扱いといえる。よって、法人がA2を評議員に指名しなかったこ とは、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たり、また、組合活動を萎縮させて組合の弱体化をはかるものであるから、同条第 3号の不当労働行為にも当たる。
4 A2が主任を務める講座について、学長がヒアリングを行わず、他の理事に行わせたことは労組法第7条第1号及び同条第3 号の不当労働行為に該当するか
 法人は、A2が主任を務める講座の教員人事ヒアリングを学長が行わなかった理由について、A2が本件訴訟の原告であるため と説明しているが、前記3のとおり、本件訴訟は正当な組合活動であり、本件訴訟の提起等が組合活動の一環であることを法人が 認識していたことも明らかである。 そうすると、上記ヒアリングを学長が行わず、他の理事に行わせたのは、A2の正当な組合活動を理由とするものというほかなく、これはA2の講座主任としての影響力等の低下 を招く不利益な取扱いといえる。よって、上記ヒアリングを学長自身が行わず、他の理事に行わせたことは、労組法第7条第1号 の不当労働行為に当たり、また、組合活動を萎縮させて組合の弱体化をはかるものであるから、同条第3号の不当労働行為にも当 たる。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡県労委平成26年(不)第10号 一部救済 平成28年1月29日
東京地裁平成29年(行ウ)第167号 棄却 平成29年12月13日
東京高裁平成30年(行コ)第24号 棄却 平成30年6月28日
最高裁平成30年(行ヒ)第382号 上告不受理 平成31年1月29日
 
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