労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  関西宇部 
事件番号  中労委平成25年(不再)第77号・第79号 
再審査申立人  株式会社関西宇部(「会社」)[第77号] 
再審査申立人  全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(「組合」)[第79号] 
再審査被申立人  全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(「組合」)[第77号] 
再審査被申立人  株式会社関西宇部(「会社」)[第79号] 
命令年月日  平成27年1月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、① 組合員らに対し一時金の調整加算金を支給しないこと、② 一時金及び賃金の減額に係る団交に誠実に対応しなかったこと、③ 福利厚生資金の支給をやめる等したこと、④ 組合員Aに懲戒処分に係る弁明の機会を与える旨通知したこと、⑤ 副執行委員長の出席を理由として団交を拒否したこと、 ⑥ 組合事務所での団交開催を拒否していること、⑦ 分会事務所・ 掲示板を撤去したこと、⑧ 土曜稼働に係る団交を拒否したこと等が不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である 。
2 初審大阪府労働委員会は、土曜稼働に関する団交応諾、副執行委員長の出席を理由とする団交拒否等に関する文書手交を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社及び組合が、これを不服として、再審査を申し立てたものである。 
命令主文  本件各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員らに対し一時金の調整加算金を支給しないことは、不利益取扱いに当たるか。
 組合員らは、いずれも調整加算金の支給対象者に関する年齢要件に該当しなかったのであるから、調整加算金を受けるべき対象者に当たらないため、調整加算金が支給されなかったものと認めるのが相当であり、会社は、組合員らをことさら組合員であるが故に不利益に取り扱ったと認めることはできない。
2 一時金及び賃金減額に係る団交における会社の対応は、不誠実であったといえるか。
 会社は、組合に対し、大幅な業績赤字額や経営再建中であること、新規の受注や需要が回復しないこと等、一時金及び賃金減額の理由である厳しい経営状況を具体的に説明し、それでもなお組合の合意が得られないことから、交渉を継続して行っており、こうした団交における会社の対応は、不誠実であったとはいえない。
3 福利厚生資金の支給をやめる等したことは、支配介入に当たるとともに、不誠実団交に当たるか。
 会社の厳しい経営環境に鑑み、経営上及び経理処理上の必要性に基づき福利厚生資金の支給をやめる等したことは、相応の理由があり、組合に対する支配介入には当たらない。また、従来の支給額及び支給方法を変更せざるを得ない理由についても、繰り返し具体的に説明していること等から、団交における会社の対応は、不誠実であったとはいえない。
4 Aに対し懲戒処分に係る弁明の機会を通知したことは、支配介入に当たるか。同人に対する事情聴取は団交事項にならないとして団交に応じなかったことは、正当な理由があるといえるか。
 A に対する通知は、懲戒処分の決定に先立ち、弁明の機会を与えるためのものであり、手続自体に問題はなく、組合に対しても文書提出の機会を与える等しているのであるから、組合の弱体化を図ったものとはいえない。
 会社のAに対する事情聴取は、懲戒処分に先立ち手続的公正の見地から行うもので、団交とは区別すべきものであるから、団交で行うべきものとは認められず、正当な理由のない団交拒否には当たらない。
5 組合副執行委員長の出席を理由に団交拒否等したことは、正当な理由があるといえるか。
 会社は、副執行委員長が組合の街宣活動を主導していたとの理由をもって、団交を拒否したが、街宣活動自体は団交中に生じた出来事ではなく、これまで副執行委員長が団交に同席したことにより団交が紛糾したとの疎明もないことから、副執行委員長の団交への出席を理由として団交を拒否したこと、同副執行委員長の謝罪及び団交担当者の変更を団交開催条件としたことは、正当な理由があるとはいえない。
6 組合事務所での団交開催に応じていないことは、団交拒否に当たるとともに、支配介入に当たるか。
 会社が組合事務所以外の場所での団交開催を求めたことに全く理由がなかったとはいえず、その理由を具体的に説明し、会社の工場以外の中立的な場所での団交を自ら費用を負担して開催しており、会社が工場での団交開催に固執していたわけではないから、会社が組合事務所での団交開催に応じていないことは、正当な理由のない団交拒否には当たらず、また、支配介入にも当たらない。
7 分会事務所及び掲示板を撤去したことは、支配介入に当たるか。 また、撤去に当たり、事前に団交を申し入れなかったことは、労組法第7条第2号に当たるか 。
 分会事務所及び掲示板は、協定書に基づいて分会に貸与していたものであり、分会の消滅に伴って会社がその返還を受けたもので、会社が一方的に明渡しを求めて貸与を停止したわけではないから、組合の弱体化を意図したものとはいえず、支配介入に当たらない。 また、会社が分会事務所の返還を受けるに当たって、同協定上組合の同意が必要ということはできず、会社から団交を申し入れなければならないものではないこと等から、会社が分会事務所等の貸与停止に当たって、事前に組合に団交を申し入れていないことは、労組法第7条第2号に当たらない。
8 土曜稼働に係る団交申入れに応じなかったことは、正当な理由があるといえるか。
 24年3月当時、本社業務部の判断により土曜稼働の際の組合員の所属する工場への応援要請が行われる可能性がなかったとはいえない状況下で、組合の団交申入れにより、協定書における労使協議を要する土曜稼働について労使間で解釈に違いがあることが明らかになり、また、土曜稼働は休日における労働条件に関連する事項であること等から、会社は団交に応じて労使協議のあり方等必要な協議を行うべきであった。
 したがって、会社が団交申入れに応じなかったことには、正当な理由がなく、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成23年(不)第63号・24年(不)第51号 一部救済 平成25年10月15日
東京地裁平成27年(行ウ)第371号 棄却 平成28年4月14日
東京高裁平成28年(行コ)第187号 棄却 平成28年11月10日
最高裁平成29年(行ツ)第66号・平成29年(行ヒ)第65号 上告棄却・上告不受理 平成29年9月7日
 
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