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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁平成29年(行コ)第178号
日本放送協会不当労働行為救済命令取消請求控訴事件
控訴人  X協会(「協会」) 
被控訴人  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  Z2労働組合Z1支部 
判決年月日  平成30年1月25日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 協会が、地域スタッフにより組織されているZ1支部の執行委員長からキュービット(電子通信決済端末機器)を返還させたこと、本件団交申入れに対し部外者の交渉出席は困る旨述べ応じなかったことは、労組法第7条第1号ないし第3号の不当労働行為であるとして、救済申立てが行われた事案である。
2 初審大阪府労委は、本件団交申入れに対する協会の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、協会に文書手交を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、協会はこれを不服として再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、協会の再審査請求の申立てを棄却したところ、協会は、これを不服として東京地裁に訴訟を提訴した。
4 東京地裁は、協会の請求を棄却したところ、協会は、これを不服として東京高裁に控訴したが、同高裁はこれを棄却した。
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
判決の要旨  1 当裁判所も,協会の本件請求は理由がないものと判断する。その理由は,後記2のとおり当審における当事者等の補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第3の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。
2 当審における当事者等の補充主張について
(1) 地域スタッフの労働者性について
  協会は,憲法上の勤労者,労働基準法上の労働者と同様に,労組法上の労働者も,雇用契約に基づき労働力を提供する者に限られるべきであると主張する。しかしながら,労組法上の労働者については,労働契約によって労務を提供する者のみならず,これに準じて使用者との交渉上の対等性を確保するための労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者をも含み,これに当たるか否かについては,契約の実際の運用等の実態に即して,事業組織への組込みの有無,契約内容の一方的・定型的決定の有無,報酬の労務対価性,業務の依頼に対する諾否の自由の有無,指揮監督下の労務の提供の有無,事業者性等の事情を総合考慮して判断すべきであり、協会の主張は採用の限りではない。
  ア 事業組織への組込みについて
(ア) 組織内に位置付けられているとはいえないとの主張について
  協会は,訪問集金業務の廃止,契約取次業務への移行とともに,法人委託の比率が拡大し,地域スタッフの比率は減少し,業務比率のシェアも15%程度にすぎないことから,地域スタッフが協会の業務全体の中で枢要な部分を占めており,協会の事業の継続にとって不可欠な存在として,組織内に位置付けられているとはいえず,地域スタッフは,組織外部の委託先の一つにすぎないと主張する。
  しかしながら,協会の事業収入の約96%を受信料収入が占め,受信者の転居等の移動状況や受信料の支払状況等を把握することこそがその収入を確保するための中心的業務であって,地域スタッフによる本件取次業務はそれを担うものとして,協会の事業活動において根幹を成す業務の一つであること,協会の契約取次等業務に伴う取次件数のうち,地域スタッフによる取次件数の割合は約半分弱であって,その貢献度は高く,口座振替等についても,地域スタッフの働きによって受信者の口座情報を把握している場合もあるなど,実際の受信料の収納についての地域スタッフの貢献度も高く,地域スタッフは,協会の事業の継続にとって不可欠な存在として組織内で位置付けられているといえること,協会内での地域スタッフの人数や取次件数及びその割合が年々減少していることは,いずれも本件命令時点における地域スタッフの協会組織内の位置付けを左右するような事情に当たるとはいえない。
(イ)契約の更新及び錢別金について
  協会は,地域スタッフの契約期間は新規委託契約を除いて3年間と限定されており,契約更新に当たっては当該地域スタッフの業績を勘案するのであり,餞別金等各種給付の制度も,地域スタッフとして優秀な人材を確保するために設けたにすぎず,地域スタッフを継続的に勤務させることを目的とするものではないなどと主張する。
  しかしながら,地域スタッフが契約を解消する際に支給される一般餞別金は,委託期間に応じて支給額が定められ,年数が長いほど高額になるなど,更新を繰り返し長期間委託契約を続けることが奨励される制度であり,実際にも複数回の更新を重ねて長期間委託契約を続ける例が一般的となっており,この点からも地域スタッフは協会の事業組織に組み込まれていたものと見るのが相当であり,餞別金が,優秀な人材確保を目的とする趣旨を含んでいるとしても,上記判断を左右するものではない。
(ウ) 管理の態様が相当強度とはいえないとの主張について
  協会は,地域スタッフの各個人別目標数の設定,各種報告等は本件委託契約に基づくものであるし,地域スタッフに対する特別指導は,強制力を有するものではなく,マニュアル等の交付も地域スタッフの管理を目的とするものではなく,地域スタッフを一定の区域に配置することは視聴者からの公的料金の確保という契約の性質等に基づくものであり,各センター等に配置された職員による全体集会等を通じた助言・指導も,その参加は任意で,一斉デー等の機会も一定の業務内容が強制されるわけではないなど,いずれも協会の事業組織への組込みという考慮要素の根拠とするのは誤りであると主張する。
  しかしながら,協会は,地域スタッフの契約取次等業務の目標数を一方的に定め,地域スタッフはこれを達成するために業務計画表を作成・提出し,それを踏まえて目標数の達成に向けた進捗状況を報告することが求められ,業績が芳しくない地域スタッフに対しては特別指導が行われ,委託契約の解約を示唆されることもあるなど,協会は,地域スタッフを自ら設定した目標数を通じて管理していると評価すべきであり,その管理の態様は相当程度強度なものとみるべきであること,それ以外にも,業務方法に関するマニュアルを作成,配布して,業務遂行の方法を指導し,地域スタッフを一定の区域に配置した上で,各センター等に協会の職員を配置し,X2センターにおいては各地域スタッフをチームに加入させ,全体集会,チーム会議や講習会等を開催して助言・指導していること,X2センターでは,一斉デー等の機会を設け,その日の目標を定め,目標達成者の氏名及び獲得件数を公表するなど,営業職員に対するものと類似する管理を行っていること,これらの管理の態様は委託者から独立して業務を行う一般的な委任契約や請負契約の形態とは一線を画する相当強度なものである。地域スタッフの各個人別目標数の設定,各種報告等が本件委託契約に基づくものであり,地域スタッフに対する特別指導や,全体集会等を通じた助言・指導が強制力を有するものでないとしても,前示の判断を左右するものとはいえない。
(エ) 地域スタッフには広範な裁量が認められていることについて
  協会は,地域スタッフには,業務を行う日時や業務量の決定につき,広汎な裁量が認められており,受持区域を指定し,目標数を定めることや目標数実現に向けた指導・助言等を地域スタッフに対する相当程度強い管理と評価することは誤りであると主張する。
  しかしながら,協会は,受持区域を指定し,目標数を定めることにより地域スタッフを管理している上,業務の進め方が裁量に委ねられている部分が多いとはいえ,目標数実現に向けた指導・助言等を通じ,地域スタッフに相当程度強い管理が及んでいたとみるべきこと,受持区域外の業務によって契約を締結しても業績としては算定されないこと,以上からすると,一定の裁量を有することにより,地域スタッフが協会の事業組織に組み込まれていることを否定することはできない。
(オ)再委託及び兼業について
  協会は,地域スタッフの再委託について,委託契約上も,地域スタッフは,協議の上,受持区域外の委託業務を再委託することができ,実績にも加算されるし,実際も多数の再委託例があり,兼業についても実際例は相当数に及ぶと主張する。
  しかしながら,再委託が可能であるとはいえ,その実績は極めて限定されていたことがうかがわれること,兼業が可能とはいえ,それに当てられる時間や収入は相当限定されたものになること,再委託や兼業が可能であることにより,地域スタッフが控訴人の事業組織に組み込まれていることを否定することはできない。平成24年11月2日に行われた参加人代表者の審問においても,参加人代表者はX2営業センターの地域スタッフの中に再委託している者はいないと述べていることにも照らせば,協会の主張するところを考慮しても,地域スタッフが協会の事業組織に組み込まれているとの前示の判断を左右するものとはいえない。
(カ)上記(ア)ないし(オ)のとおりであり,地域スタッフが協会の事業組織に組み入れられているということはできないとの協会の主張は,採用することができない。
  イ 契約内容の一方的・定型的決定について
(ア) 報酬等の決定について
  協会は,契約内容の中核というべき報酬等について,約30年以上の長きにわたり,各事業者団体と協議して全国統一基準としてその内容を決定してきており,協会が契約内容を一方的・定型的に決定してきた事情はないなどと主張する。
  しかしながら,本件委託契約書は,地域スタッフの委託種別や受持区域などの一部の項目を除いて記載が統一され,統一されている項目について,協会と地域スタッフが個別に交渉するなどして内容を変更したことはなく,地域スタッフに求められる契約取次等業務の目標数は協会によって一方的に定められ,支払われる報酬の額も,協会が各団体と交渉した上で基準が決められ,その基準に沿って支払われることになっており,地域スタッフの契約内容の大半について,地域スタッフに交渉の余地は残されておらず,協会によって一方的・定型的に決定されているというべきであること,協会が各団体と協議し,その結果を踏まえて決定しているとしても,協会と個々の地域スタッフとの関係においては,協会が契約条件の重要な部分を一方的に決定しているものと見ざるを得ない。
(イ) 個別交渉や目標数の設定について
  協会は,委託種別や受持区域については,地域スタッフ個人と個別の協議により決められ,控訴人が一方的に設定・変更することはなく,そもそも目標数は控訴人と地域スタッフとの協議によって決める性質のものではないと主張する。
  しかしながら,委託種別や受持区域が地域スタッフと控訴人が協議した上で,委託スタッフの希望どおりに決まることがあるとしても,契約内容の大部分とその中核を占める報酬は協会により一方的に決定され,受持区域内での目標数は協会によって一方的に設定されていることに鑑みれば,契約内容の重要な部分を協会が一方的・定型的に決定していると認められる。
(ウ) 地域スタッフの裁量について
  協会は,地域スタッフには,個別の業務の日時,業務量,内容の決定の広い裁量が認められており,契約内容の一方的・定型的決定という考慮要素を満たさないと主張する。
  しかしながら,地域スタッフが,業務の進め方につき一定の裁量を有しているとしても,前示のとおり,事業組織に組み込まれ,契約内容の重要な部分を協会が一方的・定型的に決定しているとの評価を左右するものとはいえない。
(エ) 上記(ア)ないし(ウ)のとおりであり,契約内容が一方的・定型的に決定されているとはいえないとの協会の主張は採用することができない。
ウ 報酬の労務対価性
(ア) 運営基本額について
  協会は,地域スタッフに対する報酬である事務費は,成果報酬であって,そのうち運営基本額は,契約取次等の実績がなければ一切支払われず,業務従事実績と訪問件数に応じて7万5000円から15万円の間で実績に応じて倍近く金額が変動するものであるから,あくまでも業務の実績・成果に応じて支払われる出来高払いであると主張する。
  しかしながら,1か月の間に相当程度の労務を提供しながら1件の契約取次等の実績にもつながらないという事態は極めてまれなことと考えられ,支払われる運営基本額と業務従事実績との相関は希薄であって,出来高への対価としての性質は乏しく,基本給的な性格をも併せ持っていると評価するのが相当である。
(イ) 運営基本額以外の月例事務費について
  協会は,運営基本額以外の月例事務費である業績基本額等の業績連動の歩合報酬部分について,業績に連動する形で細かく設定されており,地域スタッフの報酬の多くを占めるものであるから,一定の労務を提供したことへの対価と評価することはできないと主張する。
  しかしながら,地域スタッフの報酬全体に占める運営基本額の割合は高くないとしても,協会においては最低限15万円が支給されることが前提となり,そこから歩合給的に業績基本額等が上積みされるという報酬の体系が採用されているとみることができ,このような報酬の体系を全体としてみると,労務提供の対価としての基本給的な部分があることに着目して労務対価性を認めることが不当といえない。
(ウ) その他の報酬項目について
  協会は,選別金,報奨金や慶弔金その他の給付も平均月収等の実績に連動する要素があり,地域スタッフの業務の実績・成果と無関係に支給されるものではなく,また,医療費負担などは恩恵的なものであり,労務の提供に着目した制度であると評価することはできないと主張する。
  しかしながら,一般的な退職金と類似性が認められる餞別金,賞与と類似性が認められる報奨金や慶弔金,業務上・業務外の事由に伴う医療費等を協会が負担する制度など,全体としてみると,通常の労働契約における労働者の賃金制度と類似した制度設計がされており,餞別金等は,ある程度継続的に労務を提供する人材を確保するために必要とされるものであって,これらは労務の提供に着目した制度とみるのが相当である。
(エ) 時間外手当等がないことについて
  協会は,地域スタッフには時間外手当は支給されないから,報酬が労務の提供の対価であるとはいえないし,稼働日数・労働時間の多寡と報酬額は連動していないと主張する。
  しかしながら,地域スタッフに時間外手当が支給されておらず,労務に従事した時間当たりの対価が支払われるという報酬体系が採用されていないとはいえ,地域スタッフの報酬が労務の提供に対する対価としての性質を有することは否定できないこと,稼働時間や稼働日数とそのまま連動していない報酬体系を採用することは通常の労働契約においてもありえることである。
(オ)上記(ア)ないし(エ)のとおりであり,地域スタッフの報酬の労務対価性を否定する協会の主張はいずれも採用することはできない。
エ 業務の依頼に応ずべき関係及び指揮監督下の労務関係
  協会は,地域スタッフは,協会からの個別的な業務の依頼に応じるべき関係や,個別的な労務の提供について具体的な拘束を与え,あるいは,指揮監督を行うという関係は見い出し難いのであるから,労働者性は否定されるべきであると主張する。
  しかしながら,地域スタッフは,個別的業務の依頼に応ずるべき関係や個別的な労務の提供について具体的な拘束を与え,あるいは指揮監督を行うという関係は見い出し難いものの,目標達成に向けて業務に関する事細かな指導を受け,目標達成に至らなかったときは委託業務の削減や本件委託契約の解約等の段階的な措置を講じられることが予定されているなど,その業務遂行が協会の相当程度強い管理下に置かれていることに鑑みれば,協会の業務依頼に応ずべき関係が存在し,その労務の提供について一定の拘束や指揮監督を受けている関係が認められる。協会は,これら協会と地域スタッフとの関係は,本件委託契約に基づくものあるいは契約内容そのものであると主張するが,そういった側面を有するとしても,上記結論が左右されるものではない。協会の主張は採用することができない。
オ 顕著な事業者性
  協会は,地域スタッフは,個別の業務をいつどのような方法で行うかなど,個別の業務遂行に広汎な裁量を有し,第三者に再委託することも,他の業務との兼業も自由にでき,収入額は稼働状況と必ずしも比例しないのであり,地域スタッフは,業務内容を差配して,収益管理をすることができると主張する。
  しかしながら,地域スタッフは,再委託や兼業が可能であるとしても,その実態に鑑みれば,地域スタッフが協会から独立しており,事業者性が顕著であるということはできないこと,地域スタッフが事業所得として確定申告をし,社会保険に加入せず,各戸を訪問する移動手段につきバイク等の貸与やガソリン代の支給を受けていない点を含めて考えても,地域スタッフの事業者性が顕著であることを基礎付けるような事情であると認めることはできない。控訴人の主張は採用することができない。
カ 以上のとおり,地域スタッフが労組法上の労働者には当たらないとの協会の主張は,いずれも採用することができない。
(2)本件団交申入れに対する控訴人の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たらないとの主張について
ア 義務的団交事項が存在しないことについて
  協会は,キュービットは本件委託契約上の業務を遂行する上で不可欠の物品ではなく,それを貸与するか否かは基本的には発注者である協会の裁量に基づき判断されるべき事柄であり,少なくとも労働条件ではないから,本件団交申入れには義務的団交事項は存在せず,そもそも不当労働行為の問題は生じないと主張する。
  しかしながら,義務的団交事項とは,団体交渉を申し入れた労働組合の構成員たる労働者の労働条件その他の待遇又は当該労働組合と使用者との団体的労使関係の運営に関する事項であって,使用者に処分可能なものをいうと解され,労働者の経済的地位にかかわるものであれば,集団的画一的に決定されるものだけでなく,個別的に処遇・決定されるものも含まれるものと解すべきところ,キュービットを使用することにより,地域スタッフ等が受信者宅を訪問した際,その場で,口座振替又はクレジットカード払いの方法により,放送受信料の徴収を行うことが可能となり,その貸与の有無は本件取次業務による取次件数に大きく影響するものと解されるから,キュービットの貸与の有無は,地域スタッフの経済的地位にかかわるものであり,労働者の労働条件にかかわる事項であると認められる。
  したがって,本件団交申入れは,義務的団交事項を含むものというべきである。協会の主張は採用することができない。
イ 本件事前了解の成立について
  協会は,協会と本件組合との間では本件事前了解が成立しており,交渉記録等はこれを客観的に証明するものであって,協会及び本件組合は,本件事前了解に従った行動を取っており,本件事前了解後に作成された書面においても本件事前了解の成立を前提とした記載があることなどを主張する。
  しかしながら,交渉記録等の「両者の合意は成立したという立場を双方とることとした」の表現振りは,実際に合意が成立したか否かを明確にしていないとも言い得ること,この文書については,協会側で作成し,その文面につき本件組合にその適否を諮り,その了解を得たという経過も見当たらず,逐語的に記録されたことの裏付けもなく,合意が成立したというのであれば,これを書面化してしかるべきであり,それが困難な事情は見当たらないことからすると,前記の交渉記録等の記載から本件事前了解の成立を認めることはできない。このことは,上記交渉記録上の記載を前提として協会の内部連絡がされているとの事実があるとしても,左右されるものではない。
  また,本件組合が,C4に対する扱いを一部そのまま受け入れたり,踏襲したりした事実があったからといって,他の事項・項目を含めた本件事前了解の全体を本件組合が受け入れており,協会との間で合意が成立しているものと推認するのは困難である。協会は,本件組合は,C4に対する扱いを一部ではなくすべて踏襲したと主張するが,事務所の貸与,組合役員の応援の措置,組合費の控除及び委託制度改善検討専門委員会の実施等の受け入れが認められるとしても,直ちに交渉ルールの踏襲が認められるとはいえない。
  さらに,本件組合が昭和59年に条件付契約更新制度に関して作成した書面には,「全受労成立時にすでにあるルールとして否定も肯定もできないままに『交渉にあたっての事前了解』により承継させられた」旨の記載はあるものの,直後に「全受労は・・合意した経緯はない」と記載していることからすると,「承継させられた」という文言から直ちに本件事前了解の成立を認めていることにはならない。また,本件組合が条件付契約更新制度を承継することを認めているとしても,これにより直ちに本件事前了解の効力を承認するものともいえない。
  さらに,平成4年に本件組合が作成した文書には,「『X協会とZ2労働組合との交渉開始にあたっての事前了解』に基づき」との記載はあるものの,本件事前了解に記載されている内容のうち,本件交渉ルールとは無関係な事項に係るものであるところ,一部本件事前了解に含まれる内容を受け入れ,その運用に従っていたとしても,そのことから直ちに本件交渉ルールの承継を含めた本件事前了解全体を受け入れているとは言い難く,そうした合意をしたことを認めたことにもならない。
  その他協会の主張を踏まえても,本件事前了解の成立を推認させるだけの事情は見当たらず,本件事前了解が成立したとは認められないとの前示の判断を左右するものではない。協会の主張はいずれも採用することができない。
ウ 本件交渉慣行の存在について
  協会は,平成16年4月以降,平成23年4月までの7年間だけみても,協会と参加人との間で40回以上交渉がされているが,その間地域スタッフ以外の者の出席の申出がされておらず,これは交渉の出席者を交渉内容となる業務等を理解している地域スタッフに限ることに合理性があるためであり,参加人において本件出席ルールと同様の規範意識があったことは明らかであると主張する。
  しかし,参加人の主張する団体交渉における地域スタッフでない者の参加があったとは認められないことは前記1説示のとおりであるものの,少なくとも本件組合傘下の他の支部では,地域スタッフではない者が出席した団交を申し入れ,実際にその者が出席しての団交が行われた例があることから,協会と本件組合との間で協会が主張するような慣行が成立していたということはできないこと,協会と参加人との過去の交渉においても,出席者を地域スタッフに限定するとの議論がなされたことを認める証拠はなく,当事者双方に本件出席ルールと同内容の慣行が存在し,これに従うことについて規範意識が形成されていたと認めることができない。よって,本件交渉慣行が存在するとの協会の主張は採用することができない。
エ その他の正当な理由について
  協会は,それまで交渉に関与していなかった地域スタッフでない別の労働組合所属のC1を出席させることは,交渉の蒸し返しを図ろうとしたもので,協会と本件組合との間で長年行われてきた紛争解決の仕組みそのものを混乱させようとする信義に反する不当な要求であると主張する。
  しかしながら,本件団交申入れにおいて議題事項とされたA1へのキュービットの貸与の問題につき,本件団交申入れ時点までに,協会と本件組合又はA1との間で何らかの合意や了解に至っていたとの経過も,C1が他の交渉の場で混乱を生じさせたなどの事情も見当たらず,C1が出席することで紛争の蒸し返しや混乱が生ずるとするだけの根拠に乏しく,仮に混乱の懸念があっても,事前の折衝等を行わずに直ちに出席を拒否することに正当な理由は見い出せない。協会の主張は採用することができない。
3 よって,協会の本件請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成23年(不)第68号 一部救済 平成25年7月30日
中労委平成25年(不再)第53号 棄却 平成27年11月4日
東京地裁平成28年(行ウ)第8号 棄却 平成29年4月13日
 
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