労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  鴻池運輸 
事件番号  中労委平成23年(不再)第74号 
再審査申立人  鴻池運輸株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  福岡地区合同労働組合(「組合」) 
命令年月日  平成25年5月15日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①組合員Xを雇止めとしたこと、②団交において、出席人数を5名以内にするとの条件に固執して交渉に応じず、短時間で退席したこと、③団交ルールの設定を議題とする団交申入れに対し、改めて行うつもりはない旨回答したこと、④組合の職場改善要求に関して会社が行った調査について、団交で調査日等の開示を求められたのに対し、不誠実に対応したこと、その他2項目が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審福岡県労委は、上記1の申立事実のうち②ないし④について、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、会社に対し、団交ルールの設定を議題とする団交拒否の禁止及び文書交付を命じ、その余の救済申立てを棄却ないし却下したところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 団交で、出席人数を5名以内とするとの条件に固執して交渉に応じず、短時間で退席したことは、労組法第7条第2号に該当するか(争点1)。
ア 平成22年(以下、年号は省略する。)6月23日の第1回団交で、組合側は12名が出席し、人数を絞るよう要求する会社と押し問答となったが、結局、組合側が5名を交渉要員とし、残りを傍聴とする形で交渉が行われており、それにより実質的な交渉が阻害されたとは認められない。
 その後、会社は書面により、団交の参加者を5名以内に限定するよう組合に要請しているが、これについて合意が成立していたわけではない。
イ 8月23日の第2回団交においても、組合側は12名が出席したが、第1回団交の経過からすれば、団交を実施することが困難であったともいえない。そして、組合は第1回団交と同様に、交渉要員を5名として残りの者は傍聴とする旨を申し出ており、出席人数について一応の譲歩の姿勢を示したものとみることができる。しかるに、会社は、自らが主張する5名以内という条件に組合が応じなければ交渉はできないとして、全く譲歩の姿勢をみせないまま、一方的に交渉を打ち切ったのであるから、かかる対応は性急で硬直的に過ぎるというべきである。
ウ 以上のとおり、第2回団交において、会社が出席人数を5名以内にするという条件に固執して交渉に応じず、短時間で退席したことに正当な理由は認められない。
2 団交ルールの設定を議題とする団交申入れに対し、同ルール設定に関する交渉は改めて行うつもりはない旨回答したことは、労組法第7条第2号に該当するか(争点2)。
ア 上記(1)の経緯からすれば、第2回団交が終了した時点で、労使間に団交の出席人数についての合意は成立していなかったものである。そうであるからこそ、組合は、第2回団交の後、団交ルールの設定を議題とする8月28日付け団交申入れを行ったとみることができる。すなわち、同申入れの時点では、労使間でいまだ団交ルールは確立していなかったものということができる。それにもかかわらず、会社は、団交ルールの設定に関する交渉は改めて行うつもりはない旨の9月8日付け回答を行い、同ルールの設定に関する交渉を拒んでいるのであり、このことは正当な理由のない団交拒否に当たるというべきである。
3 組合の職場改善要求に関して会社が行った調査について、団交で調査日等の開示を求められたことに対する対応は、労組法第7条第2号に該当するか(争点3)。
ア 組合の職場改善要求の内容は、Xが勤務する営業所内でセクハラがたびたび行われ女性従業員が困っていること、フォークリフトの運転未熟者による休憩時間中の運転練習が危険であること及びXの個人情報に属する内容が従業員により話されており問題であるとして、これらに対する会社の対応を求めるものである。会社は、第1回団交において、上記要求について事実確認のための調査をする旨述べているのであるから、その結果について説明し、同要求について誠実に交渉を行うべきであった。
イ この点について第1回団交後の経過をみると、会社は、上記要求に係る調査結果について、10月6日の第3回団交において口頭で回答し、その後10月15日付け書面を提出するなど、一応の回答を示してはいるということができる。しかし、組合は、同書面の提出後もなお、10月19日の第4回団交において、セクハラ等に関する調査の日付、対象者の開示を求めているのであるから、会社は、自らが行った調査の内容(調査の方法、調査対象者の人数、日程等)について可能な範囲で回答し、あるいは回答が困難であればその理由を示すなど、誠意をもって説明すべきであったというべきである。それにもかかわらず、会社が、第4回団交において、回答は書面で提出したので十分であるとして、それ以上の回答をしなかったことは、不誠実な対応であるといわざるを得ない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡労委平成22年(不)第3号 一部救済 平成23年10月21日
東京地裁平成25年(行ウ)第402号 棄却 平成26年7月28日
 
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