事件番号・通称事件名 |
中労委平成28年(不再)第9号
ダイシン物流不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人
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会社 |
再審査被申立人
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組合 |
命令年月日 |
平成29年2月1日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事案概要 |
1 本件は、会社が、①
団体交渉の開催期日を先延ばしにしたこと、② 組合に就業規則を示して説明を行わなかったこと、③
A組合員に係る平成26年6月以降の労働条件について説明を行わず、A組合員に係るパワーハラスメントに関してその具体的な調査内容を説明しなかったこと、④
A組合員の給与を減額し、配置転換等を行ったこと、⑤
A組合員の組合加入について批判を行ったことが、それぞれ不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審兵庫県労委は、会社が、組合に対し、就業規則の記載を確認する機会を付与することを命じるとともに、①
本件団体交渉の期日設定について誠実に対応しなかったこと、②
第2回団体交渉から第4回団体交渉までにおいて、就業規則を組合に提示しなかったこと、③
第3回団体交渉において、A組合員に係る平成26年6月以降の労働条件について説明しなかったこと、④
平成25年12月3日、A組合員に対して脱退勧奨を行ったことに関する文書交付を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社は、初審命令の救済部分を不服として、同部分
を取り消し、同部分に係る救済申立てを棄却するよう求めて、再審査を申し立てた。 |
命令主文の要旨(初審の主文を変更) |
本件団体交渉に係る期日の設定について、第1回団体交渉及び第2
回団体交渉における会社の対応を不誠実なものとした初審命令の判断は相当であるが、第3回団体交渉及び第4回団体交渉におけ
る会社の対応についても、これを不誠実なものとした初審命令の判断は相当とはいえないこと等から、初審命令主文の一部を変更
し、その余の再審査申立を棄却した。 |
判断の要旨 |
1 本件団体交渉に係る期日の設定についての会社の対応は、労働組
合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
(1)
第1回団体交渉に係る期日の設定について、会社が、A組合員に対する脱退勧奨を行った(下記4参照)ことにより、同人が組合から脱退すれば組合との団体交渉を回避できると
期待し、あえて組合との連絡を断っていたものと推認される経緯に照らすと、20日間にわたり組合との連絡を行っていなかった
会社の対応は、不誠実といわざるを得ず、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
(2)
第2回団体交渉に係る期日の設定について、会社が、第1回団体交渉終了後、パワーハラスメントに関する問題についての調査の実施状況等を踏まえた団体交渉に係る期日を連絡
すべきであったにもかかわらず、2か月近くにわたり組合と連絡を行わなかったのは、不誠実な対応といわざるを得ず、労働組合
法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
(3)
第3回団体交渉が、組合が要望した団体交渉の期日の最終日から起算して12日内に開催されたこと等からすれば、同団体交渉に係る期日の設定についての会社の対応は、直ちに
不誠実であったとまではいえない。
(4)
第4回団体交渉が、当初組合が要望した団体交渉の期日の最終日から起算して16日内に、また、再度組合が要望した団体交渉の期日の最終日から起算して4日内に開催されたこ
と等からすれば、同団体交渉に係る期日の設定についての会社の対応は、直ちに不誠実であったとまではいえない。
2 会社が、第2回団体交渉から第4回団体交渉までにおいて、組合に就業規則等の根拠を示して説明を行わなかったことは、労
働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
会社が、第2回団体交渉から第4回団体交渉までにおいて、義務的団交事項である協議事項に関し、A組合員に適用される就業
規則等を組合に示さず、また、組合からの質問等に対して、就業規則等の根拠を示して具体的に説明しようとしなかったことは、
不誠実といわざるを得ず、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
3 会社が、第3回団体交渉において、A組合員に係る平成26年6月以降の労働条件について組合に説明しなかったことは、労
働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
会社が、第3回団体交渉において、A組合員に係る平成26年6月以降の労働条件について組合に説明しなかったことは、不誠
実な対応といわざるを得ず、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
4 平成25年12月3日、B社長は、A組合員に対し、組合についての発言をしたか、発言をしたとする場合、その発言は、労
働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たるか。
平成25年12月3日のB社長の発言は、その全体を通してみれば、A組合員に対する組合からの脱退勧奨といわざるを得ず、
これは組合の運営やその活動を抑制するものであるから、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
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掲載文献 |
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