労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成23年(不)第63号・24年(不)第51号 
事件番号  大阪府労委平成23年(不)第63号・24年(不)第51号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y 
命令年月日  平成25年10月15日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①組合員に対し、一時金の調整加算金を支給しないこと、②平成22年度冬季及び23年度夏季の一時金並びに23年7月分からの賃金減額に係る団交で不誠実な対応をしたこと、③組合員Hに対し、懲戒処分に係る弁明の機会について通知したこと、申立人組合の副執行委員長の出席を理由に上記懲戒処分に関する団交を拒否したこと等、④組合に対する福利厚生資金の支給を中止したこと、⑤組合の事務所での団交開催を拒否したこと、⑥組合の分会事務所及び組合掲示板を撤去したこと、⑦土曜稼働に係る団交申入れを拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は会社に対し、上記⑦の団交の応諾及び文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、平成24年3月10日付けで申立人から申入れのあった土曜稼働に係る団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日
   X労働組合
    執行委員長 A 様
株式会社Y
代表取締役 B
   当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
  (1)平成24年1月27日に開催が予定されていた団体交渉について、貴組合副執行委員長C氏の出席を理由として拒否したこと並びに同副執行委員長の当社への謝罪及び団体交渉担当者の変更を団体交渉開催の条件としたこと。
  (2)平成24年3月10日付けで貴組合から申入れのあった土曜稼働に係る団体交渉に応じなかったこと。

3 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員に対し、一時金の調整加算金を支払わないことについて
 調整加算金の支給は、被申立人会社に以前、事業を譲渡した申立外Z社で慣行として行われていたもので、年齢50歳以上57歳未満の未組織従業員が対象とされていた。会社はこの慣行を漫然と踏襲していたものであり、また、申立人組合が問題としている組合員2名は上記の支給対象年齢ではなかったとする会社の主張が明らかに不合理であるともいえない。したがって、会社が、両人が組合員であるが故に、ことさらに不利益に取り扱って支給しなかったものとはいえない。
2 平成22年度冬季及び23年度夏季の一時金等に関する団交での会社の対応について
 22年度冬季一時金に関する団交において、会社は一時金の減額理由について経営再建中であること等を説明して回答し、また、一時金を仮払いとして支給しており、その後の交渉が拒否されているとの疎明はない。23年度夏季一時金に関しても、業績の赤字等の減額理由を示して回答し、団交は継続的に開催され、会社が回答を拒否しているとの疎明はない。以上のことからすると、会社の対応は不誠実とまではいえない。賃金減額に関する団交に関しても同様である。
3 組合員Hに対し、懲戒処分に係る弁明の機会について通知したこと等について
 会社が懲戒処分の理由としたHの行為は組合活動に参加した際のものと推認できるが、処分決定に先立ち、同人に弁明の機会を与えたその手続自体に問題があるとはいえない。また、会社はHの懲戒処分について組合と団交を複数回行っており、文書提出の機会も与えているのであるから、組合員を組合から孤立させたり、組合の弱体化を図ったものとはいえない。
 会社は組合の副執行委員長の出席を理由に団交を拒否したことについて、平成24年1月に行われた違法な組合活動を主導した同人を交えると、双方が感情的になって正常な団交になり得ないと考え、同人が同席しない形で団交を行うことを要望したのであり、団交拒否ではない旨主張する。しかし、仮に上記の組合活動により何らかの問題が生じたとしても団交を通して解決することも可能であり、団交以外の場で行われた同組合活動を主導していたとの理由で同人が出席する団交に応じないとする会社の対応は正当とはいえない。
4 組合に対する福利厚生資金の支給を中止したことについて
 平成21年度以降、組合と会社との間で福利厚生資金についての協定が成立しておらず、会社はそれを支給していないこと、及び会社は22年度の春闘交渉に係る回答書において、23年6月末までに年間3万円を会社の福利厚生事業の一部補助として支出する旨回答したことなどが認められる。
 組合は、20年度以前は組合員1人当たり10万円支給されており、そうすることが慣行として確立されていたにもかかわらず、会社は一方的に異なる内容の回答をしてきた旨主張する。しかし、認定した事実によれば、支給額は各年度の春闘交渉での合意により決められていたのであり、上記のような慣行があったとまではいえない。
 もっとも、福利厚生資金の支給額等を変更するに当たっては、組合と誠実に協議すべきであるが、会社はその金額及び取扱いについて、一定の説明をした上で回答しており、団交における会社の対応が不誠実であったとまではいえない。また、21年度以降の不支給については、労使協定が締結されていないのであるから、それが支配介入に当たるともいえない。
5 組合の事務所での団交開催を拒否したことについて
 会社は、組合が違法な業務妨害行為等を繰り返したことから、会社が従業員等の身の安全を図るとともに、団交を平穏に行うために、組合事務所での団交を差し控えることには合理的な理由がある旨主張する。22年5月、組合員約100名が参加して会社に対する抗議活動が行われ、その後、刑事事件となったこと等からすれば、会社が組合事務所以外での開催を求めることに全く理由がなかったとはいえず、また、会社は中立的な場所としてホテルの一室での開催も提案しており、会社工場での開催に固執していたともいえない。また、その後の開催場所が会社工場であったことにより交渉が妨げられたなどとする疎明もない。以上のことからすると、会社が組合事務所での開催に応じなかったことが不誠実であるとともに支配介入であるとまではいえない。
6 組合の分会事務所及び組合掲示板を撤去したことについて
 23年5月、会社P工場の唯一の組合員であったEが組合脱退後、組合P分会がなくなることを理由に組合掲示板を撤去し、P分会事務所を会社に対して明け渡したことが認められる。
 会社による事務所貸与の趣旨は分会の存在を前提としたものであって、組合と会社との間に、分会員が1人もいない状況においても組合が引き続き使用する旨の合意があったとの疎明はない。また、上記の明渡しがあった後の団交において、会社がEの組合脱退の件について確認した際、組合から特段の異議は出されていない。EがP分会事務所を明け渡したことについて、組合の黙示の同意があったとみられてもやむを得ない。
 以上のとおりであるから、P分会事務所の明渡しを受ける前に会社がそれについて組合と協議していないとしても、当該明渡しを受けた会社の対応が団交拒否及び不誠実団交に当たるとはいえず、また、会社が一方的に廃止したものではないから支配介入に当たるともいえない。
7 土曜稼働に係る団交申入れを拒否したことについて
 会社は、土曜稼働を行ったP工場等には組合員は1人も働いておらず、また、Q工場の組合員に出勤してもらう状況でもなかったことから、本件土曜稼働は義務的団交事項には該当せず、会社が組合の要求を拒否することには正当な理由がある旨主張する。しかし、P工場等で土曜稼働が行われる場合にQ工場の従業員が応援要請により就労する可能性がないことはなかったのであるから、この会社の主張は採用できない。以上のことからすると、会社が団交申入れに応じないことに正当な理由はない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成25年(不再)第77号・第79号 棄却 平成27年1月21日
東京地裁平成27年(行ウ)第371号 棄却 平成28年4月14日
東京高裁平成28年(行コ)第187号 棄却 平成28年11月10日
最高裁平成29年(行ツ)第66号・平成29年(行ヒ)第65号 上告棄却・上告不受理 平成29年9月7日
 
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