概要情報
事件名 |
東日本旅客鉄道(八王子支社) |
事件番号 |
東京高裁平成26年(行コ)第60号 |
控訴人 |
東日本旅客鉄道株式会社 |
被控訴人 |
国(処分行政庁・中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
東日本旅客鉄道労働組合 |
判決年月日 |
平成26年5月28日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、平成19年2月7日から9日にかけて、組合の7分会における掲示板の7種の掲示物(「本件掲示物」)について、撤去及び分会に撤去を通告したこと(「撤去等」)が、不当労働行為であるとして、申立てのあった事件である。
2 東京都労委会は、本件撤去等は労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとして、会社に文書交付等を命じた。中労委は、初審命令のうち、掲示物①の撤去は不当労働行為に当たらないとしてその救済部分を取り消し、会社のその余の再審査申立てを棄却した。会社が、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を棄却した。
3 本件は、これを不服として、会社が、東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は、会社の控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 当裁判所も,控訴人の本件請求は理由がないと判断する。その理由は、後記2に当裁判所の判断を補足するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当裁判所の判断の補足
(1) 会社は、掲示物①と掲示物①-2及び②に差異がなく、X1とX2に対して行われた過去の攻撃を再燃させるおそれがあり、職場秩序を維持するために本件①-2及び②撤去をしたと主張するが、掲示物①と掲示物①-2及び②では、具体的な氏名の記載の有無(掲示物①-2)や記載内容(掲示物②)において差異があって、これらを掲示物①と同様に扱うことはできないのであり、また、職場秩序が乱れるとする具体的可能性があったとはいえないことなど、同撤去が不当労働行為に当たるとした本件命令に違法があるとは認められない。
(2) 会社は、また、掲示物③ないし⑥の撤去等に支配介入意思がないと主張する。しかし、掲示物③ないし⑥が「個人を誹謗するもの」「職場規律を乱すもの」に該当しないことは会社も認めるところであり、これらに関する本件撤去等は、外形的に組合の組合活動に影響を与えるものであることは明らかである。そして、掲示物③ないし⑥に対する撤去等が、現場担当者の行き過ぎの行為であったとしても、その原因は、会社の指示に対する誤解や会社から明確に指示がなかったことによるのであり、 会社において、掲示物③ないし⑥に対する撤去等を明示的に行わないよう指示していた事実は認められないから、現場担当者は、使用者である会社の業務の一環として撤去を命じ、あるいは撤去したと言わざるを得ない以上、会社に支配介入意思がなかったとはいえない。会社は過失による不当労働行為を認めるものであると主張するが、行為そのものから外形上、不当労働行為意思が表れているといえるのであって、会社の主張は失当である。
(3) 会社は、本件において、掲示物③ないし⑥の撒去等について、八王子支社における団体交渉の席や都労委の審問の際、経営協議会等において、その誤りについて正式に謝罪しているため、組合に救済利益がないとも主張する。しかしながら、団体交渉等における発言の前後の経過ややりとりを検討すると、結局、会社は、労使間の紛争の中での手違いにすぎないことを表明しているのであって、具体的に掲示物③ないし⑥の撤去等についての反省を述べているのか、それでも掲示物①や①-2、②の撒去等については正当であったと主張する前提として述べているのか明らかであるとはいえない。
また、会社は、被会社が、掲示物③ないし⑥の撤去等についての謝罪を受け入れ、その後、特に問題にしていないとも主張するが、本件撤去等の問題は、掲示物①、①-2及び②と掲示物③ないし⑥に分けて論じられていたのではなく、組合としては、掲示物①ないし⑥全体の取扱いを問題にしていたところ、会社が、掲示物③ないし⑥のみの撤去等を反省、謝罪の対象としていたため、結局、それ以上のやりとりが行われなかったのであるから、組合が、掲示物③ないし⑥の撤去等について会社の謝罪や反省を受け入れていたとはいえない。
これらの事情からすると、本件においては、掲示物③ないし⑥の撤去等について、真の意味で、会社と組合において協議がされ、相互の了解が得られたとは言えないから、未だ不当労働行為の結果が回復、治癒されたことにはならず、救済利益が失われたとも認められない。 |
その他 |
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