概要情報
事件名 |
中外臨床研究センター
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事件番号 |
中労委平成23年(不再)第44・45号
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44号再審査申立人 |
株式会社中外臨床研究センター(以下「会社」)
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45号再審査申立人 |
東京・中部地域労働者組合(以下「組合」)
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44号再審査被申立人 |
東京・中部地域労働者組合
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45号再審査被申立人 |
株式会社中外臨床研究センター
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命令年月日 |
平成25年1月16日
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命令区分 |
棄却
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重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、①X組合員の雇用の継続等を議題とする団体交渉申入れを拒否したこと、②X組合員に契約期間を6か月間とする雇用契約に署名しなければ雇止めとなる旨の通知をし、これに署名しなかったことを理由としてX組合員を雇止めしようとしたことがそれぞれ不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労働委員会は、上記①については不当労働行為に該当するとして団体交渉応諾及び文書掲示等を命じ、上記②については不当労働行為に該当しないとして棄却した。会社及び組合は、これを不服としてそれぞれ再審査を申し立てた。
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命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
1 会社がX組合員の雇用の継続等を議題とする団交に応じなかったことについて
ア 会社は、団交申入れを拒否した理由として、業務が繁忙であったなどと主張するが、組合が求めた団交の議題は、21年12月31日で契約期間が満了となるX組合員の雇用の継続に関する極めて重要かつ緊急を要する申入れであったところ、会社は、業務繁忙の状況であったとしても、ただ単に回答猶予を求めるという対応しかできないほどの状況であったことを認めるべき証拠はないから、団交申入れに応じなかったことに正当な理由はない。
イ また、会社は、団交申入れを拒否した理由として、組合が労組法上の「労働組合」であることを明らかにしなかったとも主張するが、会社は、組合に会社の従業員であるX組合員が加入していることを認識し、また、組合がいわゆる合同労組であることを認識しあるいは容易に認識し得たのであるから、団交申入れに応じなかったことに正当な理由はない。
ウ さらに、会社は、団交申入れを拒否した理由として、組合の情宣活動により労使の信頼関係が破壊されたとも主張するが、組合の情宣活動は、通常の組合活動の範囲を逸脱するものであったということはできないから、当該活動が団交を開催することができないほど信頼関係を破壊するものであったとは認められず、団交申入れに応じなかったことに正当な理由はない。
エ 加えて、会社は、団交申入れを拒否した理由として、X組合員の雇用契約が確定的に終了したので団交義務を負わないなどとも主張するが、組合は、X組合員の雇止めを争い団交を申し入れているのであって、本件救済申立て時点で同組合員の雇用関係が終了しているということはできないし、X組合員の雇止めに関する紛争は継続しているから、会社の主張は採用の限りではない。
オ そして、会社は、組合に対し、今後のやり取りは書面によるものとし、架電や面接については、当面、一切拒否することを組合に通告していること、また、会社は、申入れの団交日時について組合に再検討を促すのみで、自らが団交実現に向けての具体的提案を行ったことは何らうかがわれないなどのことを併せ考えれば、会社は、理由の如何を問わず、組合の求める団交の開催を一切拒む姿勢であったものというほかない。
カ 以上のことからすると、組合の団交申入れを拒否する理由として会社が主張するものは、いずれも正当なものと評価することはできず、組合の団交開催要求に会社が応じなかったことは、労組法第7条第2号の団交拒否に該当するものである。加えて、会社の対応は、組合の存在を殊更に無視するものであって、組合の団結権を否認し、さらに組合の交渉力に対して組合員の不信を醸成し、ひいては組合の弱体化をも招来するものということができ、同条第3号の支配介入にも該当すると評価することができる。
2 会社がX組合員を雇止めしたことについて
ア 会社は、遅くとも、X組合員が組合に加入する前である21年12月9日の時点において、①同月31日をもってX組合員を雇止めとすること、②21年内にX組合員が6か月間の雇用契約とすることに合意すれば、その旨の契約を締結することを決定し、X組合員に明示していたと認めることができる。そして、X組合員の組合加入の前後において、会社が、同組合員の雇用問題に関する取扱いを変更した事実は何らうかがわれない。
イ 以上のとおり、会社が、X組合員を契約期間満了(21年12月31日)をもって雇止めにしたことは、X組合員が組合加入前に会社において決定していたことであるから、不当労働行為意思は認められず、また、組合の存在を無視し、組合の団結権を否認する意図も認められないので、労組法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に該当する余地はない。
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掲載文献 |
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