概要情報
事件名 |
沖縄セメント工業株式会社 |
事件番号 |
沖労委平成25年(不)第2号 |
申立人 |
全日本港湾労働組合、同沖縄地方本部 |
被申立人 |
沖縄セメント工業株式会社 |
命令年月日 |
平成26年3月13日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
被申立人会社が①人事考課制度に関する団交の申入れを拒否したこ
と、②2012年秋年末要求に係る団交において不誠実な交渉態度をとったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあっ
た事件である。
沖縄県労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
申立人らの請求をいずれも棄却する。 |
判断の要旨 |
1 団交拒否について
認定した事実によれば、申立人組合が被申立人会社に対し、査定結果の開示及び人事考課制度等に関する事項を議題とする団交
の申入れをしたのに対し、会社は書面によって回答するのみで、団交に応諾しなかったことが認められる。
しかし、組合が査定結果の開示を求めた趣旨は賞与の上積みのためにあると認められるところ、会社は開示の可否についても賞
与に関する団交において話し合われるべきものと考えていることを記載して回答している。また、昇給や賞与に関する団交とは別
の機会での団交の必要性を指摘する組合の主張に対しては、査定業務の終了を待たずに、これと並行して冬季賞与の団交に応じる
こともできると回答しているのであるから、組合の申入れに対する交渉の機会が失われたということはできない。
これらによれば、会社が、組合が掲げた交渉事項を拒否する態度に出たものとは認められないので、上記の団交不応諾をもって
労組法7条2号の「拒む」に該当するとは認め難い。
2 不誠実交渉について
(1)第1回団交について
会社は、組合の基本給の35割支給を求める2012年秋年末要求に対し、業況に関する資料を提示し、会社の営業成績及び資
金繰りの見込み等について説明するなどしており、組合からの質問や説明要求に対してはいずれもその趣旨に合致した応答をして
いると認められる。また、査定結果が覆る可能性についての組合の質問に対しては、査定結果が交渉で変更されることはないとし
つつも、支給率については上積み要求があれば、持ち帰って検討するとも述べている。以上のような会社の団交に臨む姿勢及び交
渉時のやりとりからすれば、会社の対応が不誠実なものであったとは認められない。
(2)第2回団交について
会社は、従業員全体の平均支給率や全国の平均支給率との比較説明を行って前回提示額には合理的根拠があると主張し、かえっ
て組合が求めた一律5万円の上積み要求には根拠がないと応答した。また、査定結果の開示については、人事考課制度のあり方等
は会社の裁量に委ねられていることや査定業務の適正確保上、問題が生じたことなどを説明した。会社の交渉態度には、従前の説
明を繰り返している部分もあるものの、質問の趣旨を適切に把握して必要な説明を付加したり、無用の混乱を避けて交渉議題に集
中するなどの努力をしているものと評価できる。
会社の説明には法令や先例が繰り返し援用されているところがあるため、組合の主張を全く考慮しないという姿勢のように見え
なくもない。しかし、このような発言の真意としては、査定結果を開示しないこととした会社の方針変更を説明するための補強材
料とみられるから、このことのみをもって、組合の主張を一顧だにしないとまで断ずることは相当でない。
したがって、会社の対応が不誠実なものであったとはいえない。
(3)第3回団交について
会社の説明はほぼ尽き、従前の説明を繰り返すものに等しくなっている。そのため、組合が、結局は会社の提案を受け容れるし
かないということかと質問したのに対し、会社は、結果としては会社の回答は変わらなかったが、それは思い切った掛け値なしの
数字を提示したことによるものであると回答している。このような交渉手法が不合理であるとはいえないし、会社はこのことにつ
いて理解を求めており、合意に至ろうとする姿勢を崩していないといえる。また、組合が支給率についての交渉を選択せずに、一
律上積み要求という方向を採用したため、査定結果に基づく以上、支給額は一律にはならないという会社の当初からの方針と明ら
かに抵触する方向に交渉を転進させてしまったことは拭えない。
このようなことからすると、会社の対応について不誠実であるとはいえない。 |
掲載文献 |
|
|