労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  鴻池運輸 
事件番号  福岡労委平成22年(不)第3号 
申立人  福岡地区合同労働組合 
被申立人  鴻池運輸株式会社、鴻池運輸株式会社西日本支店鳥栖流通センター営業所長 Y2 
命令年月日  平成23年10月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社及び被申立人Y2が組合員X2に対し、雇用契約満了通知を発し、同人との契約を不更新としたこと、及び会社が①申立人組合との事前協議約款締結の約束を反故にしたこと、②団交において短時間で退席したこと、③組合に対し、交渉ルールの設定に関する交渉は改めて行うつもりはない旨文書で回答し、その後のルールについての協議に応じなかったこと、④組合の要求にもかかわらず、Y2を団交に出席させなかったこと、⑤団交において、組合の質問に対し、「答えたくない」などと言って不誠実に対応したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 福岡県労委は、会社に対し①団交ルールの設定を議題とする団交の応諾、②文書交付を命じ、その余の申立てを棄却するとともに、Y2に対する申立てを却下した。  
命令主文  1 被申立人鴻池運輸株式会社は、申立人福岡地区合同労働組合が申し入れた場合には団体交渉ルールの設定を議題とする団体交渉を拒否してはならない。
2 被申立人鴻池運輸株式会社は、本命令書写し交付の日から10日以内に、次の文書を申立人福岡地区合同労働組合に交付しなければならない。

平成23年 月 日
 福岡地区合同労働組合
 代表執行委員 X1 殿
鴻池運輸株式会社
代表取締役社長 Y1
 鴻池運輸株式会社が行った下記の行為は、福岡県労働委員会によって労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為と認定されました。
 今後、このようなことを行わないよう留意します。
1 平成22年8月23日の団体交渉において、交渉人数を5名以内に限定するという条件に固執して交渉に応じず、短時間で退席したこと。
2 貴組合の申し入れた団体交渉ルールの設定に関する交渉について、平成22年9月8日付けでこれを行うつもりはない旨回答し、ルールに関するその後の協議に応じなかったこと。
3 平成22年10月19日の団体交渉において、3項目の要求に関して調査の期日、対象者を明らかにせよとの組合の要求に対し、回答を書面で提出したので、会社としての回答は十分であるとしか回答しなかったこと。

3 被申立人鴻池運輸株式会社に対するその余の申立てを棄却する。
4 被申立人鴻池運輸株式会社西日本支店鳥栖流通センター営業所長Y2に対する申立てを却下する。  
判断の要旨  1 Y2所長の被申立人適格について
 労組法7条の「使用者」とは、法律上独立した権利義務の帰属主体であることを要し、Y2はたとえ契約書上の名義が同人であったとしても企業主体である被申立人会社の構成員にすぎず、「使用者」に当たらない。よって、同人に対する救済申立ては却下すべきものと判断する。
2 会社がX2の雇用契約を更新しなかったことについて
 会社が従業員に対し、法令遵守と機密保持に関する誓約書の提出を指示したところ、X2及び申立人組合はセクハラ防止等の3項目の要求に対して納得できる対応を会社が行うまでは誓約書を提出しないとして当該指示に従わなかったが、この点については問題があったといわざるを得ない。
 会社が、X2が期限までに誓約書を提出しなかったことを理由として雇用契約を更新しなかったことについては、誓約書の提出指示の手順に不備があった上、X2に対して何らかの問責をすることはやむを得ないとしても、契約の不更新をもって臨んだことは措置の相当性という面でも問題を残している。しかし、会社が組合やX2の組合加入及び組合活動を嫌悪していたことをうかがわせる事実は認められない。
 以上のことを考え併せれば、会社がX2との契約を不更新としたことは、同人が組合員であること又は正当な組合活動を行ったことの故をもってなされたものとまでいうことはできない。また、本件契約不更新により、組合活動に意図的に影響を及ぼそうとするとの事実は認められない。
3 事前協議約款の締結に関する約束について
 認定した事実によれば、事前協議約款を締結することについて労使間に明確な合意があったとは認められない。
4 団交における会社側出席者の退席について
 会社は、平成22年8月23日の第2回団交に先立ち、組合に対し出席者を5名以内に限定するよう要請していたにもかかわらず、当日、10名以上が入室してきたことから、20分間近い押し問答になり、組合が譲歩しなかったため、団交中止を宣言して退席した旨主張する。しかし、第1回団交の経過から見ても、組合がこの要請に従わなかったからといって必ずしも団交を実施することが困難であったとは認められない。短時間で退席した会社の姿勢は、性急で硬直的に過ぎるものというべきである。加えて、会社はX2の誓約書未提出の問題について組合と団交の場で真摯に協議すべきであったにもかかわらず、参加人数というルールの対立に拘泥して短時間で席を立ち、自らその機会を失わせたのは、不誠実な対応であるといわざるを得ない。
5 交渉ルールの設定について
 会社は、組合に対する22年9月8日付け文書の内容に関し、交渉人数の問題が確定すればそれ以上の議論は無意味であるから、団交ルールの設定に関する交渉は改めて行うつもりはない旨回答したと主張するが、前記のとおり、第2回団交においては団交人数の問題で紛糾しており、交渉人数について合意はなかったことが認められる。組合が団交ルールについての協議の申入れを行った時点では、団交ルールは確立していなかったのであり、会社には交渉をことさら拒む正当な理由はなかった。
6 Y2の団交出席について
 会社は、実質的に交渉権限のある者を団交に出席させれば足りるのであり、また誰に交渉権限を与えるかは会社が決定すべき事項である。また、Y2が出席せずに開かれた第3回及び第4回団交(22年10月6日及び同月19日開催)において、同人が出席しなかったことによって交渉上何らかの支障が生じたとの疎明もない。
 よって、会社が上記の団交にY2を出席させなかったことは、不誠実な対応とはいえない。
7 団交において会社が「答えたくない」などと言って不誠実に対応したことについて
 第4回団交において、組合が、3項目の要求について会社が行った調査の期日と対象者を明らかにするよう求めたところ、会社は、既に回答を書面で提出したので十分である旨回答し、これを拒否したことが認められる。
 しかし、会社は、組合から明らかにするよう求められた事項について、可能な範囲で回答し、あるいは回答が困難であればその理由を示すなど、誠意をもって説明すべきであった。会社が、書面で提出したので回答は十分であるとしか回答しなかったのは、不誠実な対応というべきである。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡労委平成23年(不)第14号 棄却 平成24年10月26日
中労委平成23年(不再)第74号 棄却 平成25年5月15日
福岡地裁平成24年(行ウ)23号・同25年(行ウ)34号 棄却 平成26年7月16日
東京地裁平成25年(行ウ)第402号 棄却 平成26年7月28日
 
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