概要情報
事件名 |
中国・九州地方整備局
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事件番号 |
中労委平成23年(不再)第51号
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再審査申立人 |
国(国土交通省)
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再審査被申立人 |
スクラムユニオン・ひろしま(「組合」)
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命令年月日 |
平成24年11月21日
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命令区分 |
一部変更
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重要度 |
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事件概要 |
1 国土交通省中国地方整備局及び九州地方整備局管内の国道事務所等の車両管理業務(公用車の運行等)を受託していた申立外A社が、国の入札方式の変更に伴い、平成21年度の当該業務を一般競争入札において落札できず、業務を受託することができなかったことから、上記業務に従事していた社員を解雇した。本件は、当該社員の7名(「組合員ら」)が加入した組合が、直接雇用(任用)等に関する団体交渉を21年4月15日付けで中国地方整備局長らに対し、4月16日付けで九州地方整備局長らに対し、それぞれ申し入れたが、国が、これに応じなかったことについて、組合から不当労働行為の救済申立てがあった事件である。
2 初審広島県労委は、国に対し、誠実団交を命じ、その余の申立てを棄却したところ、国は、これを不服として、再審査を申し立てた。
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命令主文 |
初審命令主文第1項を取り消し、これに係る救済申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
1 国家公務員法(「国公法」)附則第16条の適用について
国は、一般職に属する国家公務員につき労組法等の適用を排除する国公法附則16条の規定から、本件団交申入れ及び本件救済申立ては不適法となる旨主張する。
しかしながら、本件においては、組合員らは、国に直接雇用を求めてはいるものの、いまだ国家公務員のうちの一般職に属する職員にはなるには至っていないから、国の主張は採用できない。
2 本件団交事項についての国の使用者性について
ア 労組法第7条にいう「使用者」は、必ずしも労働契約上の雇用主に限定されるものではなく、雇用主以外の者であっても、例えば、当該労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者や、当該労働者との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者もまた雇用主と同視できる者であり、これらの者は、その同視できる限りにおいて労組法第7条の「使用者」と解すべきである。
本件の組合員らはA社に雇用されていた者であり、中国及び九州地方整備局の各国道事務所等は、A社との間の車両管理業務委託契約に基づき組合員らを受け入れていたのであって、組合員らとの間に雇用関係は存在しないため、雇用主以外の場合に関する法理が問題となる。
イ (ア)組合員らの中には、1人を除きいずれも、国道事務所等から直接の指示又は連絡を受けるべき立場である責任者等の職務に就いたことがなかったにもかかわらず、これら組合員らについては、それぞれ当時勤務していた国道事務所等の所長や職員から直接口頭で公用車運行の指示を受けていたほか、時間外労働や休日労働等につき直接の指示を受けていた者がいた。これらのことからすれば、組合員らの就労に対しては、直接的な指揮命令があったことが認められる。
(イ)しかしながら、組合の申し入れた団交事項は、組合員らの直接雇用(任用)その他の雇用の確保(例えば、他の就業機会の確保)であったと解するのが相当であるところ、このような団交事項は、(ア)の就労の諸条件に関わるものではなく、組合員らの雇用そのもの、すなわち、採用、配置、雇用の終了(打切り)等の一連の雇用の管理に関する決定に関わるものといえる。
したがって、本件において国道事務所等が労組法上の使用者となるためには、これらの決定について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有している必要がある。
(ウ)そして本件では、組合員らの採用及び配置については、組合員らは、いずれも、国道事務所等とは別個の法人である同社が面接を行うなどして採用し、国道事務所等に配置していた者であった。
また、雇用の終了(打切り)については、組合員らの解雇は、A社の意思によりなされたものというほかなく、国道事務所等が解雇それ自体につき、直接的な関与をしたり影響力を行使したことを認めるに足りる証拠はない。
(エ)以上によれば、国道事務所等は、実質的に見て、組合員らの就労に関する諸条件についてはともかく、上記一連の雇用の管理に関する決定については、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたと認めるには足りず、この観点からは、本件団交事項については、国道事務所等に労組法上の使用者性を認めることはできない。
ウ (ア)国は、A社への車両管理業務の委託につき、広島労働局、福岡労働局及び大分労働局から適正な請負(委託)とは認められない旨指摘を受け、労働者派遣法の要件を満たさない労働者派遣に該当するとして、是正あるいは改善の行政指導を受けている。そして、このことを受け、組合は、車両管理業務の委託はいわゆる偽装請負に相当するとし、国に直接雇用(任用)の義務(労働者派遣法第40条の4)が生じていると主張している。
(イ)しかしながら、本件において、本件団交申入れの時点で国道事務所等が労働者派遣法上の派遣先に該当する者であったと認めるに足りる証拠はないこと等から、同法に基づく、直接雇用(任用)の義務が発生していたと認めることはできない。
(ウ)また、各労働局の、労働者派遣法に基づく行政指導は、国が組合員らを直接雇用(任用)することを特に要請しているわけではない。それゆえ、当該行政指導があったことをもって、国道事務所等に組合員らを直接任用することが求められていたということはできない。
(エ)以上のとおり、国と組合員らとの間において、近い将来において雇用関係が成立する可能性が現実的かつ具体的に存していたと認めるに足りる証拠はなく、この観点からも国道事務所等に労組法上の使用者性を認めることはできない。
3 結論
以上のこと等によれば、本件救済申立てに理由はない。
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掲載文献 |
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