労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成26年(不)79号
藤商会不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社(「会社」) 
被申立人  学校法人Y2(「法人」) 
命令年月日  平成28年9月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   Aは、会社が法人から請け負った法人の大学構内の警備業務に従事していたところ、法人に勤務する女性に性的嫌がらせを働いたこと等を理由に、会社を解雇された。申立外Z組合がAの解雇撤回や謝罪を求める団体交渉を行い、Aが解雇無効確認訴訟を提起したところ、当該解雇は撤回されたが、復職条件については、団体交渉では合意に至らなかった。その後、AはZ組合に脱退届けを提出した。
 本件は、組合が、組合に加入したAの解雇の謝罪や紛争の金銭解決の可能性について、会社及び法人に対して団体交渉を申し入れたのに対し、①会社が、Z組合から、AはZ組合の組合員であり、組合との団体交渉はZ組合との不当労働行為になるなどと主張されているとして、組合とZ組合の間でAの解雇に伴う紛争の交渉権限が調整・統一されるまで団体交渉に応じない旨回答したこと、②法人が、Aと会社との労使紛争に関しては当事者でないとして、いずれも団体交渉に応じなかったことが正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かが争われた事案であり、都労委は、会社に対して誠実団交応諾を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合が同支部の組合員Aに係る未解決の問題について団体交渉を申し入れたときは、二重交渉のおそれがあることを理由にこれを拒否してはならず、これに誠実に応じなければならない。
2 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社の団体交渉拒否について
  労働組合の組合員には所属組合からの脱退の自由が認められるから、Aから脱退届けが提出されたにもかかわらず、同人の脱退を認めないとするZ組合の主張は法的根拠を欠くものである。したがって、会社としては、たといZ組から抗議等を受ける可能性があったとしても、Aの脱退届の提出の事実(二重交渉を生じるおそれがないこと)を認識した以上、組合との団体交渉に応ずるべきであったといわざるを得ない。
2 法人の団体交渉拒否について
① Aの解雇への関与について
 Bが、Aが法人に勤務している女性職員を食事やお茶に誘い、その女性が不快に感じているという抗議の電話があった旨を会社に伝えたという事実があるが、これをもって、法人がAの解雇を指示したとまでは認められないし、その他、Aの解雇の決定が法人の意思及び指示に基づくものであるとの疎明はない。Aは、大学における保安警備業務の現場責任者である会社の従業員と面接を行って会社に入社しており、この採用行為に法人が関与したとの疎明はない。
 また、法人は、その後、会社との保安警備請負契約を解除しているが、これも、Aの存在を理由に解除したのではなく、会社がAの解雇理由について誤った情報をZ組合等に流布したことを理由とするもので、この契約解除が法人の会社に対する実質的な支配性、Aに対する実質的な解雇権の存在を証するものでもない。
 会社は、法人以外からも保安警備業務を受託しているのであるから、仮に法人からAを大学の保安警備業務から外すよう求められたとしても、会社において他の現場においてAを就業させることも可能であったのであり、これができない合理的理由はないことから、Aを配置転換させることなく、解雇することを決定したのは会社であることが推忍される。
 したがって、法人が、Aの解雇に関与したとは認めることはできない。
② Aの従事していた業務に対する法人の指揮命令等について
 ア 法人と会社とは、大学の構内の保安警備請負契約を締結し、同契約書に添付された仕様書に基づき、会社の従業員が保安警備業務に当たっており、この仕様書によって、警備員の勤務体制、配置する警備員の人数、日常業務の内容が詳細に定められ、また、業務の遂行に当たっては、あらかじめ提示された保安警備業務、駐車場内業務の仕様に従い、法人の指揮監督を受けることなく、受託業務を行うものとされていた。会社は、この仕様書にのっとって、毎月の「勤務表」を作成して、自社の従業員を配置し、「保安警備業務内容明細表」及び「保安警備業務内容明細表に従った業務要綱詳細」を従業員に配布して保安警備業務に当たらせており、法人が、警備員の具体的な配置を決定したり、直接、会社の従業員が従事する業務に対し指示や命令をしていたとの疎明はない。
 イ 仮に、大学祭や入学試験日における文書を法人が作成して、会社の従業員に配布していたとしても、平時と異なる特別な警備体制が必要な場合に、発注者である法人が必要な警備体制をとるために、通常の業務体制の変更の内容を伝える文書を作成したものと認められ、これも、発注内容についての要望を伝えたものと評価できるから、大学祭や入学試験当日の警備体制について法人が文書を配布して指示したことは、会社の従業員の従事する業務についての指揮命令と解することはできない。
 また、法人が、会社の従業員である警備員の出退勤管理、休暇の取得、賃金の決定等について関与していたとの疎明はない。
③ 以上の事実に鑑みると、法人は、Aの労働条件等について、雇用主である会社と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとは認めがたく、法人がAの労働組合法上の使用者に当たるとはいえないから、法人が、組合の申し入れたAの雇用問題の団体交渉に応じていないことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たらない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成28年(不再)第55号 棄却 平成29年11月15日
東京地裁平成30年(行ウ)第209号 棄却 令和元年12月16日
東京高裁令和2年(行コ)第13号 棄却 令和2年6月10日
最高裁令和2年(行ツ)第244号・令和2年(行ヒ)第279号 上告棄却・上告不受理 令和3年1月19日
 
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