労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  明治 
事件番号  都労委平成6年不第55号 
申立人  X1~X32(個人) 
被申立人  株式会社明治 
命令年月日  平成25年6月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人会社が申立人らの組合活動を嫌悪し、同人らを不利益に取り扱うため、会社の職分・賃金制度の下で、他の組合員と差別して昇給・昇格を行い、その結果として組合の運営に支配介入する不当労働行為を行ったとして、救済申立てがあった事件である。
 東京都労委は、申立期間を徒過してなされた申立て等を却下し、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 申立人X19及び同X32の申立てを却下する。
2 申立人X19及び同X32を除く申立人30名の平成元年度ないし4年度における昇給・昇格差別に係る申立てを却下する。
3 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨   本件で問題となっているのは、申立人らに対する人事考課における低位な成績評定が不当労働行為意思に基づくものであるかどうか、それ自体が不当労働行為を構成するかどうかであるので、かかる観点から、消極的評価につながったとして被申立人会社が挙げている事実の認定及びその事実の評価が不当労働行為意思に基づくものであったのか否かについて検討することにする。
 会社の人事考課制度において昇格・昇給の決定に反映される総合評定成績は、AからFまでの6段階の評定段階で決定され、Cが標準とされている。平成5年度の評定段階がD以下となった申立人15名についてみると、申立人らは、会社がD以下の評定の理由として挙げる作業ミス等の事例について、その存在そのものを否認したり、その責任が当該申立人のみにあるとはいえない旨主張したり、あるいは会社が根拠としている報告書等には事実誤認や公正さに欠ける記載があるなどと主張する。しかし、申立人ら以外の従業員が同様のミスをした場合であっても、その者らが申立人らと比較して高い評定を受けていたという事実や、会社の不当労働行為意思に基づいて低位な評定がなされた事実など、当該D以下の評定が合理性を欠く査定に基づくものと評価するに足りる事実の疎明があったとすることは困難である。逆に、会社が挙げた事例に示されるミスの存在を認め、あるいはミスの存在を認めつつ、その評価を争う旨の反論があり、そうだとすると、少なくとも、これらの事例に係るミスの存在自体は争いのない事実であるというべく、このことは会社の上記査定の合理性を一定程度裏付けるものといえる。
 ところで、申立人らは、会社は申立人らの組合活動を嫌悪し、各支部内におけるインフォーマル組織(労使協調路線を採る自主的な組織)の結成と組合役員選挙に対する介入など様々な手段により、組合と各支部の運営に介入したなどと主張する。しかし、申立人らは、かかる自主的組織の成立やその活動について会社の具体的な関与を裏付けるに足りる事実の疎明をしておらず、また、自主的組織の結成後の役員選挙において申立人らが落選するようになり、自主的組織が推薦した者が当選したことについて会社が積極的に関与していた事実を裏付けるに足りる疎明もしていない。そうすると、自主的組織の成立や役員選挙への会社の関与を通じて、会社が「階級的民主的組合活動」を行っていた申立人らの活動を集団として嫌悪していたと認めることは困難である。
 このように申立人らは会社が同人らを集団として嫌悪していたとの事実を具体的に疎明できていないこと、会社の人事制度については人事考課の枠組みが明確に定められ、また、これらの内容が従業員に開示されるなど一応の合理性が認められること、その他、申立人らに係る低査定が同人らの組合活動を理由とした差別であると窺わせる特段の事情もないことからすれば、当事者が主張・反論する事実は、申立人らの人事考課成績の低位性を基礎付け、あるいはそれを弾劾する可能性があるとしても、不当労働行為意思に基づくものであるという評価に結び付くものとはいえない。したがって、かかる人事考課成績に基づいてなされた職分・号級格付行為も不当労働行為に当たるとはいえない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成25年(不再)第47号 棄却 平成29年1月11日
東京地裁平成29年(行ウ)第149号・第375号 棄却 平成30年11月29日
東京高裁平成31年(行コ)第6号 棄却 令和2年1月30日
最高裁令和2年(行ツ)第147号・令和2年(行ヒ)第159号 上告棄却・上告不受理 令和2年10月15日
 
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