概要情報
事件名 |
大阪府労委平成23年(不)第68号 |
事件番号 |
大阪府労委平成23年(不)第68号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
Y(法人) |
命令年月日 |
平成25年7月30日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人法人が①放送受信契約の締結等の業務を委託している「地域スタッフ」である組合員X1に対し、通信決済機器の貸与を取り消し、返却させたこと、②組合の上部団体の役員が同席しての団交の開催に、「外部の者」の出席を理由として応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は法人に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X労働組合A支部
執行委員長 X1 様
Y(法人)
会長 Y1
当協会が貴組合から平成23年11月2日付けで申入れのあった団体交渉について、申立人の特別執行委員である者が交渉委員として出席することを理由として、応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
2 申立人のその他の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 「地域スタッフ」の労働者性について
認定した事実によれば、①「地域スタッフ」は事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力として被申立人法人の組織に組み入れられており、②法人は「地域スタッフ」の労働条件や提供する労務の内容を一方的に決定していたといえ、③「地域スタッフ」の報酬は労務の提供に対する対価としての性格を持つものとみることができ、④「地域スタッフ」は法人の指定する業務遂行方法に従い、その指揮監督の下に労務の提供を行っていたといえるのであるから、総合して判断すれば、「地域スタッフ」は法人との関係で労組法上の労働者であると認めるのが相当である。
2 組合員X1に対し、通信端末機器の返還を要求し、その後貸与しなかったことについて
認定した事実によれば、平成23年1月4日、法人のAセンターの担当職員がX1に通信決済機器(以下「機器」)を貸与する際、月15件の利用が必要である旨述べ、同月21日、同センターの統括主任Y3がX1に対し、当日までの同人の機器の利用件数が15件に達していないことを理由にその返還を要求したことなどが認められる。法人は、条件を提示して機器を貸与し、その条件が満たされなかったことを理由に返還を要求しているのであるから、特に不自然な点はない。また、Aセンターにおける機器の月平均利用数が23.1回であること、X1以外に機器を貸与されなかった時期がある「地域スタッフ」でも6人中3人は月平均15件以上利用していたことが認められるから、X1に対する上記の条件が不自然に困難なものであるとはいえない。
Aセンターは、同年4月1日、X1から機器を返還させたが、同年3月の同人の利用件数は4件で、同センターの「地域スタッフ」中、最下位であったことが認められる。同センターにおいては、月の利用件数が4件以下であった「地域スタッフ」に割り当てられた機器を大阪の拠点局に引き上げられる可能性が存在していたと考えられることに加え、機器の利用にはランニングコストがかかるという要因もあるのであるから、X1から機器を引き上げたことについて、不合理な取扱いであるとか、X1が組合員であるが故をもって他の「地域スタッフ」よりも不利益に取り扱ったものであるということはできない。
3 団交拒否について
平成23年6月1日、組合が法人に対し、組合が組織加盟している申立外組合Zの役員であるX2も同席しての団交の開催を要求したところ、法人の副部長Y2はX2の同席については断る旨を述べた。同月10日、X2が組合の特別執行委員に就任した後、組合が再び同人の同席する団交の開催を要求したところ、Aセンターは外部の者が参加しない形での交渉なら受ける旨を述べた。Y2はその後も、外部の者が団交に加わるのは困る旨を述べている。
法人は、「地域スタッフ」以外の外部の者の団交出席を拒否する理由として、①組合からの団交申入れの議題については、事情を知らない者が出席すれば、説明に時間を費やし、充実した協議をなし得ないこと等、②団交のメインテーマである機器の問題は既に組合の上部団体である申立外組合W中央や関西協議会のメンバーを交えた交渉の中で継続的に協議してきたテーマなので、Wとの関係が不明瞭であるZのメンバーをあえて入れる必要性はなく、協議が混乱するおそれもあったことを主張するが、X2を団交に出席させる必要があるか否かは組合の判断する問題であり、これらは使用者が労働組合の交渉担当者を制限する正当な理由としては認めがたい。また、法人は、X2が組合の実質的なメンバーではない旨主張するが、少なくとも組合の上部団体の構成員であり、組合が交渉権限を委任している者であることは明らかであるから、X2が組合の組合員であるか否かが不当労働行為の判断に影響を及ぼすものではない。
以上のとおりであるから、法人の対応は正当な理由のない団交拒否に当たるといわざるを得ない。 |
掲載文献 |
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