概要情報
事件名 |
西日本旅客鉄道 |
事件番号 |
岡委平成22年(不)第1号 |
申立人 |
国鉄西日本動力車労働組合 |
被申立人 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
命令年月日 |
平成23年4月14日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が、契約社員として同社で勤務していた申立人組合の副執行委員長に対して、(1) 会社施設内での組合ビラ配布を理由に訓告処分を行ったこと、(2) 遅刻を理由に戒告処分を行ったこと、(3) 組合が平成22年1月12日付けで上記(1) 及び(2) に係る本件救済申立てを行った後、同年2月19日付けで雇止め事由書を交付するとともに、同人が受験していた社員採用選抜試験の無効を通告したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
岡山県労委は、会社に対し文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人西日本旅客鉄道株式会社は、申立人国鉄西日本動力車労働組合に対し、次の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
国鉄西日本動力車労働組合
執行委員長 X1 殿
西日本旅客鉄道株式会社
代表取締役社長 Y1
当社が、貴組合所属のX2氏に対して、平成21年11月5日付け訓告処分を行ったことは労働組合法第7条第1号に、また、平成21年12月28日付け戒告処分を行ったことは同条第3号に該当する不当労働行為であると、岡山県労働委員会において認定されました。
今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
(注:年月日は文書を手交した日を記載すること。)
2 申立人のその余の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件訓告処分は、正当な組合活動を理由とする不利益取扱いか。
組合員X2が本件ビラ配布を行った場所は方法等に相応の配慮をすれば駅社員の職務専念を阻害したり職場秩序を乱すおそれはない場所であり、また、ビラ配布は会社の業務運営に支障を及ぼさないように行われ、さらに、ビラの内容は集会案内を目的とし全体として正当な組合活動の範囲を逸脱しているものではない。ビラを受け取った社員がX2と言い合ったり、もめたりしたことはなく、職場秩序が具体的に乱れたとは認められない。
以上のとおり、本件ビラ配布は被申立人会社の就業規則の規定と文言上は抵触するものであるが、職場秩序を乱すおそれのない特別の事情が存するものと判断できるので、これを就業規則に違反するものとした本件訓告処分は根拠を欠くものといわざるを得ない。また、申立人組合と会社の間には厳しい対立関係があったことが認められ、かつ、平成21年に入ってX2らが組合に加入し、活動を活発化させていたことが認められることから、本件訓告処分当時、会社が組合とX2の正当な組合活動を嫌悪していたことが推認でき、同処分は正当な組合活動を理由として同人に人事上の不利益を生じさせる、労組法7条1号の不当労働行為に該当するものである。
2 本件戒告処分は、組合への支配介入か。
本件遅刻は社会通念に照らして重大な遅刻であるとまではいえないこと、会社に具体的な損害があったとは認められないことなどから、本件戒告処分の量定は重いといわざるを得ない。
一方、本件遅刻が発生した頃は、X2が副執行委員長になり、同人も参加した岡山県労働者総決起集会の直後であり、また、本件遅刻について賞罰審査委員会への付議を検討する時期は会社が同人の本件訓告処分を検討していた時期であり、同人が組合のビラに記載された全国労働者総決起集会に参加していた時期であった。
この状況と、本件戒告処分の発令までの期間が87日と長期に及んでいることの不自然さを併せ考えると、本件遅刻に対して通常より重い処分を行うことによって組合の活動を弱体化させようとする会社の意思を推認せざるを得ない。さらに、処分発令日をあえて社員採用選抜試験の申込締切日後とすることで、X2に個人的な打撃を与えて組合の活動を抑制しようとする会社の意思を推認せざるを得ない。
以上のことから、本件戒告処分は、組合への支配介入であって、不当労働行為に該当するものである。
3 本件雇止め及び社員採用選考対象からの除外は、不利益取扱い、組合への支配介入、不当労働行為救済申立てを行ったことに対する報復的不利益取扱いに該当するか。
X2が契約更新を期待することには相当の理由はあるが、一方で、会社が社員に対して厳密な時間管理を要求することには業務内容から見て合理性があり、過去に4回遅刻を繰り返した同人との雇用契約を会社が更新しなかったことには合理的な理由があるので、本件雇止めが不当労働行為に該当するとは認められない。
また、組合は22年1月12日に本件訓告処分等についての救済申立てを行ったが、会社はX2の契約更新に係る面談を同月13日に設定し、同日前に同人に通知している。会社は、X2の契約更新については本件遅刻の発生後から重大な事象として問題意識を持って検討していたのであり、また、上記のとおり、本件雇止めが不利益取扱い又は組合への支配介入に当たるとは認められないので、会社が当該救済申立てを理由として本件雇止めを決定したとは判断できない。 |
掲載文献 |
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