労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁平成29年(行ウ)第123号
ダイシン物流不当労働行為救済命令取消請求事件
原告  X株式会社(「会社」) 
被告  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被告補助参加人  Z労働組合(「組合」) 
判決年月日  平成30年6月29日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①団体交渉の開催期日を先延ばしにしたこと、②組合に就業規則を示して説明を行わなかったこと、③A1組合員に係る平成26年6月以降の労働条件について説明を行わず、A1組合員に係るパワーハラスメントに関してその具体的な調査内容を説明しなかったこと、④A1組合員の給与を減額し、配置転換等を行ったこと、⑤A1組合員の組合加入について批判を行ったこと等が、それぞれ不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審兵庫県労委は、会社に対し、文書交付及び就業規則の記載を確認する機会を付与することを命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社は、初審命令の救済部分を不服として、再審査を申し立てた。
3 中労委は、初審命令主文の一部を変更し、その余の再審査申立てを棄却した。
4 会社はこれを不服として東京地裁に訴訟を提起したところ、同地裁は会社の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告の負担とする。 
判決の要旨  1 争点1(B3社長のA1組合員に対する組合に関する発言が支配介入に当たるか否か)について
B3社長のA1組合員に対する発言(以下「本件発言」)の内容は、通常人の一般的な受け止め方からすれば、 ①第1回団交の申入れを受けて団交に対応しなければならなくなったこと、今後も団交が続いていくとそれに対応しなければならないことなどに対する不満、②社内組合への加入の勧誘、 ③組合を含む社外組合が金銭獲得を目的としたり、過激な活動をしたりすることに対する非難、 ④第1回団交の交渉事項である本件就業場所変更についての肯定的評価、⑤団交が会社の業務に支障を及ぼすことに対する懸念、⑥労働組合の組合活動は原告に対して悪影饗を与えかねないことに対する懸念、⑦社内組合に対する肯定的評価、⑧組合からの脱退勧奨、⑨A1組合員が組合を脱退した場合には会社による処遇上の配慮を示唆するものと理解することができ、これら発言内容それ自体からして組合嫌悪の意思が強く推認されるといわざるを得ない。加えて、本件発言行為の行為者は、会社社長という会社の代表者であり人事に権限を有する人物であること、本件発言がされた時期や状況としては、組合から団交の申入れがあってから時間的に近接し、A1組合員が就労した初日に一人でわざわざA1組合員と話す目的の下に同人の就業先を尋ね、その帰途車中二人きりになったところで、組合の活動に対する不満、懸念及び批判等組合嫌悪の言動に及んだ上で、社内組合への加入を勧誘し脱退後の見返りをほのめかしながら、脱退勧奨に及んだことを指摘することができる。これらの点や本件発言内容からすれば、本件発言は、組合員を脱退させることで組合を弱体化させて、予定されている第1回団交を阻止するなどの組合の運営・活動を妨害する効果を有するものであると評価することができる。このことは、実際に本件発言を受けたA1組合員がB3社長に対する罪悪感を吐露し、組合からの脱退を検討する旨述べていることからも首肯することができる。
したがって本件発言は労組法7条3号所定の支配介入に該当する。
2 争点2(第1回及び第2回の各団交期日設定に係る会社の対応が団体交渉拒否に当たるか否か)について
(1) 第1回団交について
組合は、平成25年11月26日頃、会社に対し、同年12月6日から13 日までの期間の団交開催を申し入れて、同月3日までに書面等の回答を求めていた。そして、同団交事項には本件就業場所変更が含まれていたところ、同変更に係る職務命令が同年11月25日に発令されて、同年12月頃に実施される予定であったことからして、本件就業場所変更の実施は切迫していたということができ、団交の早期実施の必要性が認められる。 
しかるに、会社は、同年11月27日、28日に組合に対して架電し、同年12月20日以降の期日を希望する、組合の提示する日程での開催は困難である旨を伝え、追ってFAXで連絡する旨述べるにとどまり、その後、第1回団交期日を通知しなかった。そして、同月18日に組合の督促を受け、組合に対して同月28日の期日を通知した。
以上の事情に照らせば、会社は、早期設定の必要が認められる団交の候補日につき、回答の期限を徒過した上、その後も催促されるまで何ら連絡をせず、結果として、当初の団交申入れから約20日以上を経過してからようやく同候補日を通知したということができ、候補日の通知だけであれば、その検討においてそれほど時間を要しないと考えられるし、仮に回答することができない事情があるとしても、そのことすら連絡していないことからすれば、かかる会社の対応は遅滞なく団交を実施することに向けた誠実な対応をしないことで団交を遅らせるものであるとの評価を免れない。
(2)第2回団交について
第1回団交の交渉結果によれば、会社及び組合は、会社が第2回団交までの間に本件パワハラ問題の調査を遂げた上で同団交時に報告することについて合意し、さらに、組合A2事務長が同団交期日を平成26年2月第1週ないし同月10日頃に設定する旨述べたのに対して会社B2部長は特段の異議を申し出ることなく、それを前提として第2回団交で本件パワハラ問題の調査結果を報告する旨述べていて、会社は組合が提示した同団交実施の目安となる期間の設定について何ら留保していないということができる。
そうすると、会社としては、第1回団交後速やかに、本件パワハラ問題の調査内容や方法等を検討した上で調査に係る期間等の予定を確定し、それと組合から示された上記期間を突き合わせて、第2回団交の候補日を決定し、参加人に対して通知するべきであった。しかるに、会社は、同年1月29日頃に組合から督促されるまで組合に対して第2回団交について連絡をすることもなく、同年2月3日頃に同団交の日程調整をして改めて連絡をすると回答しながら同月20日までその旨の通知をしなかったのであり、 第1回団交時(平成25年12月28日)から約2か月近くもの間、組合に対して第2回団交期日の通知をすることをせず、遅滞なく団交を実施することに向けた誠実な対応をする義務を怠ったということができ、かかる対応は団交を遅らせたものというほかはない。
(3) 以上によれば、会社は、第1回及び第2回の各団交期日の設定に関して誠実な対応を怠ったといえ、そのことにつき「正当な理由」も認められず、このような不誠実な交渉態度は、誠実交渉義務に反して、団体交渉することを正当な理由なく拒んだ不当労働行為(不誠実交渉・労組法7条2号)に該当する。
3 争点3(第2回団交から第4回団交までの間に会社が組合に対して就業規則を提示しなかったことが団体交渉拒否に当たるか否か)について
 第1回団交については事前の団交申入れで本件就業場所変更に伴うA1組合員の労働条件が交渉事項とされ、同団交においても同労働条件(賃金、就業時間、有給休暇取得等)及び業務の変更の有無、内容等について交渉されたところ、この交渉が終了したとみるべき事情もなく、これを第2回団交で取り上げないこととしたとみるべき事情も見当たらないばかりか、組合が第2回団交で会社に対して就業規則の提示を要求する直前にも、A1組合員の割増賃金について交渉されていたのであって、これらに照らせば、第2回団交では、第1回団交から引き続いて本件就業場所変更に伴うA1組合員の労働条件が交渉事項であったとみることができる。そして、かかる交渉事項は義務的団交事項に当たり、会社は、団交において誠実に交渉すべき義務を負うこととなる。ところで、企業における就業規則は、この労働条件を定型的に定める準則であり、所定の要件を充足する場合には労働契約の内容となるものである(労働契約法7条参照)。そして、第2回団交では本件就業場所変更に伴うA1組合員の労働条件が交渉事項とされていたから、労働者の「労働条件」の維持改善等を図ることを主たる目的として組織された組合(労組法2条参照)が会社との間で具体的な労働条件の交渉に入るためには、その前提として当時のA1組合員の労働条件の内容を確認する必要があり、具体的には、就業規則の内容を確認することが必要不可欠である。また、本件事実関係の下では、組合が就業規則を閲覧することなどによって会社に何らかの具体的支障や不都合が生じるおそれがあるとも認められない。
これらの事情を総合的に考慮すれば、会社は、団交において組合から就業規則の提示を求められた際には、誠実交渉義務の一環として、これを提示する義務があったというべきである。それにもかかわらず、会社は、第2回団交から第4回団交において一貫して就業規則の提示しない対応をとり続け、そのことに「正当な理由」も認められず、このような不誠実な交渉態度は、誠実交渉義務に反して団体交渉することを正当な理由なく拒んだ不当労働行為(不誠実交渉・労組法7条2号)に該当する。
4 争点4(第3回団体交渉において会社が組合に対して平成26年6月以降のA1組合員の労働条件を説明しなかったことが団体交渉拒否に当たるか否か)について
第3回団交の交渉事項は、主にA1組合員が満57歳に到達し準社員となった後の労働条件を問題にするものであるから、義務的団交事項に当たる。そうすると、会社は、組合の要求・主張に応じた回答・主張を行うなどして団体交渉において誠実に交渉すべき義務を負うものと解される。しかるに、会社は、上記義務を負っているにもかかわらず、第3回団交において、組合からA1組合員が準社員となった後の労働条件の変更内容等について質問しても、組合に対しては新たな労働条件の内容を提示するつもりはないことを明示した上で、その後も何ら具体的な説明をしなかった。会社は、A1組合員の処遇については第3回団交時点で会社内において決定されていなかった旨も主張するが、仮にそうであったとしても、会社の説明によれば、第3回団交時から起算してA1組合員の労働条件が変更されるまで約1か月程度の期間しかなかったのであるから、その当時の検討状況や今後の見込み等についてより具体的に説明することができる事項がなかったとはいえないというべきあり、その内容も判然としないグレードに関する説明をするだけでは、その時点において可能な対応を誠実にしたと評価することはできない。
したがって、会社の第3回団交における対応は労働条件の変更に係る説明を誠実にしたと評価することができず、そのことにつき「正当な理由」も認められないから、このような不誠実な交渉態度は、誠実交渉義務に反して団体交渉することを正当な理由なく拒んだ不当労働行為(不誠実交渉・労組法7条2号)に該当する。 
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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
兵庫県労委平成26年(不)第7号 一部救済 平成28年1月21日
中労委平成28年(不再)第9号 一部変更 平成29年2月1日
大阪高裁平成30年(行コ)第244号 棄却 平成30年11月7日
 
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