労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  西日本旅客鉄道(動労西日本戒告処分等) 
事件番号  中労委平成23年(不再)第38号・第40号 
再審査申立人  第38号 国鉄西日本動力車労働組合(「組合」) 
再審査申立人  第40号 西日本旅客鉄道株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  第38号 西日本旅客鉄道株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  第40号 国鉄西日本動力車労働組合(「組合」) 
命令年月日  平成24年4月4日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合副執行委員長でもある契約社員Xに対し、会社が①会社施設内ビラ配布を理由として訓告(「本件訓告」)を行ったこと、②遅刻(「本件遅刻」)を理由として戒告処分(「本件戒告処分」)を行ったこと、③雇止め(「本件雇止め」)としたこと、④本件雇止めとしたことで社員採用試験の無効を通告したことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。
2 初審岡山県労委は、①本件訓告は、労働組合法(「労組法」)第7条第1号の不当労働行為に当たり、②本件戒告処分は、同条第3号の不当労働行為に該当するとしたが、③本件雇止め及び④組合員Xに対して社員採用選考試験の無効を通告したことは不当労働行為に該当しないとして、会社に対し、上記①②に限って文書手交を命じ、③④については申立てを棄却する旨の命令書(以下「初審命令」)を会社及び組合に対して交付した。これに対し、組合及び会社は、初審命令を不服として、組合は23年5月24日に、会社は同月31日に、それぞれ再審査を申し立てた。  
命令主文   初審命令中、本件戒告処分に対する救済部分を取り消し、同部分に係る救済申立てを棄却。
 初審命令主文第1項を変更し、本件訓告について不当労働行為とする部分に限って文書手交を命じる。
 会社の申立てに係るその余の再審査申立てを棄却。
 組合の申立てに係る再審査申立てを棄却。  
判断の要旨  (1) 本件訓告の不利益取扱い該当性について【争点1】
ア 会社は主張の中で、歴史的沿革と複数組合の併存状況等を前提とし、ビラの配布場所、配布態様、内容等を総合的に考慮すれば、本件ビラ配布が職場秩序を乱すおそれが極めて大きく、職場秩序を乱すおそれのない特別な事情が存するものとの初審命令の判断は誤ったものであり、不利益取扱いに当たらないとする。
イ しかしながら、本件ビラ配布は、社員の職務専念上あるいは業務上支障等をきたしたり、職場秩序を乱すおそれのない場所での配布であった上、配布方法等も業務運営に支障を及ぼさないように行われた。また内容も、労働組合の正当な行為の範囲を逸脱したものとまではいえない。さらに、組合には会社から掲示板が貸与されておらず、ビラ配布活動の必要性、重要性が高かったことから、労働組合の正当な行為であると認められる。他方、契約社員が訓告に付されることは、契約更新の判断に不利に影響する可能性がある。これらのことからすると、組合員Xに対する本件訓告は、労働組合の正当な行為をしたこと故の不利益取扱いに該当する。
(2) 本件戒告処分の支配介入該当性について【争点2】
ア 会社はその主張で、処分の相当性は各企業の事業の性格、職場秩序維持の必要性の程度等、勤務態度や過去の処分歴等の個別事情によって大きく左右されるとする。さらに、鉄道事業の社員にとって遅刻は重大問題であり、本件遅刻により乗客に対するサービスの質が確実に低下したことを勘案すれば、訓告を経ることなく戒告を選択したことは同種事例と比較しても合理的であるとする。
イ 本件遅刻は15 分で、直近の遅刻から約10 か月後で、4年弱の雇用契約期間中4回目である。本件を含む過去4回の遅刻はいずれも本人の責めに帰すべきものである。また、会社は、組合員Xの過去3回の遅刻に対しては2回、代理の社員を配置したが、本件遅刻の際は、午前9時の新幹線改札案内を行う繁忙時間帯の欠務であって、同人出勤までの間、会社は代理の社員を配置できなかったため、業務に何らかの支障が生じたことが推認できる。
ウ 会社は同人の遅刻毎に注意、指導し、21 年度の契約更新時の面談では、以後同種事象が発生すれば次の契約更新の判断材料にする旨を伝えていたが、同人は本件遅刻をした。
エ これらを総合勘案すると本件戒告処分の検討時期に組合員Xが活発な組合活動を行っていたことを考慮しても、本件戒告処分は相当性があることから、特に重い処分であるとまではいえない。よって、本件戒告処分は、会社が組合ないし組合の組合活動を弱体化させようとする意思をもって行われた不当労働行為には該当しない。
(3) 本件雇止め及び社員採用選考対象からの除外の不当労働行為該当性について【争点3】
 会社は、契約更新を判断するに当たり、組合員Xが4年弱の間に行った4回の遅刻のほか、勤務状況、勤務成績等を勘案したものと認められ、会社が組合活動に対して介入したとはうかがわれないことから、雇止めは不当労働行為に当たらない。また、社員採用選考試験の対象から組合員Aを除外したことも、社員募集要項に沿ってなされたものであるから不当労働行為に該当しない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
岡山県労委平成22年(不)第1号 一部救済 平成23年4月14日
東京地裁平成24年(行ウ)第405号(第1事件)・同第533号(第2事件) 一部取消 平成26年8月25日
東京高裁平成26年(行コ)第362号 棄却 平成27年3月25日
最高裁平成27年(行ツ)第276号・平成27年(行ヒ)第294号 上告棄却・上告不受理 平成28年6月28日
最高裁平成27年(行ヒ)第295号 上告不受理 平成28年6月28日
 
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