労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁平成29年(行コ)第299号
沖縄セメント工業再審査命令取消請求控訴事件
原告  X株式会社(「会社」) 
被告  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被告補助参加人  Z1労働組合 
被告補助参加人  Z1労働組合Z2地方支部(「組合」) 
判決年月日  平成30年4月12日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、① 組合からの平成24年8月18日付け、9月10日付け及び同月21日付けの人事考課制度等の問題を議題とする団体交渉の申入れ(「本件制度団交申入れ」)に応じなかったこと、② 組合との間の平成24年11月20日、同年12月5日及び同月20日の平成24年冬季一時金要求等についての団交(「本件一時金団交」)において誠実に対応しなかったことが労働組合法第7条第2号の不当労働行為であるとして、沖縄県労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審沖縄県労委は、会社の対応はいずれも不当労働行為に当たらないとして、上記救済申立てを棄却したところ、組合らは、これを不服として、再審査を申し立てた。
3 中労委は、上記救済申立てを棄却した初審沖縄県労委命令を取り消し、会社に対して、①人事考課制度等の問題を議題とする団交申入れへの速やかな応諾、②一時金に関する団交において、組合員各人の査定の根拠を具体的に説明して、誠実に交渉すること、③文書交付、を内容とする救済命令を発した。
4 会社は、これを不服として、東京地裁に再審査命令の取消を求める行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求は理由がないことから、これを棄却した。
5 会社は、これを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は、会社の控訴は理由がないことから、これを棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  当裁判所の判断
1 当裁判所も,会社の本件請求は理由がないと判断する。その理由は,当審における当事者の主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから,これを引用する。
2 当審における当事者の主張について
(1) 争点1(本件制度団交申入れにおける会社の対応の不当労働行為該当性)について
ア 会社は, 本件制度団交申入れを拒否したことはなく, 組合は,一時金等の上乗せ要求のために人事考課結果表の開示を求めていたにすぎず,苦情処理機関の設置は団交における要求事項とはされておらず, 会社にもそのような認識はなく,要求事項に対しては誠実に対応していると主張する。
イ しかしながら, 本件制度団交申入れに至る経緯においては,会社は,平成24年8月2日の団交において,査定結果について意見を述べる場がほしいとの要望があれば聞くと述べたほか,査定結果の開示やフィードバックの制度について,このことを協議するための機関の設置を検討するとも述べており,組合から協議を求められているのが, 査定結果の開示の可否のみならず,それ以外の問題を含む人事考課制度の在り方にかかわる問題であることを理解していたこと,このような状況の下で,組合は,「査定結果開示等問題解決策」のみを議題とする8.18申入れを行い, さらに交渉事項を「①査定項目及び査定方法について,②査定結果を労働条件に反映する方法について,③査定結果を従業員に開示する範囲,時期,及び方法について,④査定制度の在り方等を検討する労使協議機関の設置について」の4項目として,人事考課制度の在り方については春闘や一時金の交渉とは別個に団交を行うことを求めて,9.10申入れを行ったこと,本件制度団交申入れに至る経緯等に関する諸事情を総合すると,本件制度団交申入れは, 従前から交渉の議題であった人事考課制度の在り方について, 春闘や一時金の交渉とは別個に団交を行うよう求めることを明確にしてされたものであるから,人事考課が一時金に直接影響を及ぼすものであることを考慮しても,組合において,専ら一時金との関係のみをもって本件制度団交申入れに及んだと認めることはできないこと,そうすると,本件制度団交申入れによる団交は, 一時金の増額等を直接要求するために行われる団交とはその趣旨が異なるものであり,会社は,本件制度団交申入れに対して,平成24年冬季一時金に関する要求を待って一括して団交に応じれば足りたということはできず,同要求を待つことなく速やかに団交に応ずべき立場にあったというべきであるこから、組合は,一時金等の上乗せ要求のために人事考課結果表の開示を求めていたにすぎず,苦情処理機関の設置は団交における要求事項とはされておらず,会社にもそのような認識はなかったとの会社の上記主張は,採用することができない。
ウ そして,控訴人は,9.10申入れに対し,相当期間内である平成24年9月21日に,同年10月には協議に応じる用意があると回答し,査定業務の終了を待たずに冬季一時金の団交に応じることもできる旨回答しており,団交を拒否したものではないと主張するけれども,上記回答は,本件制度団交については,一時金団交の中で交渉することを前提にしたものであり,これとは分けて行うことを求めた本件制度団交申入れを拒否したものと解される。
エ 会社は,査定結果が一時金提示額の根拠の一部となっているとして,一時金等の上乗せ要求のために人事考課結果表の開示に固執していたのは組合であって,会社は,団交申入れの内容に応じて回答をしたにすぎず,誠実に対応していたと主張する。
  しかしながら, 本件制度団交申入れに至る経緯等に関する諸事情を総合すると,組合の本件制度団交申入れは, 従前から交渉の議題であった人事考課制度の在り方について,春闘や一時金の交渉とは別個に団交を行うよう求めることを明確にしてされたものであるから,人事考課が一時金に直接影響を及ぼすものであることを考慮しても,組合において,専ら一時金との関係のみをもって本件制度団交申入れに及んだと認めることはできない。
オ 会社は,仮に団交の拒否に当たるとしても,人事考課の過程に至る資料の開示を求められた場合,労務管理上の問題を理由にこれを拒否しても正当な理由となるし,従前,人事考課結果表を開示したことによりトラブルが生じたことに照らし,考課査定の経過をすべて明らかにすることは,考課を行う側の意思決定の経過や査定する者個人の考え方を示すこととなり,今後の会社における人事考課査定や労務管理を適正に行うことを困難にすることは明らかであり,その対応は正当であると主張する。
  しかしながら,会社の主張するようなトラブルがあったとしても,会社が主張する問題点は,団交に応じた上で査定結果の開示に伴う問題点として交渉の過程において処理していくべきものであって, 団交そのものを拒否する正当な理由に当たるとはいえない。
カ 会社の主張はいずれも採用することができない。
(2) 争点2(本件一時金団交における会社の対応の不当労働行為該当性) について
ア 会社は,本件一時金団交において,組合の要求や主張に対し,その具体性や追及の程度に応じた回答や主張をしており,誠実に対応していると主張する。
イ しかしながら,本件一時金団交における会社の交渉態度をみると,会社は, 組合が査定の根拠について質問する都度,査定結果すなわち人事考課結果表そのものを開示すると業務に支障が生じるおそれがあり,法律及び判例により開示しなくともよいと述べるほか,人事考課における裁量権を主張して,人事考課結果表の開示を拒否するのみで, 組合の質問に対する回答はせず,査定の根拠を具体的に説明しなかったものであり,このような会社の対応は,査定結果の説明において採るべきであった交渉態度に照らせば,会社の支給額の回答に係る査定の根拠を説明するものとはいえず,不十分なものであったといわざるを得ない。
ウ 会社は,査定結果及び査定方法の開示の要求に対しても,人事考課制度に対する会社の考え方を説明し,査定方法についても具体的に説明するなど,誠実に対応していると主張する。
  しかし,会社は,組合員ごとの支給率,支給テーブルを既に開示しているものの,これら資料のみでは組合員各人のおおよその総合評点が分かるにとどまり,規律性等の評定要素ごとの評点や評価区分が示されていない以上,総合評点に至る経過は不明のままであって,査定の根拠が具体的に明らかになるとはいえないこと,会社は,組合が説明を求める査定の根拠について具体的な説明をしていないから,平成24年冬季一時金について,自らが回答した組合員各人に対する支給額の算定根拠を明らかにしているとはいえず,自らの回答の根拠を具体的に説明するなどして,組合の要求,主張に対して回答及び反論を行ったとはいえないこと,査定方法等について,会社は,本件一時金団交前に既に,組合に人事考課規程を提供し,11.20団交において,自己申告から最終評定までの流れ,査定項目や各項目の配点について説明しているものの,会社の説明は,人事考課制度の解説に終始するものであって,平成24年冬季一 時金について,団交における組合の要求を踏まえて,自らが回答した組合員各人に対する支給額の算定根拠を明らかにしたものと評価することはできず,会社が,組合の追及の程度に応じた誠実な対応をしていたと認めることができない。
エ 会社は,組合から,具体的な主張や追及がされていないとも主張するが,組合は,組合員各人に対する支給額の根拠である査定の根拠について具体的な説明を求めるとともに,組合員の評定要素ごとの査定結果が開示されなければ会社の回答に対して具体的に反論できないとして,組合員の評定要素ごとの査定結果の開示や査定により組合員間の支給率に差が生じた理由についても説明を求めていたものであり,したがって,組合が本件一時金団交における要求事項との関連において具体的な主張をしていなかったとも,人事考課結果表の開示を求めることに終始していたともいうことはできない。
オ 会社の主張はいずれも採用することができない。
3 よって,会社の本件請求を棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから棄却することとする。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
沖縄県労委平成25年(不)第2号 棄却 平成26年3月13日
中労委平成26年(不再)第22号 全部変更 平成28年3月2日
東京地裁平成28年(行ウ)第168号 棄却 平成29年8月28日
 
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