労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本放送協会 
事件番号  中労委平成25年(不再)第53号 
再審査申立人  日本放送協会(「協会」) 
再審査被申立人  全日本放送受信料労働組合(「全受労」)南大阪支部(「堺支部」若 しくは「組合」) 
命令年月日  平成27年11月4日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 協会が、地域スタッフにより組織されている堺支部の執行委員長 からキュービット(電子通信決済端末機器)を返還させたこと、本件団交申入れに対し部外者の交渉出席は困る旨述べ応じなかっ たことは、労組法第7条第1号ないし第3号の不当労働行為であるとして、救済申立てが行われた事案である。
2 初審大阪府労委は、本件団交申入れに対する協会の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、協会に文書手 交を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、協会はこれを不服として再審査を申し立てた。 
主文要旨   本件再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 地域スタッフの労組法上の労働者該当性
 協会の放送事業運営には、 恒常的に世帯や事業所の放送受信契約状況等を確認し、受信者との間で契約の取次等を行うことが不可欠であるところ、地域スタッフは、協会の事業活動に不可欠な労働力と して恒常的に労務供給を行い、 協会の事業組織に組み込まれ、本件委託契約の大部分が協会により一方的・ 定型的に決定されており、報酬は労務供給の対価に類似する側面を有し、これらに対応するように業務の遂行においては、協会によってその過程にも着目した集団的な管理がさ れ、一定の拘束もあり、交渉力の不均衡等、労働契約下にある者が有する部分も存在しており、使用者との交渉上の対等性を確保 するための労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる。 その一方で、上記の保護が不必要かつ不適切といえるような顕著な事業者性を基礎付ける事情があるとは認められない。 したがって、地域スタッフは、労組法上の労働者に該当する 。
2 本件団交申入れの労組法第7条第2号の不当労働行為の成否
 (1) 協会は、本件団交申入れ以前にも、地域スタッフではない堺支部特別執行委員同席の交渉に応じなかった経緯を挙げた上で、同人を部外者とし、同人がいなければ交渉を受けると 述べ、同人が出席する余地を与えない明確かつ強固な姿勢を一貫して示していることからすれば、本件団交申入れに対し、同人が 出席することを理由に団体交渉を拒否したとみるのが相当である。
 (2) 協会は、堺支部の上部団体である全受労中央本部との間では、本件出席ルール(組合の上部役員は特に必要がある場合に下部交渉への出席ができ、その出席は協会側と組合側の間 で話し合い、双方了解の上で行い、意見が対立した場合には直近の上部組織で調整を図る旨合意し、確認されたルール) を含む 「事前了解」 が合意されていると主張するが、その全ての項目について合意されたと認めることは困難であり、本件出席ルールを個別的にみても事前了解に関する協議を通して合意がされたと 認めることはできない。そうすると、本件出席ルールについて協会と全受労中央本部との間で合意があったと認めることはでき ず、本件出席ルールが協会と堺支部との間で拘束力を有していたものとはいえず、事前了解や本件出席ルールを根拠に協会の団交 拒否に正当な理由があったと認めることはできない。
 また、協会の主張する、地域スタッフ以外の者は交渉に出席せず、出席者は事前折衝の中で双方の合意により定める旨の交渉慣 行があったと認めることはできず、その他協会の団交拒否理由に正当な理由があったと認めることはできない。
 (3) 以上のとおり、協会は、本件団交申入れに対し、地城スタッフではない堺支部特別執行委員の出席を理由に団交を拒否したものであり、 協会が主張する合意や慣行の状況、その他の事情から当該団交拒否の正当な理由があるとは認められず、労組法第7条第2号の不 当労働行為が成立する。
3 救済利益及び救済内容の当否
 執行委員長へのキュービット貸与に係る問題に関しては、地域スタッフ全員に新たなキュービットが貸与されているが、本件が 今後も行われる協会と堺支部との間の団交における出席者の問題に係るものであること、協会の方針により地域スタッフで構成さ れる労働組合との交渉や合意が労組法の枠組に基づいて行われていないという労使関係の経緯が背景にあるといえることに照らす と、協会が今後も同様の行為を繰り返す可能性は否定できず、その防止を図ることが必要であり、救済利益が失われているとはい えないから、文書手交とするのが相当である 。  
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成23年(不)第68号 一部救済 平成25年7月30日
東京地裁平成28年(行ウ)第8号 棄却 平成29年4月13日
東京高裁平成29年(行コ)第178号 棄却 平成30年1月25日
最高裁平成30年(行ツ)第177号・平成30 年(行ヒ)第192号 上告棄却、上告不受理 平成30年10月10日
 
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