労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁平成28年(行コ)第187号
関西宇部不当労働行為救済申立棄却命令取消請求控訴事件 
控訴人  X1労働組合関西地区生コン支部(「組合」) 
被控訴人  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  株式会社Z(「会社」) 
判決年月日  平成28年11月10日 
判決区分  棄却  
重要度   
事件概要  1 組合が、①一時金の調整加算金の不支給による差別的取扱いの禁止及び平成22年12月15日以降の一時金の調整加算金の支払、②一時金、賃金の支給額についての誠実団体交渉応諾、③組合との合意のない一時金の減額及び夏季と冬季の支給配分変更の禁止、④平成22年度及び同23年度の一時金の減額分の支払、⑤組合との合意のない賃金減額の禁止及び平成23年7月分以降の賃金減額分の支払、⑥組合員の労働条件について組合員に対する個別交渉の禁止及び組合員の懲戒処分についての団体交渉応諾、⑦組合の副執行委員長が出席することを理由とした団体交渉拒否の禁止並びに副執行委員長の謝罪及び交渉担当者の変更を団体交渉開催の条件とすることの禁止、⑧平成21年度以降の福利厚生資金の支払並びに福利厚生資金の支給額及び支給方法についての誠実団体交渉応諾、⑨組合の事務所での団体交渉開催拒否の禁止、⑩組合の分会事務所及び掲示板の回復並びに分会事務所等の設置についての誠実団体交渉応諾、⑪謝罪文の掲示及び交付、⑫土曜日を含む休日の工場の稼働(以下「土曜稼働」という。)についての誠実団体交渉応諾を、救済内容として申し立てた事件である。
2 大阪府労委は、会社に対し、土曜稼働に係る団体交渉応諾(上記⑫)及び組合の副執行委員長の出席を理由とする団体交渉拒否等が不当労働行為であると認められたことに係る文書の組合への手交(上記⑦)を命じ、その余の申立てを棄却した。
3 会社及び組合は、これを不服として、中央労働委員会に、それぞれ再審査を申し立てた。中労委は、各再審査申立てをいずれも棄却した。
4 組合は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、組合の請求を棄却した。
5 組合は、これを不服として東京高裁に控訴したが、同高裁は、組合の控訴を棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 当審における訴訟費用(補助参加により生じた費用を含む。)は控訴人の負担とする。  
判決の要旨  第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、組合の申立てに係る被控訴人の行為については、いずれも不当労働行為に該当せず、本件再審査命令は適法であると判断する。その理由は、以下のとおり改め、2に控訴理由に鑑み判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1から7までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(以下略)
2 控訴理由について
(1)争点(1)(調整加算金)について
 調整加算金は、C1社及びC2生コン社当時から支給されていたが、A2組合員は、会社が主張する年齢要件に該当する期間(平成11年度から平成18年度)、C2生コン社の神戸工場に勤務していたのに、この間同組合員に調整加算金が支給されたことはなく、調整加算金は、従前から未組織労働者を対象としていたのであり、会社はC2生コン社から「従前の調整加算金の内容をそのまま引き継いだ」から、不利益取扱いに当たると主張する。
  しかし、前記第3の1(1)で説示したとおり、会社が、非組合員に支給するとの従前の慣行も踏襲したものとは認められないから、組合の上記主張は採用できない。
(2)争点(2)(平成22年度冬季一時金及び平成23年度夏季一時金減額に係る団体交渉)について
 ①平成22年度冬季一時金について、会社が冬季一時金を減額支給するまでに開催された団交は、22.11.15団交の1回だけであり、この団交においても、会社が経営状況について一方的に説明しただけであって、実質的な話合いは一切されていない、一方的に減額支給した「後に」団交を開催したことをもって、合意形成に向けた交渉が誠実に行われたと評価することはできないと、②平成23年度夏季一時金について、会社が23.3.31会社回答書で当初の提案をした時点で、平成22年度冬季一時金の減額について合意に至っておらず、このような状況で、当初の提案を撤回したからといって、また、会社の経営状況について「具体的」に説明したからといって、その説明が一方的で、実質的な話合いがないままに減額支給が行われたから、誠実な交渉であると評価することはできない、減額支給を行った「後」に、当該一時金に係る交渉を継続したことや、決算報告の書面を提示したことをもって、合意形成に向けて誠実に交渉したと評価するべきでないと、③19.4.4協定書について、その文言が、「労使合意の上で円満に行う。」から「労使同意の上で円満に解決する」に変更されたからといって、組合員の労働条件を変更するために労使の事前の合意を要するか否かという重大な事柄について含意していると解するのは、明らかに不合理であり、文言上の相違はあっても、組合員の労働条件を変更するためには、労使の「同意」が必要であることに変わりはないと主張する。
  しかしながら、①については、引用に係る原判決の説示(第3の2(2)ア)のとおり、冬季一時金の支給前の団交が1回にとどまったのは日程調整の結果であったこと、当該団交において、会社は減額の理由となる会社の経営状況について具体的な説明をし、組合側の意見や質問についても対応をしていること、交渉が減額支給後にも行われたのは、会社が、合意不成立を理由に冬季一時金の支払を遅延することはせず、争いのない範囲で支給時期に冬季一時金の仮払を行ったからであることからすれば、会社の対応が不誠実であるとはいえない。
  ②については、引用に係る原判決の説示(第3の2(2)イ)のとおり、会社は、減額の理由となる会社の経営状況について具体的な説明をし、当初の提案を撤回したり、決算報告の書面を提示するなどして、合意達成の可能性を模索するための相応の対応をしていたものといえるから、会社の対応が不誠実であるとはいえない。
  ③については、引用に係る原判決の説示(第3の2(3))のとおり、従前の協定書で定められていた事前協議同意約款は19.4.4 協定書において変更されたものと認めるのが相当である。
(3)争点(3)(平成23年7月分から同24年3月分までの賃金減額に係る団体交渉)について
 引用に係る原判決の説示(第3の3(1)イ)のとおり、会社は、賃金減額の必要性について具体的に説明し、団体交渉を重ねた後、賃金を減額する月数を限る提案をするなどしたものであり、会社の対応は、合意達成の可能性を模索するための相応の対応であったと認めることができるから、不誠実な対応ということはできない。
(4)争点(4)(福利厚生資金)について
 福利厚生資金については、引用に係る原判決の説示(第3の4(1)ア)のとおり、15.11.8協定書以降も、各年度の春闘交渉を経てそれぞれ当該年度において合意に至っていたと認められるから、15.11.18協定書の記載を考慮に入れても、少なくとも会社において各年度の交渉や合意の有無を問わず支給するとか、各年度の協定が組合の主張する慣行を確認するものにすぎないとの認識を有していたとは認められない。
(5)争点(5)(A1組合員に対する通知)について
 引用に係る原判決の説示(第3の5(2))のとおり、会社が懲戒処分を行うに当たって、処分の対象者から処分理由についての事情を聴取するとともに、懲戒処分の決定に先立ち、弁明の機会を与えること自体は、処分対象者の賃金・労働条件等に変更をもたらすものではない上、懲戒のための手続保障の観点から適切な行為であり、また、会社が懲戒処分に先立って必要な手続をとることは妨げられないのであるから、A1組合員に上記通知をすることは、義務的団交事項には当たらず、組合活動への介入行為になるものではない。
(6)争点(6)(団体交渉場所)について
 引用に係る原判決の説示(第3の6(2)及び(3))のとおり、会社は、団体交渉それ自体を拒否していたものではなく、会社が組合事務所以外での団体交渉開催を求めたことに全く理由がなかったとはいえず、組合事務所での団体交渉開催に応じられない理由も具体的に説明しており、また、会社が中立的な場所での団体交渉を行うなどしていることにも照らすと、正当な理由のない団体交渉拒否にも支配介入にも当たらないというべきである。
(7)争点(7)(X2分会事務所及び掲示板撤去)について
 引用に係る原判決の認定(第3の7(1))するとおり、A3組合員は、自らX2分会がなくなるとして分会事務所の明渡しや掲示板の撤去を申し入れたことが認められ、同分会は、組合員が一人も存在しなくなり、実質的に消滅したものというべきであるし、そのような事実認識の下で、会社はX2分会事務所の明渡しと掲示板の撤去をしたと認められるのであるから、会社には支配介入の意思があったと認めることはできない。組合が、A3組合員が分会事務所の明渡しや掲示板の撤去を行うことを全く想定していなかったとしても、組合の内部事情にすきず、上記認定は左右されない。
(8) 以上から、組合の主張はいずれも採用できない。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成23年(不)第63号・24年(不)第51号 一部救済 平成25年10月15日
中労委平成25年(不再)第77号・第79号 棄却 平成27年1月21日
東京地裁平成27年(行ウ)第371号 棄却 平成28年4月14日
最高裁平成29年(行ツ)第66号・平成29年(行ヒ)第65号 上告棄却・上告不受理 平成29年9月7日
 
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