労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成22年(不)第30号 
事件番号  大阪府労委平成22年(不)第30号 
申立人  X労働組合a本部、X労働組合b支部 
被申立人  国 
命令年月日  平成24年2月13日 
命令区分  却下 
重要度   
事件概要   申立外社団法人Zの従業員Dは、被申立人国のA地方局B事務所において、同法人が国から委託を受け又は請け負った業務に従事していたが、当該業務の発注打切りに伴い、同法人から雇止めを言い渡され、申立人組合に加入した。本件は、組合が国のA地方局に対して行ったDの雇用確保に関する団交申入れに国が雇用関係が存しないとして応じないことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、国は団交申入れに応じるべき労組法上の使用者に当たるとは認められないとして、申立てを却下した。  
命令主文  本件申立てを却下する。  
判断の要旨   申立人組合は、被申立人国がDの「雇用の安定」という団交の要求事項に対して、実質的にみて使用者と同視できる程度に支配決定できる地位にあるのか否かの観点から、「使用者性」の判断がされるべきとして、Dの就労実態は請負業務としては違法な状態にあり、実際には労働者派遣の実態にあったのであるから、国には労働者派遣法上の雇用申入れ義務が生じるということと、このように労働者派遣の実態であったことも含めて、その他の状況も併せて総合的に判断して、国は雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にあったといえるのだから使用者に当たると主張するので、以下、検討する。
(1)  DのB事務所における就労が請負業務としては違法な状態にあり、労働者派遣と評価しうる実態にあったといえるか。
 組合は、Dが業務上の問題についてB事務所の職員に質問していたことなどを例に挙げ、同人が国の直接の指揮命令を受けていたと主張する。しかし、Dは本来、申立外法人Zの職員を通して質問を行うほうが適切であったと考えられるものの、請負契約書の規定や当該質問の頻度等を総合的に考えると、国が同人に対して明白に労働者派遣と評価しうるような直接の指揮命令を行っていたとまで認めることはできない。
 組合は、他部署からの質問等への対応、C県の関係課との打合せ等を例に挙げ、Dが業務委託契約又は請負契約以外の業務を国の指示によりさせられていたと主張するが、これら他部署やC県との打合せ対応等は契約で定められた業務の範囲内であったとみることが妥当であり、Dが契約外の業務をさせられていたとは認められない。
 組合は、平成17年当時DがB事務所において国の職員と混在して業務に従事していたと主張するが、国はその後、その状態を改善していることに加え、同人の作業服の色が国の職員のそれとは明確に異なっていたこと等を考え併せると、労働者派遣の実態にあったとされるような職員の混在があったとみることはできない。
 上記以外の組合主張の事実についても、総合的にみて、それらをもってDの行っていた業務が違法な請負業務であったということはできない。
 以上のとおりであるから、DのB事務所における就労が労働者派遣とされる実態にあったとまで認めることはできない。
(2) 上記2以外の点で、国がDの雇用の安定等に関して雇用主と同視しうる程度に現実的かつ具体的に支配・決定しうる地位にあったといえるか。
 組合は、国はDを特定し、Zとの業務委託契約や請負契約を更新してきたと主張する。しかし、DはB事務所で就労を開始するに当たって国による面接などは一切受けておらず、同人の雇用の開始について国の関与は認められない。
 組合は、Dが申立外E社からZに出向していた当時、国は同人が出向者であることを知りながら、同人を受け入れていたのであるから、違法な出向を受け入れていた国が同人の雇用に関係がないとはいえない旨主張する。しかし、国の認識については組合の憶測にすぎず、また、その後当該状況は解消され、Dは自らの選択によりE社を退職しZと雇用契約を締結したことが認められる。これらのことからすると、国がDの雇用関係の変動に責任があるということはできない。
 組合は、国がZへの発注を中止したことを原因としてZがDの雇止めを行ったのであるから、国は団交に応じる義務がある旨主張する。しかし、国とZとの契約は次年度も締結されることが保障されていたものではなく、国が一方的に契約期間途中に当該契約を解除したわけでもない以上、Zとの契約を平成21年に締結しなかったことをもって、団交に応ずべきDの労組法上の使用者に当たるとまではいえない。
 以上のとおりであるから、国がDの雇用の安定等に関して雇用主と同視しうる程度に現実的かつ具体的に支配・決定しうる地位にあったとする根拠になる事実はない。

 以上を総合的に判断すると、国がDの雇用の安定等に関して雇用主と同視しうる程度に現実的かつ具体的に支配・決定しうる地位にあったとみることは困難であるので、国は団交申入れに応じるべき労組法上の使用者に当たるとは認められない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成24年(不再)第10号 取消、棄却 平成26年3月5日
東京地裁平成26年(行ウ)第489号 棄却 平成28年6月13日
東京高裁平成28年(行コ)第252号 棄却 平成29年1月12日
最高裁平成29年(行ヒ)第179号 上告不受理 平成29年9月8日
 
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