労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁平成30年(行コ)第24号
福岡教育大学不当労働行為救済命令取消請求控訴事件
控訴人  国立大学法人X大学(「大学」) 
被控訴人  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  Z組合(「組合」) 
判決年月日  平成30年6月28日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、大学が、① A1教授ら組合員が行ったビラ配布(「本件ビラ配布」)を信用失墜行為であるなどと発言したこと(「本件学長発言」)及び同発言を法人のウェブサイトに掲載したこと(「本件掲載」)、② A1教授を大学院教育学研究科長(「研究科長」)に任命しなかったこと(「本件任命拒否」)、③ A2教授を教育研究評議会評議員(「評議員」)に指名しなかったこと(「本件指名拒否」)、④ A2教授が主任を務める国際講座について、学長が自ら教員人事ヒアリング(「本件ヒアリング」)を行わず他の理事に行わせたこと等が不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審福岡県労委は、上記①ないし④は不当労働行為に当たると判断し、大学に対し、ウェブサイト上の本件掲載文書の一部削除、文書手交及び学内イントラネットへの掲示を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、大学はこれを不服として、中労委に対して再審査を申し立てた。
3 中労委は、初審命令を維持し、本件再審査申立てを棄却したところ、大学はこれを不服として、東京地裁に再審査命令の取消しを求める行政訴訟を提起したが、同地裁は、大学の請求は理由がないことから、これを棄却した。
4 大学は、これを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は、大学の請求は理由がないことから、これを棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  当裁判所の判断
1 当裁判所も,原審と同様,①本件学長発言及び本件掲載,②本件任命拒否,③本件指名拒否並びに④B1学長が本件ヒアリングに対応しなかったことは,いずれも不当労働行為に該当するものと認められるから,大学の本件請求は理由がなく,本件控訴は棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり当審における大学の主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載するとおりである。
2 当審における大学の追加主張に対する判断
(1) 争点1について
本件学長発言及び本件掲載の内容,並びに本件ビラ配布から本件学長発言及び本件掲載がされるまでの事実経過に照らせば,本件学長発言及び本件掲載は,本件ビラ配布を公然と非難した上で,同配布を行った関係者に対し,労働関係上の制裁ないし不利益措置を執ることをも示唆し,これによって,本件ビラ配布をはじめとする本件組合の活動や運営を妨害し,萎縮させるなどして,本件組合を弱体化させるおそれを生じさせていることが明らかであるから,使用者が享有する言論の自由の範疇を超えるものであって,不当労働行為に当たるというべきである。
  大学,学長選考については,学長選考会議による選考方式に改められたにもかかわらず,本件組合は,この理を理解せず,批判をしていると非難するが,本件ビラは,学長選考会議による選考方式という制度そのものを批判するというよりも,意向投票において最多票を獲得できなかった候補者を学長候補者として決定した学長選考会議の選考結果を批判し,再審議を求めるものであるから,大学の上記非難は当たらない。また,学長選考会議が,意向投票において最多票を獲得できなかった候補者を学長候補者として決定したこと自体は,違法とはいえないが,そのことをもって,学長選考会議に再考を促すように働きかけることなどへの理解と支援を求める内容の本件ビラを配布することが正当な組合活動に当たらないとすることはできない。
(2) 争点2及び3について
ア 大学は,本件任命拒否及び本件指名拒否は,B1学長の選出の正当性自体に異を唱え,学長としての立場を否定するA1教授や,B1学長の大学経営に対する批判を常日頃より展開していたA2教授の個人的要因によるものであって,組合活動の故をもって行われたものではないから,本件任命拒否及び本件指名拒否が不当労働行為に当たらない旨主張する。
イ しかし,A1教授が本件ビラ配布を行ったことをもって研究科長としての適格性を欠くとはいえないこと,B1学長は,A1教授に対し,本件ビラ配布を行ったことにつき謝罪すること等を約束しない限り,研究科長の任命を拒否する旨の言動に出ていること,その他認定に係る事実関係からすれば,本件任命拒否は,A1教授の個人的要因によるものではなく,組合活動の故をもってされたことが明らかである。
  また,A2教授が,過去に,学内の会議を混乱させ,会議を破壊したことを認めることはできないし,B1学長の大学経営方針等に対する批判をすること自体が禁じられる合理的な理由もないこと,その他認定に係る事実関係からすれば,本件指名拒否も,A2教授の個人的要因によるものではなく,組合活動の故をもってされたことが明らかである。大学は,組合員(元組合員)であっても,評議員に指名された実例があるとして,組合員あるいは組合活動の故をもって指名拒否したものではないというが,B2理事は,B1学長の意向を受けて,A2教授が別件訴訟(本件組合の全面的支援のもとその執行部の組合らが提起した未払賃金請求訴訟)の原告であることを理由として,指名拒否を通告しているのであるから,そのような実例があったとしても,本件指名拒否が不当労働行為に当たることは明らかである。
(3) 争点4について
ア 大学は,① 本件ヒアリングが重要な手続であるとしても,また,「通例」として学長がヒアリングを行っていたとしても,学長がそれを自ら実施する必要性は乏しく,B1学長がA2教授とのヒアリングを遠慮したことについて合理的理由があるか否かは,A2教授の受けたとされる不利益との相関関係で判断されるべきであるところ,② B1学長が自ら対応しなかったことによるA2教授の不利益は,一般に不当労働行為として問題となる人事上の不利益や待遇面の不利益と比較して,極めて微々たるものにとどまるから,B1学長がA2教授との間で無用な論争となることを心配したといった程度でも十分に合理的理由があるといえるとして,B1学長が本件ヒアリングに対応しなかったことが不当労働行為に当たらない旨主張する。
イ しかし,教員人事ヒアリングは,人事も含む講座運営に関する業務を所掌する地位にある各講座主任が,人事権を含む広範な権限を有する学長に対し,直接,当該講座に係る教員の採用,昇任等人事上の要望を伝える一方で,学長から経営上の事情等の情報を得ることができる貴重な機会であり,年1回しか行われないものであって,学長とは地位や権限に大きな差異のある理事による対応によって代替し得る性質のものではないから,B1学長が本件ヒアリングを拒否したことによって,A2教授は,講座における講座主任としての職務の遂行が妨げられるという大きな不利益を被ったものといえ,その不利益は,単に,同講座内外における同講座主任としての影響力が低下したにとどまるものではない。
したがって,B1学長が本件ヒアリングに対応しなかったことに合理的理由があるとは認められない。
(4) 大学は,以上のほかにも縷々主張するが,B1学長が,本件選考会議において本件意向調査で最多票を獲得できなかった同学長が学長候補者に選考されたことなどを批判するなどした本件組合あるいは組合員の活動を嫌悪し,支配介入,不利益取扱に及んだことは明らかであって,その主張には理由がない。
3 結論
  以上によれば,大学の本件請求を棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとする。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡労委平成26年(不)第10号 一部救済 平成28年1月29日
中労委平成28年(不再)第12号 棄却 平成29年3月1日
 
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