労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  愛労委平成24年(不)第7号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  平成28年8月30日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、法人が、①組合の組合員A2に対し不利益取扱い等を行ったこと、②私立学校教職員共済制度の加入脱退基準を団交議題とすることを拒んだこと、③申立外C社へ出向する講師職講師の労働条件を団交議題とすることを拒んだこと、④現役生進学事業本部長B3を団交に出席させなかったこと、⑤顧問B4を団交に参加させたこと、⑥組合文書のレターボックスへの投函禁止及び講師室でのコアタイム以外の手渡しを制限したこと、⑦組合文書について掲示規制をしたこと、⑧文書配布等について組合とD会とを差別したこと、⑨D会及びE会を介して組合に支配介入したこと、⑩組合書記長A3と平成26年度出講契約を締結しなかったこと等が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件で、愛知県労委は、A3の原職復帰、バックペイ及び文書の交付を命じ、その余の申立ては却下又は棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人書記長A3を平成25年度と同様の条件で速やかに就労させなければならない。
2 被申立人は、申立人書記長A3に対し、小中学生を対象とするコース(平成26年度春期講習を除く。)については平成26年3月1日から、高校コースについては同年4月1日から、同人が就労するまでの間、平成25年度と同様の条件により算出される報酬相当額及びこれに年5分を乗じた金額を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人書記長A3に対し、平成26年度春期講習の報酬相当額を支払わなければならない。
4 被申立人は、申立人に対し、下記内容の文書を本命令書交付の日から7日以内に交付しなければならない。
 当法人が、貴組合書記長A3に対し、平成25年11月22日付けで平成26年度講師業務委託基本契約の非締結を通知したこと及び平成26年度春期講習を担当させなかったことはいずれも労働組合法第7条第1号及び第3号に、貴組合が平成26年3月4日に申し入れた上記非締結通知の撤回及び同人に平成26年度春期講習を担当させなかったことを議題とする団体交渉に応じなかったことは同条第2号に、それぞれ該当する不当労働行為であると愛知県労働委員会によって認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
    年 月 日
    組合
    委員長 A1
法人      
理事長 B1
5 次に掲げる被申立人の行為に関する申立てはいずれも却下する。
(1)平成22年4月8日、D会及びE会を介して申立人書記長A3に対し申立人を脱退するよう勧めたこと
(2)平成23年2月12日、E会幹事を介して申立人書記長A3を誹謗中傷するメールを同会会員宛て配信したこと
(3)申立人書記長A3に対する平成23年度担当講義の提示が遅れたこと
(4)平成23年4月23日、E会を介して、申立人書記長A3に同会からの脱退を強要したこと
6 その余の申立ては棄却する。  
判断の要旨  1 争点1(組合員A2に対し不利益取扱い等を行ったこと。)について
(1)平成24年度出講契約非締結について
 法人が行った覚書を交わすことを条件とした平成24年度出講契約の提案は、A2が組合員であるが故に行われた不合理なものではなく、結局のところ、同人及び組合が法人に対し、同提案に対する意思の表明をしなかったことが、同人の平成24年度の出講契約が締結されなかった原因であったといえ、同契約の非締結は労組法第7条第1号の不当労働行為に当たらない。
(2)平成24年度出講契約を議題とする団交の拒否について
 法人が、平成24年1月27日付け回答書により、平成24年度出講契約を議題とする団交を拒んだ事実はなく、不当労働行為該当性については判断するまでもない。
(3)A2との面談時における西日本本部長B2による組合否定発言について
 B2の発言は、いずれも組合を否定するものであったとはいえず、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たらない。
2 争点2(私立学校教職員共済制度の加入脱退基準を団交議題とすることを拒んだこと。)について
 第6回団交において、法人が、私立学校教職員共済制度の加入脱退基準を議題とすることを拒んだ事実はなく、不当労働行為該当性について判断するまでもない。
3 争点3(申立外C社へ出向する講師職講師の労働条件を団交議題とすることを拒んだこと。)について
 第6回、第7回及び第9回の団交において、そもそもC社へ出向する講師職講師の労働条件は団交申入れに係る協議事項になっておらず、かつ、実際のやり取りにおいても法人がこれを議題とすることを拒んだ事実はないのであるから、不当労働行為該当性について判断するまでもない。
4 争点4(現役生進学事業本部長B3を団交に出席させなかったこと。)について
 法人と組合との交渉が一定程度成立しており、法人が一部確答できなかったからといって、交渉に具体的な支障が生じたとはいえず、第7回団交においてB3を出席させなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。
5 争点5(顧問B4を団交に参加させたこと。)について
 第6回から第9回までのいずれの団交においても、B4の発言等により具体的な支障が生じたとの事情は見受けられず、B4を参加させたことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。
6 争点6(組合文書のレターボックスへの投函禁止及び講師室でのコアタイム以外の手渡しを制限したこと。)について
 組合文書のレターボックスへの投函禁止については、法人の有する施設管理権の行使の一環として容認されるものといえる。また、講師室でのコアタイム以外の手渡しについては、法人は組合文書とD会の文書についても同じ許可制の下で取り扱っており、特段組合文書に限って他と異なる基準による規制が行われたとの疎明もない。したがって、いずれも労組法第7条第3号の不当労働行為に当たらない。
7 争点7(組合文書について掲示規制をしたこと。)について
(1)法人はD会及びE会に対しても同様に専用掲示板ないし専用掲示スペースを与えていないことが認められる。そうすると、法人が組合を特別に差別して取り扱っているといった特段の事情はうかがえず、法人に施設管理権の濫用があったとはいえない。したがって、法人が組合に専用掲示板ないし専用掲示スペースを提供しなかったことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たらない。
(2)法人は同じ許可基準を一律に適用していたといえ、その施設の利用に関し、組合とD会・E会とを差別して取り扱ったとの特段の事情は認められず、法人に施設管理権の濫用があったとはいえない。なお、法人は法人施設内に掲示スペースがないと述べたことはあったものの現実に掲示を認めなかったことはなく、法人の当該対応は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たらない。
8 争点8(文書配布等について組合とD会とを差別したこと。)について
 開講説明会における文書配布等の活動内容について、法人は、組合に対して説明会終了後に会場外で、D会に対して説明会開始前に会場外でそれぞれ配布することを許可したことが認められるが、開始前よりも終了後のほうが不利であるとする点について具体的な疎明はない。また、組合は、法人がD会による会場内での会費徴収を黙認していたと主張するが、これに係る疎明はない。したがって、法人が組合とD会とを差別したとはいえず、不当労働行為該当性について判断するまでもない。
9 争点9(D会及びE会を介して組合に支配介入したこと。)について
(1)平成22年4月8日から平成23年4月23日までの各行為は、仮に組合が主張する内容が事実であったとしても、「継続する行為」に当たらないことから、これらに係る救済申立ては、申立期間を徒過したものである。
(2)平成23年10月9日の懇親会において、A3がE会幹事から執拗に謝罪を迫られたとする点については、法人がE会を介して行ったとの疎明がなく、不当労働行為該当性について判断するまでもない。
10 争点10(組合書記長A3と平成26年度出講契約を締結しなかったこと等。)について
(1) 講師業務委託契約を締結していたA3の労働者性
 「労働者」の該当性判断は、契約の形式にとらわれることなく、現実の就労実態に即して、総合的に考慮してなされるべきである。この点、法人は、雇用契約と業務委託契約の二つの選択肢がある中で、A3が自らの意思で後者を選択してきたことを挙げて、同人に労働者性は認められないと主張するが、当該主張は採用できない。
 A3は、①法人の業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として法人の事業組織に組み入れられており、②その労働条件や提供する労務の内容を法人が一方的・定型的に決定していたと認められ、③その報酬は、労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するものであったといえ、④法人からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあり、⑤法人の指揮監督の下に労務の提供を行っていたと広い意味で解することができ、また、労務の提供に当たり、一定の時間的場所的拘束を受けていたといえ、⑥顕著な事業者性があったとは認められない。
 したがって、同人は、法人との関係で、労組法上の労働者であると認めるのが相当である。
(2)平成26年度出講契約を締結しなかったことの不当労働行為該当性
 ア 法人において次年度契約を非締結とされる講師は、全講師数に比して極めて少なかった上、非締結とされる講師にしても、徐々にコマ数を減じられつつ指導を受けても改善がされない等、次年度契約の非締結につきある程度予測が立つ状況に置かれていた(いわば不意打ちではなかった)といえるところ、A3は平成25年度時点で6コマあり、注意面談(1学期の授業アンケート結果が悪かった講師に対し、2学期に向けて注意を行う面談)も受けていなかったのであるから、次年度契約が締結されると期待するのが自然である。
 これに加え、A3が約23年間という長期にわたり契約を更新されてきたことを併せ考えれば、同人が平成25年度の委託基本契約が更新されるものと期待することには合理的な理由があったといえる。
 イ 非締結通知には、法人とA3との間の信頼関係を崩壊させるものとして3点が挙げられ、同人が受託業務者としてふさわしくないと判断した旨記載されていたが、いずれの理由も合理性は認められない。
 ウ 非締結通知に至るまで、組合と法人との間に一定程度の緊張関係があったといえ、また、法人はA3を組合の活動の主要なメンバーであると認識していたといえる。
 エ 以上を総合的に判断した場合、法人には組合に対する不当労働行為意思が存したとみるのが相当である。
 よって、非締結通知は、A3が組合員であることを理由とした不利益取扱いであり、また、同人を法人から排除することによって、組合の組織及び活動を弱体化するものと認められることから、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たる。
(3)春期講習を担当させなかったことの不当労働行為該当性
 ア 高校コースの平成26年度春期講習は平成25年度の委託基本契約に含まれ、小中コースの平成26年度春期講習は同年度の委託基本契約に含まれるものといえる。
 イ A3は、高校コースに係る委託基本契約を締結した場合、当該基本契約の期間に係る各講習は必ず担当することになっていたものといえ、平成25年度について高校コースに係る委託基本契約を締結している同人が、平成26年度春期講習の担当につき期待することには合理的な理由がある。
 法人は、次年度の1学期に講義を依頼する予定の講師に春期講習を担当させることとしており、A3とは平成26年度の出講契約を締結しないこととしていたため春期講習も担当させなかったのであり、同人が組合の組合員であるが故に担当させなかったのではない旨主張するが、委託基本契約の非締結が不当労働行為に当たる以上、その非締結を理由に同年度の春期講習を担当させないこともまた、法人の不当労働行為意思に基づくものであることは自明である。
 ウ A3は、小中コースに係る委託基本契約を締結した場合、当該基本契約の年度に係る各講習は必ず担当することになっていたものといえ、平成26年度についても、委託基本契約が更新されたならば、同時に春期講習も担当することとなる状況にあったといえる。同人の小中コースに係る同年度委託基本契約の非締結が不当労働行為に当たる以上、そこから派生する春期講習を担当させないこともまた、法人の不当労働行為意思に基づくものであることは自明である。
 エ 以上、法人が、A3に高校及び小中コースの平成26年度春期講習を担当させなかったことは、いずれも労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たる。
(4)契約非締結通知の撤回等を議題とする団交に応じなかったことの不当労働行為労働行為該当性
 A3は、法人との関係で労組法上の労働者といえ、非締結通知の撤回等の議題は、労働者の労働条件その他処遇に関わる事項であり法人に処分可能なものといえることから、義務的団交事項に該当する。したがって、法人が、団交に応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。  
掲載文献   

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