概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京高裁平成30年(行コ)第244号
不当労働行為に対する救済命令取消し請求控訴事件 |
控訴人 |
X株式会社(「会社」) |
被控訴人 |
国(処分行政庁・中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
Z労働組合(「組合」) |
判決年月日 |
平成30年11月7日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、①団体交渉の開催期日を先延ばしにしたこと、
②組合に就業規則を示して説明を行わなかったこと、③A1組合員に係る平成26年6月以降の労働条件について説明を行わず、
A1組合員に係るパワーハラスメントに関してその具体的な調査内容を説明しなかったこと、④A1組合員の給与を減額し、配置
転換等を行ったこと、⑤A1組合員の組合加入について批判を行ったこと等が、それぞれ不当労働行為であるとして、救済申立て
があった事件である。
2 初審兵庫県労委は、会社に対し、文書交付及び就業規則の記載を確認する機会を付与することを命じ、その余の申立てを棄却
したところ、会社は、初審命令の救済部分を不服として、再審査を申し立てた。
3 中労委は、初審命令主文の一部を変更し、その余の再審査申立てを棄却した。
4 会社はこれを不服として東京地裁に訴訟を提起したところ、同地裁は会社の請求を棄却した。
5 会社はこれを不服として東京高裁に控訴したところ、同高裁は同控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 当裁判所も,原判決と同様,会社の請求は理由がなく,棄却され
るべきものであると判断する。その理由は,当審における当事者の主張に対する判断を示すほかは,原判決の「事実及び理由」の
「第3
争点に対する判断」1ないし4(原判決12頁22行目から37頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
2 当審における当事者の主張に対する判断
(1)
会社は,B1社長の本件発言は,反組合的行為に該当せず,全体としてみれば単なる使用者の意思の表明にすぎない上,支配介入と評価されるときにはその旨の具体的意思をもっ
た行為が必要であるのに,原判決では,それらの検討及び認定がされていないなどと主張する。
しかしながら,本件発言は,B1社長という会社の代表者で,その人事につき権限を有する人物が,組合から団交の申入れが
されてから約1週間という時間的に近接した時期に,わざわざA1組合員と話す目的の下に同人の就業先を尋ねてきた際に,二人
きりになったところで,組合からの申入れで団交に対応しなければならなくなったことに対する不満及び批判等組合嫌悪の言動に
及んだ上で,社内組合への加入を勧誘し,団交の交渉事項である本件就業場所変更についての肯定的評価を述べ,脱退後の見返り
をほのめかしながら,脱退勧奨に及んだことからすれば,本件発言は,使用者であるB1社長が,組合の組合運営に対する干渉等
をするためにした,労働組合の自主性,独立性等を損なうおそれのある使用者の行為であると認められ,同人の単なる意見表明と
は解せないから,不当労働行為に当たると認められ,会社の前記主張は採用できない。
(2)
また,会社は,団交の期日の設定を遅らせるなどしたことはなく,組合に就業規則の提示をしなかったことや第3回団交で平成26年6月以降のA1組合員の労働条件を説明しな
かったことは,いずれも団体交渉拒否に該当しないなどと主張する。
しかしながら,第1及び第2回の団交期日の遅れはその経過等を踏まえた結果,不誠実な対応であり,就業規則の不提示や労
働条件を説明しなかったことも,その団交の交渉事項や当該時点の状況を踏まえて誠実に対応しておらず,それが労組法7条2号
にいう労働者の代表者と団体交渉することを拒むことに該当するものと認められ,それについての正当な事由を認めるに足りない
ことから,不当労働行為に該当するとするものであり,この点に関する会社の主張も採用できない。
3 その他,会社は種々主張するが,前記引用に係る原判決の認定,判断を左右するものはない。
4 結論
以上の事実によれば,会社の主張はいずれも理由がなく,その請求は棄却すべきである。よって,原判決は相当であり,本件
控訴は理由がないから,これを棄却する。 |
その他 |
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