労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  兵庫県労委平成26年(不)第7号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合 
被申立人  Y会社 
命令年月日  平成28年1月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   平成25年8月23日、被申立人会社の従業員A2は、会社のB2 部長に対し、B3次長からパワハラを受けているなどと述べ、同年10月3日、B2に、「病名 適応障害」などと記載された診 断書を提出した。同年11月25日、B2はA2の同年12月以降の就業場所をS課に変更する旨を同人に告げた。申立人組合は その翌日、会社に対し、A2の組合加入通知書及び団交申入書を送付した。
 本件は、①同年12月以降、4回にわたって行われた団交における会社の対応、②A2に適用される就業規則についての第4回 団交における会社の説明、③A2に係る上記のパワハラ問題に対する会社の対応、④会社が26年5月31日付けでA2に対し、 係長職を解職し、労働条件を変更したこと、⑤会社のB1社長のA2に対する発言は不当労働行為であるとして、救済申立てが あった事件である。
 兵庫県労委は会社に対し、1 組合に対し、就業規則の内容を確認する機会を付与すること、2 文書交付を命じ、その余の申 立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y会社は、申立人X組合に対し、本命令書写し交付の日 から1か月間、同社の就業規則を閲覧させるなどして、同就業規則の記載内容を確認する機会を付与しなければならない。
2 被申立人Y会社は、本命令書写し交付の日から7日以内に、下記文言を記載した文書を申立人X組合に交付しなければならな い。
平成  年  月  日
  X組合
   代表 A1 様
Y会社
代表取締役 B1
  Y会社がX組合に対して行った次に掲げる行為は、労働組合法第7条第2号又は第3号の不当労働行為に該当すると、兵庫県 労働委員会において認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないことを誓約します。
 1 団体交渉の期日設定について誠実に対応しなかったこと。
 2 第3回団体交渉においてA2組合員の平成26年6月以後の労働条件についての説明を拒否したこと。
 3 X組合に対し、就業規則を提示しなかったこと。
 4 平成25年12月3日、A2組合員に対し、脱退勧奨を行ったこと。

3 その余の申立ては棄却する。 
判断の要旨  1 団交における対応について
 団交の期日設定に関する被申立人会社の対応については、第3回団交の期日設定に際し無用な引き延ばしをしていたと評価でき ることなどからすると、誠意をもって対応したものとは認められない。
 申立人組合が団交において、組合員A2に適用される就業規則の提示を求めたのに対し、会社はA2のみに提示して閲覧及び筆 写を認め、組合への提示を拒否したが、これだけでは組合がA2の労働条件の変更の当否について十分な判断をすることが困難で あったといわざるを得ない。このような会社の対応には、組合と団交をして合意を達成しようとする真摯な姿勢をうかがうことが できず、不誠実な団交である。
 第3回団交は、平成26年6月以後のA2の労働条件等が議題であったところ、会社は組合から同人の労働条件について説明を 求められたにもかかわらず、これに応じていないのであるから、会社の対応は不誠実な団交である。
 したがって、これらの会社の対応は労組法7条2号に該当する。
2 A2に対する就業規則の適用に係る説明について
 組合は、会社がA2に適用される就業規則について、第3回団交と第4回団交とで異なる説明をしたことが不誠実な団交及び支 配介入に該当する旨主張する。しかし、第3回団交での会社の対応には問題がなかったとはいえないものの、会社のB2部長は、 第4回団交で前回団交における説明が認識不足であったことを認め、改めて説明している。こうした会社の対応を考慮すると、2 回の団交での説明が食い違ったことだけでは不誠実な団交であったとまでは認められない。
3 A2に係るパワハラ問題に対する対応について
 組合は、会社がA2の組合加入以前においてはパワハラの事実を認めていながら、組合がパワハラ問題を団交の議題に挙げたと ころ、調査もせず、これを放置したことが不利益取扱いに該当する旨主張する。しかし、会社は、第1回団交の後、関係する従業 員に面談して調査し、第2回団交で組合に報告している。したがって、会社の対応は組合員に対する不利益取扱いとは認められ ず、労組法7条1号に該当しない。
4 A2の係長職解職及び労働条件の変更について
 会社がA2は管理職としての責任を果たせていないと判断し、係長職を解職したことには合理的な理由がある。また、会社の B1社長はA2に対し、解職及び労働条件変更の提示を行うに当たり、その理由を説明している。他方、会社がA2の組合加入を 嫌悪して同人の係長職解職及び労働条件の変更を行ったと認めるに足る疎明はなく、それらが同人の組合加入の故に行われたとい うことはできない。したがって、A2の係長職解職及び労働条件の変更は、労組法7条1号及び同条3号に該当しない。
5 B1のA2に対する発言について
 組合が指摘するB1の発言は、A2の異動は組合加入を嫌悪したものだとする組合の抗議に対して、異動と組合加入は関係がな いことを説明するものにすぎず、この発言をもって組合活動に対する支配介入とまでいうことはできない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成28年(不再)第9号 一部変更 平成29年2月1日
東京地裁平成29年(行ウ)第123号 棄却 平成30年6月29日
大阪高裁平成30年(行コ)第244号 棄却 平成30年11月7日
最高裁平成31年(行ツ)第78号・平成31年 (行ヒ)第90号 上告棄却・上告不受理 令和元年6月7日
 
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