労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  西日本旅客鉄道(動労西日本戒告処分等) 
事件番号  東京地裁平成26年(行コ)第362号 
控訴人兼被控訴人  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
控訴人兼補助参加人  国鉄西日本動力車労働組合(「組合」) 
被控訴人兼参加人  西日本旅客鉄道株式会社(「会社」) 
判決年月日  平成27年3月25日 
判決区分  棄却 
   
事件概要  1 A1は、会社の、岡山支社の契約社員として採用され、組合の副執行委員長を務めていた。
 A1は、会社内において、無許可でビラを配布し、訓告処分(以下「本件訓告」という。)を受けるとともに、勤務開始時刻に出務遅延(以下単に「遅刻」という。)して、戒告処分(以下「本件戒告」という。)を受けた。
 A1は、雇止め事由書を交付されて、平成22年3月31日をもって会社を雇止めとなり(以下「本件雇止め」という。)、本件雇止めに伴い、社員採用選考試験の対象から除外され、雇止め事由書の交付による通知の際、その旨通告された(以下「本件通告」という。)。
2 組合は、岡山県労働委員会に対し、会社のA1に対する本件訓告、本件戒告、本件雇止め及び本件通告が不当労働行為に当たる旨を主張して、救済を申し立てた。
 岡山県労委は、本件訓告は労組法7条1号の不当労働行為、本件戒告は同条3号の不当労働行為にそれぞれ当たるが、本件雇止め及び本件通告はいずれも不当労働行為に当たらないと判断して、会社に対し、文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却する旨の命令をしたところ(以下「初審命令」という。)、組合及び会社は、これを不服として、それぞれ中央労働委員会に対し、再審査を申し立てた。
 中労委は、本件訓告は労組法7条1号の不当労働行為に当たるが、本件戒告、本件雇止め及び本件通告はいずれも不当労働行為に当たらないと判断して、初審命令中、本件戒告に対する救済部分を取り消し、同救済申立てを棄却し(主文第1項)、初審命令の主文第1項を原判決別紙3記載に係る文書の手交を命ずる内容に変更し(同第2項)、会社のその余の再審査申立てを棄却し(同第3項)、組合の再審査申立てを棄却する(同第4項)旨の命令をした(以下「本件命令」という。)。
3 第1事件は、会社が、本件命令中、本件訓告に係る部分(主文第2項及び第3項)の取消しを求め、第2事件は、組合が、本件命令中、本件戒告、本件雇止め及び本件通告に係る部分(主文第1項及び第4項)の取消しを求め東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を認容し(第1事件)、組合の請求をいずれも棄却した(第2事件)。
4 中労委と組合は、これを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は、各控訴いずれも棄却した。  
判決主文  1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は各控訴人の負担とし、当審における参加費用はすべて控訴人兼補助参加人の負担とする。  
判決の要旨  第2 事案の概要
3 当審における当事者の主張
(1)中労委
 本件ビラ配布は、社員の職務専念上又は業務上支障をきたしたり、職場秩序を乱したりするおそれのほとんどない場所で行われ、とりわけ、岡山駅2階営業事務室内個人用小ロッカー前通路及び同駅2階男子ロッカー室(休養室)については、営業区域に隣接しながらも明確に区別され、業務を遂行する場所のように社員に緊張感を持つことが求められる場所とは明らかに異なるものであって、業務との関係性は希薄であり、その配布の態様は、相応の配慮がされ、会社の業務運営に支障を及ぼさないような平穏なものである上、本件ビラの内容も、組合の情報や主張の伝達を図るものであって、職場秩序を乱すおそれがあると評価されるようなものでないことからすれば、職場秩序を乱すおそれがあるとはいえない特別の事情があったものであり、また、組合は会社から組合掲示板が貸与されず、組合の情報伝達活動や組織拡大の呼びかけの手段がほぼビラ配布に限られ、ビラ配布による情報伝達等の組合活動の必要性があった。本件ビラ配布については、組合活動としての正当性を失うものではないから、本件訓告は、労働組合の正当な行為をしたことの故をもって行われた不利益取扱いとして、労組法7条1号の不当労働行為に当たる。
(2) 組合
ア ビラ配布は、憲法28条で保障された労働組合の団結権の一環をなすものであり、組合のような少数組合にとって、ビラ配布は労働組合としての団結権を守るための重要な手段である。本件ビラ配布について、これによって会社における労働組合間の対立が激化し、受領した社員が困惑したことはなく、職場内の秩序が乱れて業務に支障を来したこともなく、配布の態様は相応の配慮がされたものであり、本件ビラの内容も労働組合としての正当な主張と方針を述べた問題のないものであって、会社の職場規律、秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められ、就業規則の規定に実質的に違反するものとまではいえないから、本件訓告は、労働組合の正当な行為をしたことの故をもって行われた不利益取扱いであって、労組法7条1号の不当労働行為に当たる。
イ A1の本件遅刻の原因は、バスが雨で遅延したことによるものであって、A1自身の責任ではなく、本件遅刻による業務への具体的な支障も生じておらず、15分程度の遅刻は社会通念上も重大な遅刻とまでいえない。本件遅刻について、厳重注意より一段重い処分である訓告を経ずに戒告が選択されたことに合理的な理由があるとはいえず、本件戒告の時期や会社に不当労働行為意思が看取されることからすれば、本件戒告は、労組法7条3号の不当労働行為に当たる。
 A1は、平成17年12月に会社に採用され、平成22年3月31日をもって本件雇止めにされるまで、4回にわたって雇用契約を更新し、この間、平成21年1月28日に組合に加入して、組合の副執行委員長として活動の先頭に立ってきた。本件訓告、本件戒告及び本件雇止めは、A1が同年2月に会社に対して組合加入を通告した後、立て続けに行われており、組合の要であったA1を狙い打ちにして組合の弱体化を図ったものであることが明らかであり、本件雇止めは、労組法7条1号、3号及び4号の不当労働行為にあたる。
(3) 会社
ア 中労委の主張及び組合の主張は、いずれも否認ないし争う。
イ 会社においては、鉄道輸送事業の特性、国鉄時代以来の歴史的沿革、複数労働組合の存在、多数の現業機関の存在等の経営上の特別な諸事情があり、複数の労働組合の尖鋭な路線対立が存在する以上、職場規律及び企業秩序の定立、維持が不可欠であって、勤務時間中又は会社施設内の組合活動の規制の必要上、就業規則の規定に違反するビラ配布について、企業秩序を乱すおそれのない特別な事情は、極めて限定的にしか認める余地はないというべきであり、本件ビラ配布については、そのような特別な事情は認められないのであって、就業規則によって実質的にも禁止される行為であり、本件訓告は不当労働行為に当たらない。
 また、本件戒告、本件雇止め及び本件通告が不当労働行為に当たるものでないことは明らかである。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、会社の請求は理由があるから認容すべきであり、組合の請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は、当審における当事者の主張も踏まえて、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中「第3当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
岡山県労委平成22年(不)第1号 一部救済 平成23年4月14日
中労委平成23年(不再)第38号・第40号 一部取消・棄却 平成24年4月4日
東京地裁平成24年(行ウ)第405号(第1事件)・同第533号(第2事件) 一部取消 平成26年8月25日
最高裁平成27年(行ツ)第276号・平成27年(行ヒ)第294号 上告棄却・上告不受理 平成28年6月28日
最高裁平成27年(行ヒ)第295号 上告不受理 平成28年6月28日
 
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