労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁平成31年(行コ)第6号
明治不当労働行為再審査申立棄却命令取消請求控訴事件 
控訴人  X1~X36(承継人を含む)(「控訴人ら」)  
被控訴人  国(処分行政庁 中央労働委員会) 
参加人  株式会社Z(「会社」) 
判決年月日  令和2年1月30日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、本件控訴人らの組合活動を嫌悪し、同人らの平成元年度から5年度の昇格・昇給を他の従業員と差別して不利益に行い、その結果、組合の運営に支配介入したことが労組法7条1号及び同3号の不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、死亡した2名の救済申立て及びその余の30名の平成元年度から4年度の昇格・昇給差別に関する救済申立てを却下し、その余の救済申立てを棄却したところ、これを不服として再審査が申し立てられたが、中労委は、初審命令を維持して再審査申立てを棄却した。
3 これを不服として東京地裁に行政訴訟が提起されたが、同地裁は、原告らの請求をいずれも棄却した。
4 これを不服として東京高裁に控訴したが、同高裁は、控訴人らの控訴をいずれも棄却した。 
  
判決主文  1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 
判決の要旨  1 当裁判所も、本件救済申立てのうち、平成4年度以前の昇格等差別についての申立ては不適法であり、平成5年度の昇格等差別についての申立ては理由がなく、これと同旨の中央労働委員会の命令は相当であると判断する。その理由は、次のとおり加除訂正(注:(2)以外は省略)するほかは、原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」1から4までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)原判決40頁1行目から24行目までを次のとおりに改める。
 「(ウ)これに対し、控訴人らは、救済命令において累積格差の一括是正をする前提として、申立日から遡って1年の期間内における不当労働行為の成立が認められるには、同期間内の賃金支払及びこれに対応する昇格等決定行為において、それ以前の昇格等決定行為によって生じた職分等格差を解消しないまま維持する不利益な取扱いがあれば足り、新たに差別査定がされることは要しない旨主張する。
 しかし、控訴人らの上記主張は、職分等格差を発生させる原因となった昇格等決定行為については除斥期間が経過し、これを不当労働行為とする救済申立てをすることができない場合においても、当該行為により発生した職分等格差が是正されない限りは、直近の昇格等決定行為について、職分等格差の存在自体を理由に不当労働行為であるとして救済申立てをすることができるというものにほかならない。
 そもそも、労組法27条2項が、労働委員会は、使用者が同法7条の規定に違反した旨の申立てが、行為の日(継続する行為にあってはその終了した日)から1年を経過した事件に係るものであるときは、これを受けることができないと規定する趣旨は、行為のときから長期間を経過した後になって不当労働行為として申し立てられても、労働委員会としては、証拠収集や事件の実情把握が困難となり、事件の適切な処理を行い得ない事態が生じかねず、また、救済命令を出しても実益がないか、かえって労使関係の安定を害するおそれがあるという制度的理由、公益的理由に基づくものであるところ、仮に、このような申立てを容認することになれば、結局のところ、職分等格差を発生させる原因となった過去の不当労働行為についての救済申立てを、期間の制限なく認めることに等しい結果をもたらし、そうすると、除斥期間が定められた上記のような制度的、公益的な趣旨を没却する結果を招来することになるのである。よって、控訴人らの上記主張は採用することができない。」

2 以上によれば、控訴人らの請求はいずれも理由がないから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由がないから、これを棄却する 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成6年不第55号 棄却 平成25年6月18日
中労委平成25年(不再)第47号 棄却 平成29年1月11日
東京地裁平成29年(行ウ)第149号・第375号 棄却 平成30年11月29日
最高裁令和2年(行ツ)第147号・令和2年(行ヒ)第159号 上告棄却・上告不受理 令和2年10月15日
 
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