労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  福岡労委平成26年(不)第10号
福岡教育大学不当労働行為審査事件 
申立人  X組合 
被申立人  Y法人 
命令年月日  平成28年1月29日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   ①被申立人法人が、その運営する大学の教授である組合員A1を大学院教育学研究科長に任命しなかったこと、②法人が組合の書記長であるA2を教育研究評議会評議員に指名しなかったこと、③A2が主任を務める講座についての教員人事に関するヒアリングを学長が行わなかったこと、④平成26年度給与改定及び27年度以降の給与制度改定に係る団交要求に対する法人の対応、⑤学長が全教職員向け説明会において、A1らが行ったビラ配布を信用失墜行為であるなどとし、教育学部長等にビラ配布への対応や見解を文書で提出するよう命じた旨発言したこと及び法人が学長のこの発言の内容を大学公式ウェブサイトに掲載したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 福岡県労委は法人に対し、1 上記⑤のウェブサイトに掲載中の文書の修正等、2 文書の手交・掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y法人は、法人のウェブサイトに掲載中の「Y1大学のミッションの公表にあたって」(別紙)と題する文書から、同文書2ページ16行目「なぜなら、先般」から同ページ29行目「名誉の回復に取り組みます。」までの文章を削除するとともに、今後同文章を掲載してはならない。
2 被申立人Y法人は、本命令書写しの交付の日から10日以内に、次の文書を申立人X組合に手交するとともに、学内イントラネット「ガルーン」のトップページ等見やすい場所に、14日間掲載しなければならない。
平成 年 月 日
 X組合
  執行委員長 A 殿
Y法人
学長 B
  当法人が行った下記の行為は、福岡県労働委員会によって労働組合法第7条に該当する不当労働行為と認定され、また、下記4の発言内容を、法人のウェブサイトから削除するよう命じられました。
  今後このようなことを行わないよう留意します。
 1 平成26年4月1日、法人がA1組合員を大学院教育学研究科長に任命しなかったこと。
 2 法人が、A2組合員を平成26年度教育研究評議会評議員に指名しなかったこと。
 3 平成26年4月9日、B学長が、A2組合員が講座主任を務める国際共生教育講座の教員人事に関するヒアリングを直接行わなかったこと。
 4 平成25年12月20日、B学長が、全教職員向け説明会において、組合が行ったビラ配布を信用失墜行為であるなどと批判し、教育学部長らに対し、ビラ配布への対応や見解を文書で提出するよう命じた旨発言したこと、及び法人が、その発言内容を法人のウェブサイトに掲載したこと。

3 その余の申立ては棄却する。 
判断の要旨  1 組合員A1に対する研究科長への任命拒否について
 被申立人法人がA1を研究科長に任命しなかったのは、同人も参加して行われた本件ビラ配布を嫌悪して法人が行った謝罪要求に同人が応じなかったことによるものであり、本件ビラ配布が労働組合の正当な活動であれば、謝罪要求が不当労働行為といわざるを得ないものであって、謝罪要求に応じないことを理由に「不利益な取扱い」を行うことは不当労働行為になると考えられる。
 本件ビラの内容は全体として事実を伝えるものであり、特に問題があるとはいえない。本件ビラは、平成25年11月の学長選考が教職員による意向投票とは異なる結果となったこと及びその理由が明らかにされていないことについて問題があるとして、申立人組合が学長選考会議の再審議を法人に求めていることを外部に説明するとともに、そのような組合の活動への支援を呼びかけるものである。学長選考は間接的にではあっても、教職員の労働条件にも影響を及ぼすことがあることを考え合わせると、本件ビラ配布は労働組合の正当な活動の範囲内にあるものと考えられる。
 したがって、法人がA1を研究科長に任命しなかったことは、同人の正当な組合活動を理由としてなされた「不利益な取扱い」であり、労組法7条1号の不当労働行為に該当する。
2 組合の書記長A2の評議員への指名拒否について
 法人は指名拒否の理由を、A2が本件訴訟の原告であるからだとしている。本件訴訟は、法人が国家公務員に準じて実施した教職員給与の減額措置に対し、A2ら4名がその減額分を未払賃金として請求すべく提起したものである。
 しかし、評議会は教育研究に関する重要事項の審議を行う機関であって経営に関する事項は審議の対象としていないから、A2が評議員となることに問題はない。したがって、法人は、同人が書記長という重要な地位にあり、正当な組合活動を行ったことを理由として評議員に任命しないという「不利益な取扱い」を行ったものといわざるを得ない。
 以上のとおりであるから、本件指名拒否は、労組法7条1号に該当する不当労働行為であり、また、組合活動に対する嫌悪の意思を示すことによって組合活動を萎縮させるものであるから、同条3号の不当労働行為にも該当する。
3 学長がA2との間で教員人事に関するヒアリングを行わなかったことについて
 法人は、学長がヒアリングを行わなかった理由を、同人に対する批判的見解を有するA2との間で教員人事に関しない論争が生じ、紛糾する可能性があるからだとする。
 しかし、法人の理事B1がA2と面談を行い、特段の紛糾もなく実施されていることからすると、A2とのヒアリングが紛糾するという具体的危険があったとはいえない。また、仮に教員人事に関しない論争が生じた場合はその時点で中止するなどの対応も考えられる。
 こうしたことからすると、学長がA2とのヒアリングに出席しなかったことに相当な理由があるとはいい難く、結局、その理由はA2が書記長という組合の中心的な地位にあって積極的に組合活動を行っているということだと考えられる。A2の評議員への指名を拒否したことも併せ考えると、同人の正当な組合活動を理由として同人を不利益に取り扱ったものと判断されるのであり、学長が同人とのヒアリングを行わなかったことは労組法7条1号に該当する不当労働行為である。また、学長の嫌悪意思を示すことによって組合活動を萎縮させるものであり、同条3号の不当労働行為にも該当する。
4 団交要求に対する対応について
 組合は、本件給与改定案について法人が組合との協議を踏まえて修正、変更する意思を全く持たず、形だけの団交を行っている旨、組合が要求した資料のうち一部のものしか提示しなかったことが不誠実である旨主張する。
 しかし、認定した事実によれば、3回の団交における法人の交渉態度は不誠実であるとまでは認められず、労組法7条2号の不当労働行為には該当しない。
5 学長の発言及びその大学公式ウェブサイトへの掲載について
 前記1判断のとおり、本件ビラ配布は正当な組合活動であると判断されるものであって、学長がこれを規制の対象とするかのような発言を説明会に参加した教職員に向けて行い、さらに、法人がその発言内容を大学公式ウェブサイトに掲載したことは、組合員の正当な組合活動を萎縮させるものであったといわざるを得ない。
 したがって、本件学長発言及び大学公式ウェブサイトへの掲示は、組合員である教職員及びその他の教職員に対し、このような組合活動を行った者に対して何らかの不利益な措置を課す可能性を強く示唆することで、組合活動を萎縮させようとする学長の強い意思を示すものであって、使用者の言論の自由の範囲を超えるものとして、組合活動に対する支配介入となるものであって、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成28年(不再)第12号 棄却 平成29年3月1日
東京地裁平成29年(行ウ)第167号 棄却 平成29年12月13日
 
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