労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  鴻池運輸 
事件番号  東京地裁平成25年(行ウ)第402号  
原告  鴻池運輸株式会社(「会社」) 
被告  国(処分行政庁・央労働委員会) 
判決年月日  平成26年7月28日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①組合員A1を雇止めとしたこと、②団交において、出席人数を5名以内にするとの条件に固執して交渉に応じず、短時間で退席したこと、③団交ルールの設定を議題とする団交申入れに対し、改めて行うつもりはない旨回答(本件回答)したこと、④職場改善の要求(3項目の要求)に関して会社が行った調査について、団交で調査日等の開示を求められたのに対し、不誠実に対応したこと、その他2項目が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審福岡県労委は、上記1の申立事実のうち②ないし④について、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、会社に対し、団交ルールの設定を議題とする団交拒否の禁止及び文書交付を命じ、その余の救済申立てを棄却ないし却下し、中労委も、会社の再審査申立てを棄却した。
3 これを不服として、会社が東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、会社の請求を棄却した。  
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。  
判決の要旨  1 争点(1)(第2回団交において、会社側が組合側の出席者の人数が絞られていないことを理由に短時間で退席したことは、労組法7条2号の不当労働行為に当たるか)について
(1) 組合側は、A1に本件誓約書〔A1は提出を留保し、会社に対して3項目の要求をしている。〕を提出させてもよいが、そのための条件として、3項目の要求について納得できる対応をしてもらいたいと述べ、これに対し、会社側は、3項目の要求に係る事実関係を確認する旨回答した上、第1回団交の終了後、3項目の要求に係る調査については次回の団交で説明する旨伝えていたものであるから、第2回団交は、上記調査の結果について会社側からの説明や本件誓約書の提出等に関する協議が予定されていたものといえる。そして、会社は、後に、A1との雇用契約について、平成22年10月21日以降更新しないこととしており、A1が同年5月13日までに本件誓約書を提出しないことからA1との雇用関係の継続が困難であると判断したというのであるから、3項目の要求に係る調査結果の説明や本件誓約書の提出等に関する協議が予定されていた第2回団交は、A1との雇用関係の継続に関わる重要なものであったというべきである。しかるに、会社は、第2回団交において、組合側の出席者の人数を5人以内にするよう要請し、組合から、第1回団交と同じく交渉要員を5人とし、その他の者を傍聴者とする旨の提案を受けたが、これを受け入れないだけでなく、何らの議歩もせず、出席者の人数に関する交渉もしないまま、短時間で退席している。この日の団交の重要性にも照らすと、会社が、出席人数に関する組合側の要望について一切譲歩せず、予定されていた議題について何ら触れず、したがって、本件誓約書が提出されないことがA1との雇用関係に及ぼす影響等についても一切説明しないまま、短時間で団交を打ち切ったことは、一方的で不誠実なものといわざるを得ず、正当な理由のない団交拒否であって、労組法7条2号の不当労働行為に当たるというべきである。
2 争点(2)(本件回答は、労組法7条2号の不当労働行為に当たるか)について
(1) 本件回答は、義務的団交事項である団交ルールの設定を議題とする団交の開催を拒否したものである上、会社は、本件回答のほか、その前後を通じ、組合との間で団交ルールの設定を議題とする団交には一切応じなかったものであるから、本件回答は団交拒否に当たり、労組法7条2号の不当労働行為に当たるというべきである。
(2) 会社の主張について
ア 会社と組合との間では、組合側の団交への出席者の人数を何人とするかについて合意されなかったのであって、出席者についての団交ルールが定められたとはいえない。また、 団交の出席者の人数をおおむね5人程度に制限することについて組合に異存がなかったとは到底いえないのであるから、出席人数に関する団交ルールが労使双方に異議のない形で定着したものとは認められない。
イ 組合側の出席者の人数がおおむね5人程度に絞られた形で第3回団交から第10回団交まで実施されたのは、 団交ルールの設定を議題とする団交の開催に応じないという会社の姿勢が変わらなかったため、ともかくも団交を実施するべく、会社の要求に従う形で組合が出席者の人数を絞ったという経緯によるものである。会社が出席者の人数に関する団交ルールについての協議を一切拒否しており、組合もその人数を5人以内として団交を実施することに異議がなかったわけでもないことからすれば、第3回以降の団交の実施状況をもって、本件回答が不当労働行為に当たるとの評価が覆えるものではない。
3 争点(3)(第4回団交において、3項目の要求に関する調査内容について会社側がした説明等は、労組法7条2号の不当労働行為に当たるか)について
(1) 会社側は、3項目の要求に係る一応の調査結果を説明してはいるものの、3項目の要求をしたA1及び組合からすれば、会社の行った調査の方法、内容について説明を求めるのは何ら不合理なものではなく、会社側としても、調査日程や調査対象者の人数、範囲等について説明を尽くすなど、調査対象者のプライバシーを害さない形で更なる説明をすることは可能であったと解される上、そのような回答すら困難であったというのであれば、その理由を説明するなどして対応すべきであり、プライバシーを理由に上記の程度の説明すら拒否したという会社の対応は、不誠実なものといわざるを得ず、労組法7条2号の不当労働行為に当たるというべきである。
(2) 3項目の要求に係る事項は、職場環境に関する問題であって、A1の労働条件と関係がないとはいえない。また本件命令は、会社の行った調査の方法や内容に関する説明が極めて不十分なものであることを理由とするものであって、3項目の要求に係る事実が存在することを前提としたものではない。会社の主張は採用できない。
4 争点(4)(救済の必要性の有無)について
出席者の人数に関する団交ルールが黙示に成立したとも、正常な集団的労使関係が回復したともいえないことからすれば、救済の必要性が消滅したとはいえない。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡労委平成22年(不)第3号 一部救済 平成23年10月21日
中労委平成23年(不再)第74号 棄却 平成25年5月15日
東京地裁平成25年(行ウ)第402号 棄却 平成26年7月28日
 
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