労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東日本旅客鉄道(八王子支社)  
事件番号  中労委平成23年(不再)第21号  
再審査申立人  東日本旅客鉄道株式会社(「会社」)  
再審査被申立人  東日本旅客鉄道労働組合(「組合」)  
命令年月日  平成24年11月21日  
命令区分  一部変更  
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、平成19年2月7日から9日にかけて、組合の7分会における掲示板の7種の掲示物(「本件掲示物」)について、撤去及び当該分会に撤去を通告したこと(「撤去等」)が、不当労働行為であるとして、申立てのあった事件である。
2 初審東京都労働委員会は、本件撤去等は労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとして、文書交付等を命ずる旨を決定し、平成23年3月31日、命令書を交付したところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。  
命令主文   初審命令主文を変更する(本件掲示物7種のうち掲示物①-2、②~⑥の6種を撤去等したことについて今後繰り返さない旨の文書交付を行うこと(残り1種の掲示物①を撤去等したことに係る申立ては棄却)。)。  
判断の要旨  1 本件掲示物の撤去と支配介入の成否について
 本件のように、労使間で組合掲示板の貸与協約(会社・組合間の協約を「本件協約」)が締結されている場合、使用者が撤去する行為は原則として支配介入に該当するが、掲示物の記載内容が「会社の信用を傷つけ、政治活動を目的とし、個人を誹謗し、事実に反し、又は職場規律を乱す」場合に使用者が掲示物を撤去できる旨の規定が置かれているときには、当該掲示物がこれに該当すれば、使用者の掲示物撤去行為は、支配介入にならないと解することができる。
 また、支配介入の成否は、使用者の行為が組合弱体化を招来するおそれがあるかどうかにかかっているのであるから、そうした行為といえるかどうかについては、掲示物の撤去要件該当性のみならず、その性格、その掲示当時の労使事情等諸般の事情も踏まえて総合的に判断すべきである。
2 掲示物①について
 掲示物①は、組合内部における統制手段の情報を伝達するものであるが、組合員Xらの個人名が赤塗りとして殊更に強調して記載され、また、掲示時点では中央執行委員会が同人らに対する中央委員会への制裁申請を決定したに過ぎないのに、同人らが「『組織破壊者』と断定」されたとして大きくかつ強調して記載されている。さらに、同掲示以前、組合内の対立から、組合員に対する脱退及び退職強要の刑事事件等が生じ、同人らに対しても一時期、組合の組合員らから非難・攻撃が行われたことがあったのであるから、会社が再び上記のような事態が発生しないよう職場規律の維持、安全な職場環境の維持・整備について特段の意を用いていたものと推測される。そうした中で、会社が上記記載・表現が含まれる掲示物の掲示について、職場規律の維持の観点から懸念を抱いたことは理解でき、その形状・内容からすると、職場規律が乱れる具体的なおそれがなかったものとはいえない。
 以上からすれば、掲示物①は、本件協約の「個人を誹謗し、・・・職場規律を乱すもの」に該当する蓋然性が高く、会社が同掲示物を撤去等したことは、労組法第7条第3号に該当するとはいえない。
3 掲示物①-2について
 掲示物①-2は、制裁申請が決定したに過ぎない者を「『組織破壊者』と断定」とするなど、その表現には正確を欠き穏当を欠くところはあるが、組合は、会社の指摘を受け、掲示物①の赤塗りを止め、また、個人名部分をイニシャルに修正しこれが誰を指すか直ちに分からなくするなど、個人攻撃を避けるための一定の配慮を行っていることなどから、同掲示物を掲示物①と同一に考えることはできない。このことに加え、掲示物①-2は、「組織破壊者」に対して非難・攻撃を呼び掛けたり、これらの者を名指しで攻撃・糾弾しようとしたものではないこと、組合の団結ないし団結統制に関する内容について情宣されたもので、とりわけ使用者の介入が許されない領域のものであるのに、会社は撤去の通告をするのみで、分会と協議を行っていないことからすると、会社が同掲示物を撤去通告したことは、労働組合法第7条第3号に該当する。
4 掲示物②について
 掲示物②は、本文中に「川を渡ってしまった確信犯」などその表現に穏当を欠くところがあるが、全体としてみれば、上記2の制裁申請を決定したことを報じることを目的としたものと認められる。よって、会社が掲示物②を撤去したことは、労働組合法第7条第3号に該当する。
5 掲示物③ないし⑥について
 掲示物③ないし⑥には、個人名が列挙されているものの、これら掲示物は組合員104名について中央委員会に制裁申請することを決定したことを伝えること等にあったことからすれば、本件協約の撤去要件に該当するとはいえない。仮に会社管理者が会社の指示を誤解したとしても、これが会社を免責させることにはならないし、会社は当該撤去等の回復措置につき具体的な立証をしていないから、掲示物③ないし⑥の撤去等は、労働組合法第7条第3号に該当する。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成19年(不)第68号 全部救済 平成23年3月1日
東京地裁平成25 年(行ウ)第10号 棄却 平成26年1月27日
東京高裁平成26 年(行コ)第60号 棄却 平成26年5月28日
平成26年(行ツ)第352号・平成26年(行ヒ)第376号 上告棄却・上告不受理 平成27年3月12日
 
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